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2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方(第17回)

平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第17回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

第4章 品質マニュアルの実例集

  • 一般製造業の品質マニュアル(ビール製造業)……P.88
  • 建設業の品質マニュアル(テクノファ建設株式会社)……P.157
  • サービス業の品質マニュアル(金融業)……P.210

第4章では,一般製造業の品質マニュアル,建設業の品質マニュアル,サービス業の品質マニュアルの3事例を示し,組織の方々の参考に供したい。実例と銘うってはいるが,この品質マニュアルは限りなく実例に近いものではあるが,実在するものではない。したがって,3事例と同業の専門家の方から見て実情と合わない部分があるかもしれないが,その点はお許し願いたい。

また,各事例には組織固有の部分と思われる箇所には編集上の綱かけ(灰色の部分)を施した。これは,この実例集を活用する組織の方に,自社に固有の記述をしていただきたいとする所である。実例集と同様の詳しさで組織固有の記述をすることを勧めるが,最終的には組織の判断による。しかし,固有であっても汎用性がありそうで,組織の参考になりそうな所は網かけからはずした。

以下に,この3事例を見ていただく前提となる点をいくつか説明する。

  • 1.一般製造業の品質マニュアル
    • ① 一般製造業の業種は数多くあるが,多くの人が日頃からなじんでいる製品で,かつプロセスが比較的シンプルと思われるビール会社を選んだ。3事例の品質マニュアルの中で一番詳しく書かれている例である。これ1冊で業務ができる位の詳しさで書かれている。中小企業では文書をいくつもの断層にせず,品質マニュアルの中にできるだけ how という手順も入れ込みたいとする例を多く見る。この例でもISO 9001:2000規格が要求している6つの手順はすべてこの品質マニュアルの中に入っている,その他,いくつかの(例)が入っている。
    • たとえば,品質目標の例,品質マネジメントシステム計画の例,品質計画書の例などである。加えて,文書類には手順とまでいかずとも検査基準とか一覧表とか指示書に近いものがいろいろあるが,この品質マニュアルにはそのようなものが各種含まれている。
    • このように50ページを超える品質マニュアルは,文書化軽減という2000年版規格のキャッチフレーズに反するのではないか,という意見もあるが,見方によってはこれ以外の文書は少ないということ,1冊で概要が理解できるということで十分にメリットはある。
    • ② ISO 9001:2000規格の要求事項の順序と品質マニュアルの記述の順序が,「5.6マネジメントレビュー」において異なっている。品質マニュアルでは「8.6マネジメントレビュー」として一番後ろに位置している。これはPDCAと管理のサークルのプロセスを回すことを考えると,最後にスパイラルアップして継続的改善につなげる直前にマネジメントレビューが位置する方が,組織の多くの人に理解されやすいと考えたからである。このことは,他の2実例においても同様である。
    • ③ 除外項目として「7.5.4顧客の所有物」を対象としている。
  • 2.建設業の品質マニュアル
    • ① 40数ページと若干多い記述量ではあるが,オーソドックスな品質マニュアルである手順書類は一切品質マニュアルの中には入れず,2次文書名を引用してこれに充てている。
    • ② 表紙の次に経営理念と品質方針を掲げており,一見例外的な順番のようにみえるがトップの最大のメッセージを冒頭に持ってくるというアイデアも悪くはない。
    • ③ 各条項をできるだけ,適用範囲,責任者,実施事項の3つのポイントでまとめあげ」ようと編集してある。すなわち,「誰が」,「何を」の2つの要素は,この品質マニュアルの中で規定しようとするものである。Howにあたる,「どのようにして」は2次文書にゆずっている。
    • ④ できるだけフロー図,表,一覧にして読者に読みやすい品質マニュアルになるように編集してある。
    • ⑤ 適用除外については,土木工事業務では設計を実施していないため,土木工事における「7.3設計・開発」を除外対象にしている。
  • 3.サービス業の品質マニュアル
    • ① 30数ページと簡潔にまとめられた品質マニュアルである。
    • ② 「確実にする」という要求を受けて,マネジメントレビュー,内部調査などのチェック機能を用いてQMSを維持していくことを,該当する各条項でうたっている。
      品質マニュアルで「誰が」,「何を」するのか規定しても,日頃からそれらの実施状況を監視してフィードバックする仕組みがないと,なかなか規定は守られない。とりわけ内部監査の役割は重大で,年に数回内部調査を実施して,実施状況をチェックして是正処置をとるという活動を着実に行うことによって,QMSの維持と定着が図られていく。
    • ③ 品質マニュアルの記述の順序がISO 9001:2000規格の順序と何ヶ所か異なっているが,この程度の違いは通常見られるものである。
    • ④ 適用除外として,「7.3設計・開発」を対象にしている。この支店には新しい製品サービスを作り出す機能がないからである。

一般製造業の品質マニュアル
(ビール製造業)
(JIS Q 9001/ISO 9001:2000)
テクノビール株式会社

発行日 2001年2月1日 承認 確認 作成
制定日 2001年2月1日 社長 管理責任者 品質管理部長
文書番号 TB-A1-01

目次 ページNo.

