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「パフォーマンスの改善」(第23回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第23回

Computec社の2番目の組織目標は、ソフトウェアパッケージの納品サイクルを来年の終わりまでに平均72時間に短縮することでした。この目標によって、Computec社のオーダー遂行プロセスが、戦略上重要な項目になります。このプロセスの目標には、次のことを含みます。

Computec社の誤りにより、製品を間違った住所に出荷しない。
オーダー遂行コストを増やさずに目標である72時間を達成する。
顧客からのオーダーに関する問い合わせとフィードバックのための窓口を一箇所に集中する。

更にマネージャーは、Computec社の組織目標を基に、顧客支援プロセスのプロセス目標も策定しなければなりません。(プロセス目標が与える機能(部門)への影響は、プロセスマネジネントの項で述べます。)どんな場合においてもプロセス目標に関する重要な質問項目は、次の通りです。

重要プロセスの目標は、顧客要求事項および組織要求事項に連係していますか?

プロセス設計。Computec社がその重要プロセスの目標を策定した後、マネージャーは、そのプロセスが効率的に目標を達成するように設計されていることを確実にする必要があります。各プロセスとサブプロセスが適切に組み込まれているかどうかを明確にするため、組織横断チームにより、現在の業務が行われている様を表すプロセスマップを作成することを推奨します。組織レベルで作られる関係マップ(第4章参照)が部門間のインプット-アウトプット関係を示す一方、プロセスマップはプロセスがインプットをアウトプットに変換するためにその部門が処理するステップを順番に記述します。組織横断チームは、作業はどうにか行われているが、確立されたプロセスがないケースがほとんどであることに気がつきます。
図5.1はComputec社のオーダー遂行プロセスの全ての機能を代表するチームが作成した「Is」(現状の)プロセスマップです。マップ作りは、プロセスにかかわる構成要素の特定から始まり、左側の軸にそれらを示し、そのそれぞれに横につながる活動を描きます。この後、組織横断チーム(リストされた全ての機能の代表、できれば顧客を含めた)は、インプット(注文)を最終的に必要なアウトプット(支払い)が産み出されるまでの間に介在する全ての変換プロセスをなぞります。マップは、注文が処理される時に機能(部門)がどのように関わるかを示します。このマップの様式により、チームは重要なインタフェースをすべて見つけ、様々なサブプロセスの所要時間をマップに重ね、プロセスの断絶(不合理であるか、欠落しているか、関わりのないステップ)を特定することができます。

図5.1  Computec社オーダー達成:「Is」プロセスマップ(略)

Computec社のチームは、オーダー遂行の現在のプロセスを文書化して分析し、次のような断絶を特定しました。

販売員はオーダーを受付処理するのに時間をかけ過ぎます。
情報を入力し記入するのに、あまりに多くのステップがあります。
販売管理部門はオーダーをバッチ処理するため、プロセスの進行の遅れの原因となっています。
信用調査を、新旧両方の顧客に対して行っています。
信用調査は、オーダー処理をスタートする前(同時進行ではなく)に行なっているので、プロセスの停滞が起こっています。

そしてチームは、断絶のない「should」あるべき姿のオーダー遂行プロセスマップを作成しました。そのマップを図5.2に示します。

図5.2  Computec社オーダー達成:「Should」プロセスマップ(略)

その図が示すように「Should」あるべき姿のマップの大きな変化は、以下の通りです。

販売管理部門を除き販売部門によるオーダーの直接入力
注文処理と信用調査の同時進行処理
注文受付処理と記入ステップの単純化

その他考えられる「Should」あるべき姿プロセスは、注文に対応してパッケージが組み立てられ在庫を持たないジャストインタイムの生産システムでしょう。
「Is」現状と「Should」あるべき姿のプロセスマップ作りは、プロセス改善プロジェクトの中心的なステップです。(プロセス改善プロジェクトのステップのより詳しい記述は、第10章に示します。)またプロセスマップは、パフォーマンス改善以外の目的に使用することができます。例えば、多くの組織において、ISO9000規格で規定された文書化要求事項を満たす書式としてプロセスマップがマニュアルや手順書より役に立つことがわかってきています。
プロセス改善プロジェクトの成功は、次の質問に肯定的な回答をもたらします。

これはプロセス目標を達成するための最も効率的な/効果的なプロセスですか?

プロセスマネジメント。いかに論理的で目標達成志向のプロセスでも、それだけで運営管理できるものではありません。次に示すものは、効果的なプロセスマネジネントの4つの要素です。

目標マネジメント:全体的なプロセス目標が、全ての下位プロセスの目標の策定の基礎になっていなければなりません。我々が天然ガスパイプラインを運営管理しているとすると、パイプラインの端だけではなくそのパイプラインの多くの重要な合流点で圧力と純度を測定すると思います。同様に我々は、顧客中心のプロセスの最終目標に特に重要な影響を及ぼす各ステップに下位目標を策定する必要があります。図5.3はComputec社のオーダー遂行プロセスの下位目標のいくつかの例を示します。

図5.3  Computec社のオーダー遂行プロセス用の抜粋されたプロセス下位目標(略)