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「パフォーマンスの改善」(第32回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第32回

パート3:3レベルのパフォーマンスを適用する

第7章 パフォーマンスを戦略につなぐ

-最も勇敢であるのは、彼らの前にあるものに関する明確なビジョンを持っており、
栄光も危険も同様に、それに立ち向かう者たちです。
– Thucydides

どんなレベルにおいても、パフォーマンスの運営管理を行う前に、そのパフォーマンスへの期待は明確に設定され、周知されている必要があります。この必要性は組織レベルで特に強くなります。もし明確にビジネスを定義していなかったなら、我々は組織レベルのパフォーマンスを効果的に設計し、管理することができないし、プロセスと業務/遂行者レベルでの体制及びマネジメントの慣行を確立することができません。戦略による明確な案内の手がなければ、我々は、資源を適切に割り当て、重要なビジネスプロセスを運営管理し、正しい業務パフォーマンスに報酬を与えていることを確信することができません。古い中国の諺を少し修正し表現すれば、「我々がどこに行こうとしているかを知らなければ、どんなプロセスも業務も我々をどこへも連れて行きません」。
我々は、戦略計画のために膨大な数のモデル、理論及び方法論を加えるつもりではありません。組織の戦略が3レベルのパフォーマンスを効果的に導くかどうか、答えるべき質問を明確にするのが我々の目的です。明確な戦略は、表7.1に示される9つのパフォーマンス変数を突き動かす上質の組織目標へ、我々を導きます。

表7.1 9つのパフォーマンス変数における戦略の位置(略)

戦略とは何ですか?

組織戦略は戦略開発と戦略実施の2つの部分から成っています。戦略開発の核には4つの要素があります。

我々が提供しようとしている製品・サービス(我々が行おうとしていること)
我々が活動する顧客と市場(我々が誰のためにそれをしようとしている)
競争優位(顧客が我々から買う理由)
製品と市場の優先事項(我々が強調しようとするところ)

戦略実施の核には第5番目の多面的な要素があります:

システムと体制(何を、誰が、なぜ、どこに関し、どう成し遂げるか)

我々はこれらの5つの要素が戦略に対する全てであるというつもりはありません。しかしながら、全ての戦略の分析、決定及び処置は、下記のいずれかであると信じます。

最初の4つの要素へのインプット(市場調査、業界分析、競合相手分析、環境監視、ポートフォリオ計画)
最初の4つの要素の有効性を評価する方法(財務の結果、マーケットシェア、財務以外の重要成功要因)
5つの要素全てに関する哲学的な指針(価値、カルチャー)
5番目の要素の一部(予算、マーケティング計画、人材計画、技術プラン)
5番目の要素への障害を取り除く問題解決とアクションプラン

最高経営者(組織全体か任意の部門の)が、組織パフォーマンスを設計し、運営管理する前に答えるべき質問は何であろうか?

戦略的意思決定に先行する質問。

どんな価値が我々のビジネスを誘導しますか?
我々はどれぐらい遠い将来を見ていますか?
外部環境(規則、経済、資源の入手可能性、技術、競合相手、市場)に関するどんな仮定が我々の戦略をサポートしますか?

製品・サービスに関する質問(要素1)。

我々はどんな既存の、及び新しい製品・サービスを提供しようとしているでしょうか?(そして提供しようとしていないのでしょうか)
我々は新しい製品・サービスの可能性を評価するのに、どんな評価基準を使用しますか?

顧客と市場に関する質問(要素2)。

我々はどんな既存の、及び新しい顧客グループを対象にしようとしているのでしょうか?(そして対象としないのでしょうか)
我々は新しいマーケットの可能性を評価するために、どんな基準を使用しますか?

競争優位(要素3)に関する質問。

顧客にとって、どんな要素(価格及び/又は様々な次元の質)が重要と思いますか?
どの要素に競争優位を持っていますか?

製品と市場の強化領域に関する質問(要素4)。

現在のどの製品及びどの市場を強化(資源と注目)しようとしていますか?
どういう新しい製品或いはどの新規市場を強化しようとしていますか?

図7.1は、これらの質問の答えが、第2章で述べたパフォーマンスのシステム的視点の各部分を効果的に定義する手助けになることを示します。
質問1~11の答えがなければ、組織という船は舵を持たないことになります。組織とそれを取り巻く環境の中で位置づける戦略的定義と戦略目標がなければ、パフォーマンスマネジメントはせいぜい謎解きゲームに終わります。我々は「組織は物事を正しく行うだけでなく、正しいことを行う必要がある」と言う古い格言に賛同します。正しいこととは、実施可能で、包括的で、明確にはっきり表現された戦略に対応している活動のことです。

図7.1 組織システムの要素上の戦略の影響(略)