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「パフォーマンスの改善」(第21回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第21回

第5章 プロセスレベルのパフォーマンス

-未来を見渡すときに、私はその行く手に(プロセス)に不安を持つことはありません。
望んだとしても、それを止めることができないし、だれもそれを止めることができません。
ミシシッピ川のようにそれはただ進み続けます。
– Winston Churchill

我々は、プロセスレベルが、最も理解されずまた最も運営管理されなかったパフォーマンスレベルであることに気づいています。我々がそれらに気を配るか否かに関係なく、プロセスは組織の中で進行(多くの場合のろのろと)しています。我々には2つの選択があります。「我々はプロセスを無視し、よい結果が起こることを、ただ望む」か、又は「プロセスを理解してそれらを運営管理する」かです。業務がどう行われるかを真に理解する唯一の方法が、組織を縦(部門の階層として)方向よりむしろ横(システムとして)方向に見ることであることを提案しました(第2章)。あなたが横方向から組織を見るとき、あなたはビジネスプロセスを見ています。
第4章では、組織レベルのシステム的見方を議論しました。我々は組織をシステム的に見るためのツールとして関係マップを紹介しました。我々は、関係マップに描かれたインプット-アウトプット(顧客-供給者)のつながりを文書化し調査することから、どのようにして多くの学習をし、また、最終的な改善が生ずるかを示しました。
しかし、あらゆるインプットとあらゆるアウトプットの間にはプロセスがあります。もし我々が玉ねぎの皮をむかず、インプットがアウトプットに変換されるプロセスを十分に検討しなければ、我々の理解及び改善は不完全なものになってしまします。組織レベルにおいては、展望を提供し、方向を設定し、脅威と機会の領域を示しますが、我々の経験は、通常、最も本質的な変化がプロセスレベルにおいて必要であることを強く示しています。明確な戦略、論理的な指示命令系統(組織レベル)及び熟練して強化された要員(業務/遂行者レベル)だけでは、欠陥のあるビジネスとマネジメントプロセスを補うことはできません。

プロセスとは何か?

ビジネスプロセスは、製品あるいはサービスを生み出すために設計された一連のステップです。いくつかのプロセス(プログラミングなど)が、1つの機能(部門)の中に全て含まれることもあるかもしれません。しかし、ほとんどのプロセス(オーダー遂行など)は組織横断的で、組織図の箱の間の空白に広がっています。
プロセスの一部は、組織の外部顧客が受け取る製品又はサービスに直結しています。我々はこれらを主要プロセス(primary processes)と呼びます。他のプロセスは、外部顧客の目には触れないが、ビジネスの効果的なマネジメントに不可欠な要素を産み出しています。我々はこれらを補助プロセス(support processes)と呼びます。第3番目はマネジメントプロセス(management processes)で、ビジネスプロセスを支援するためにマネージャーが講ずるべき活動を含んでいます。これらのタイプのビジネスプロセスの例を表5.1に示します。

組織レベルの理解及びその運営管理

プロセスは「バリューチェーン」と見ることができます。製品又はサービスを生み出す、あるいはそれを配送することへの貢献という意味で、プロセスの各ステップは、前のステップに対し価値を創造しています。例えば、製品開発プロセスの1ステップが「プロトタイプを市場テストすること」だとすると、このステップは、設計が終了する前に、開発中の製品あるいはサービスが市場にアピールすることを確実にします。
プロセスは、また、資源を消費するものです。プロセスは、プロセスが生み出す価値だけではなく、その価値を産むのに必要となる資本、要員、時間、設備及び材料についても評価される必要があります。
組織レベルでは、機能(部門)間の顧客-供給者関係についての理解を深めるために「玉ねぎの皮をむき」、一歩踏み込んだ分析をしました。プロセスレベルでは、プロセスをサブプロセスに分解することにより、「玉ねぎの皮をむきます」。例えば、製造プロセスは、スケジュール作成、段取り、製作、組み立て及びテストのようなサブプロセスを含むと考えられます。

なぜプロセスを見ますか?

組織の有効性は、プロセスで決まります。組織目標(第4章参照)は、表5.1に示されるような論理的なビジネスプロセスによってのみ達成されます。例えば、自動車メーカーの組織目標の1つが、顧客オプションを搭載した自動車を出荷するためにかかる時間を短縮することだとすると、効率の悪いオーダー投入プロセスか非効率な複合ラインでは、この目標の達成を望めません。
この様な状況をトップダウンの視点で見ると、プロセスの有効性が組織目標の達成の主要な変数であることがわかります。また我々は、ボトムアップの視点からプロセスの価値を分析することができます。業務/遂行者レベルでは、パフォーマンスを改善するための様々なステップが考えられます(第6章参照)。例えば、人材募集と昇進手続きを改善することができます。我々はより明確な、そして最新の職務記述書、より効果的なツール、及びより魅力的なインセンティブを提供することができます。意志決定を組織の下の階層に移すことができます。我々は、現場チームに彼らの作業単位の中で発生する問題を解決する権限を与えることができます。しかしながら有能で動機づけられた要員でさえ、ビジネスプロセスが許す範囲だけしか組織パフォーマンスを改善することはできません。