  • 表紙  1
  • 目次  2
  • 配布先  5
  • 改訂歴  6
  • 1. 目的  6
  • 2. 適用範囲  7
    • 2.1 適用する製品  8
    • 2.2 適用する組織  8
    • 2.3 適用について  8
  • 3. 用語の定義  9
    • 3.1 JIS Q9000/ISO 9000:2000規格  9
    • 3.2 当社の定義  9
  • 4.1 当社の品質マネジメントシステム(QMS)の概要  10
  • 4.2 当社の文書化について  10
    • 4.2.1 一般  10
    • 4.2.2 品質マニュアル  12
    • 4.2.3 文書管理  13
    • 4.2.4 記録の管理  15
  • 5. 経営者の責任  17
    • 5.1 社長の決意  17
    • 5.2 顧客重視  17
    • 5.3 品質方針  18
    • 5.4 計画  19
      • 5.4.1 品質目標  19
      • 5.4.2 品質マネジメントシステムの計画  19
    • 5.5 責任,権限及びコミュニケーション  20
      • 5.5.1 責任及び権限  20
      • 5.5.2 管理責任者  21
      • 5.5.3 内部コミュニケーション  21
  • 6. 資源の運用管理
    • 6.1 資源の提供
    • 6.2 人的資源
      • 6.2.1 一般
      • 6.2.2 力量,認識及び教育,訓練
    • 6.3 インフラストラクチャー  24
    • 6.4 作業環境  26
  • 7. 製品実現  27
    • 7.1 製品実現の計画  27
    • 7.2 顧客関連のプロセス  29
      • 7.2.1 製品関連に関する要求事項の明確化  29
      • 7.2.2 製品に関連する要求事項のレビュー  29
      • 7.2.3 顧客とのコミュニケーション  30
    • 7.3 設計・開発  31
      • 7.3.1 設計・開発の計画  31
      • 7.3.2 設計・開発へのインプット  32
      • 7.3.3 設計・開発からのアウトプット  32
      • 7.3.4 設計・開発レビュー  33
      • 7.3.5 設計・開発の検証  34
      • 7.3.6 設計・開発の妥当性確認  34
      • 7.3.7 設計・開発の変更管理  35
    • 7.4 購買  35
      • 7.4.1 購買プロセス  35
      • 7.4.2 購買情報  36
      • 7.4.3 購買製品の検証  37
    • 7.5 製造及びサービス提供  37
      • 7.5.1 製造及びサービス提供の管理  37
      • 7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認  39
      • 7.5.3 識別及びトレーサビリティ  39
      • 7.5.4 顧客の所有物  40
      • 7.5.5 製品の保存  40
    • 7.6 管理機器及び想定機器の管理  41
  • 8. 測定,分析及び改善  44
    • 8.1 一般  44
      • 8.2.1 顧客満足  45
      • 8.2.2 内部監査  45
      • 8.2.3 プロセスの監視及び測定  46
      • 8.2.4 製品の監視及び測定   49
    • 8.3 不適合製品の管理  49
    • 8.4 データの分析  50
    • 8.5 改善  51
      • 8.5.1 継続的改善  51
      • 8.5.2 是正処置  51
      • 8.5.3 予防処置  54
    • 8.6 マネジメントレビュー  56
      • 8.6.1 一般  56
      • 8.6.2 マネジメントレビューへのインプット  57
      • 8.6.3 マネジメントレビューからのアウトプット  57
  • 付図-1 品質保証体系図  58
  • 付図-2 各プロセス(要求事項)別の責任部署  59
  • 付図-3 品質計画書作成のためのフロー図  60
  • 付録 帳票の様式

改訂歴
☆品質マニュアルの改訂手順を概述する。

  • 1.改訂にあたっては,追番をつけ,改訂歴表にその概要を記述する。
  • 2.改訂部分は品質管理部によって管理コピー保有者全員に配布される。
    • ① 改訂コピー受領者は,差し替え後,受領サインをして,旧ページとともに品質保証部へ返却する。
    • ② 非管理コピー配布先には改訂手続きは実施しない。
  • 3.品質マニュアル改訂の要求は,品質マニュアル保有者全員の権利であり,「マネジメントレビュー(経営者による見直し)」会議を主として,他の場合でも「品質マニュアル見直し要求書」を用いて品質管理部長に要求することができる。
  • 4.品質マニュアルの正式な見直しは,最低年に1回は実施される。

配布先

☆ここでは品質マニュアルの配布先についての一般的な考え方,配布先を記述する。
会社内部へ配布する品質マニュアルはすべて管理コピー★とする。
会社外部への配布については品質管理部長の認可した者に限る。この場合,表紙の非管理★の表示を明確にする。
 注〕管理コピーとは,配布後,品質マニュアルの改訂ごとに差し替えをするコピーのことをいい,改訂があっても差し替えの必要のないコピーを非管理という。

☆管理コピーの所有者(部門)の一覧を記載する。

番号 所有者
1 社長
2 営業部長
3 技術部長
4 購買部長
5 製造部長
6 品質管理部長
7 総務・経営部長

改訂歴

☆品質マニュアルの改訂手順を概述する。

  • 1.改訂にあたっては,追番をつけ,改訂歴表にその概要を記述する。
  • 2.改訂部分は品質管理部によって管理コピー保有者全員に配布される。
    • ① 改訂コピー受領者は,差し替え後,受領サインをして,旧ページとともに品質保証部へ返却する。
    • ② 非管理コピー配布先には改訂手続きは実施しない。
  • 3.品質マニュアル改訂の要求は,品質マニュアル保有者全員の権利であり,「マネジメントレビュー(経営者による見直し)」会議を主として,他の場合でも「品質マニュアル見直し要求書」を用いて品質管理部長に要求することがで
  • 4.品質マニュアルの正式な見直しは,最低年に1回は実施される。

☆改訂歴表を記載する。

Rev. 改訂年月日 ページ No. 改定内容 担当