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品質マニュアルの作り方(第48回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第48回

条項4.13 不適合品の管理

  • “不適合品の管理”では,状態別に不良品の処置方法を具体的に記述している。
  • 1. 製造サイクルのなかにあるすべての製品の品質状態を明確に定義することが会社の狙いである。これは,すべての不合格品に「不合格ラベル」を貼付することで明確に識別される。不合格ラベルには次の情報が入っている。
    • ① 製品部品番号
    • ② 欠陥状態
  • 2. 欠陥品は不合格ラベルによって識別され,直ちにNG (No Good)とマークされた赤い不合格品容器に収納され,分離される。こうした欠陥品は,部品ごとに保管され, 部門監督者の評価を待つ。
    部門監督者は,「製造記録/欠陥分析シート」に,製品名,欠陥内容,数量,是認などの詳細を記入する。
  • 3. 完成した製造記録/欠陥分析シートは,生産管理部門へ回付され,コンピュータへインプットされる。インプットされる内容は,不合格内容とその処置,たとえば再加工するか特別採用するか,廃棄するかなどである。

  • 再加工製品
  • 半完成品
  • 1. 不合格と判断されたすべての半完成品は,修理可能であれば,定められた部署に,再加工のために返却される。
  • 2. 再加工を行った作業者は,再加工後に,不合格ラベルに「修理済み」と,自分のサインとともに記入し,再検査のために,検査・試験部門へ移動させる。

  • 完成品
  • 1. 不合格と判断されたすべての完成品は,NGとマークされた赤い不合格容器に収納され,再評価のために,再加工部門へ移動される。
  • 2. すべての不合格品は,再加工部門において分離され,赤いラック上に保管され,次のような表示をもって識別される。
    • ① 再評価待ち
    • ② 再加工
    • ③ 検査・試験
    • ④ 廃棄
  • 3. 再加工終了後,作業者は,不合格ラベルに「修理済み」と自らのサインとともに記入し,再検査のために,検査・試験部門へ移動させる。
  • 4. 最終検査・試験において,適合すると認められたときには,不合格ラベルを取り除き,梱包・出荷部門へ移動させる。

  • 再加工後の不合格
  • 1. 再加工後に,検査基準に照らし合わせて再び不合格となった製品は,「2回不合格」のラベルを貼って,再加工部門へ返却する。
  • 2. もし2回目の再加工においても,なお検査基準に適合しない場合には,自動的に廃 棄とされる。

  • 廃棄
  • 1. 廃棄と判断された製品はすべてNGマークのついた赤い容器に収納され,「廃棄」とマークされた赤いラック上に保管され,処置されるまで隔離される。
  • 2. すべての廃棄と再加工の製品は,再加工作業者によって「製造記録・欠陥分析シート」に記入され,コンピュータへのインプットのため,生産管理部門に回される。

  • 特別採用
  • 1. 規定要求事項に不適合な製品・部品は特別採用を申請する。
  • 2. 特別採用を申請した製品・部品は許可・承認が下りるまでは隔離・保管される。
  • 3. 特別採用の許可待ちで隔離されている製品は,隔離中のラベルで識別し,隔離登録の記録がとられる。

条項4.14 是正処置

  • “是正処置” について具体的な事例を挙げて対応の仕方を説明している。
  • 1. 是正処置は,迅速に有効に実施されなければならない。品質システムと製造工程におけるすべての欠点は,なるべく早く取り除かなければならない。
  • 2. この欠点を是正する活動を行う目的は,顧客に対して自社の品質を保証することは当然として,納入をスケジュール通り行えるようにし,コスト低減をはかるなど,より魅力的な会社を作り上げていくためである。
  • 3. すべての欠点に対して迅速かつ有効に対策がとられることは,全従業員の意識高揚にもつながり,非常に有意義である。

  • 事例
  • 巡回検査において,半完成品のある電気特性が規格に外れていることを発見した。こんな場合は次のような対策がとられなければならない。
  • 1. 検査員は,工程で不良品が発見されたことを監督者に連絡し,その不適合の原因が発見されるまで作業を中止するよう勧告する。
  • 2. 品質技術担当者は,該当のバッチを隔離し,記録をとる。
  • 3. 品質技術担当者は,不適合原因を調査し,記録する。
  • 4. もし不適合原因が発見されなかった場合は,品質課長に報告する。
  • 5. なお調査しても原因が発見できない場合は,品質部門が設計,製造,技術部門に連絡し,そのアドバイスを求める。
  • 6. この調査には特性要因図,すなわち「魚の骨」が活用される。

  • 通常,分析後には,次のような不適合が発見される。
  • 1. 部品,材料の欠陥
  • 2. 微小な欠点
  • 3. 重大欠陥
  • 4. 製造方法の欠陥
  • 5. 機械装置の欠陥
  • 6. 人的誤り。この場合のとるべきアクションとしては次のようなものがある。
    • ・作業者をそのままにしておく。
    • ・職域拡大の訓陳を行う。
    • ・品質規格要求事項の教育を行う。
    • ・懲戒する。

  • 最終検査/試験及び顧客クレーム
  • 1. 毎週,品質部門によってすべての不適合品の分析がまとめられ,部長,課長,監督者に回覧される。
  • 2. 監督者は,この「欠点分析レポート」の内容が所属の全従業員に周知徹底しているかどうかを確認する責任をもつ。
  • 3. 定例ミーティングが次の目的のために開催される。
    • ① 不適合の一般的特徴とその傾向の討議。
    • ② 特定の不適合について,その分析とブレーンストーミングの実施。
    • ③ システム・工程の変更の確認。
    • ④ 不適合の再発防止のために行うシステム・工程の変更の上位者への確認。
    • ⑤ 最小のコストで生産できるような効果的品質システムを作り上げるための討議。

  • 品質管理
  • 「直ちに行動を起こす」という会社の方針を実践するために,品質部門は,次にあげるいくつかの統計的品質管理の方法を活用する。
  • 1. パレート図
  • 2. 層別
  • 3. 特性要因図
  • 4. グラフ
  • 5. 散布図
  • 6. ヒストグラム
  • 7. 管理図

  • 特別採用
  • 生産の過程においては,時に仕様外の製品が生まれることもあるが,これらはたとえ検査員によって不合格とされても,大きな欠点はなく,使用できることがある。このような状況で特別採用が申請される。
  • サポート文書
  • 特別採用書  QM 0018