ISO情報

「パフォーマンスの改善」(第35回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第35回

第8章 年次プログラムから持続するパフォーマンス改善への移行

-影のような実体のないものをつかんで、本質を見失わないように注意しなさい。
– Aesop

ほとんどの大組織及び中規模の組織では、トップマネージャーはパフォーマンス改善プログラムを始めるのを好みます。これらのプログラムでは、品質、顧客サービス、リエンジニアリング及びチームワークのような用語を含む目標スローガンを持つ傾向があります。また、大量の宣伝を伴って開始されることが多いです。当初これらのプログラムは、大掛かりな資源の投入(トップマネジメントからの強固な支援のシンボルとしてしばしば引き合いに出される)によって支えられます。
あいにく改善プログラムは、現実的で、持続的なパフォーマンス改善のためのインフラストラクチャを確立するよりむしろ、多くの場合、最後的にはには影をつかむことになります。参考に、Fortune 100社のニュースレターの記事からの抜粋を紹介します。

最近の2つの品質チームのプレゼンテーションで、プログラムはその幕を閉じて終わりました。そのプログラムは5つのパイロットチームから327チームまで成長しました。93のプレゼンテーションがコスト節約を含んでいました。活動期間中、そのプログラムは参加的マネジメントの哲学の一部となっていました。それは問題解決やリーダーシップ、コミュニケーションのスキルを開発するという様な、目に見える結果と目に見えない結果の両方を提供しました。

ベトナム戦争におけるアメリカに勝ち目の無いことが初めに明確になったとき、バーモントの上院議員エーケンは、アメリカが勝利を宣言し、撤退することを提案しました。同様に、この会社は、チームと提案の数をもってその品質プログラムの成功を宣言し、そしてそれを止めてしまいました。
この組織の人材開発スペシャリストは(記憶と展望という珍しい商品を表示しながら)、会社がここ10年間で始めた36の生産性、品質、参加型経営及びカルチャーチェンジプログラムの1つに品質チームプログラムを位置づける系図を作り上げました。それらの各々は、印象的なファンファーレ、高邁な期待及び大きい予算と共に始まりました。しかし、その大部分は現在行われていないか、又はほとんど行われていない状態です。新しい経営手法への多くの従業員の反応は、経営コンサルタントのChris Hart(1987)がBOHICA-頭を下げ、それが通り過ぎるのを待つ-と呼ぶものであることに驚くことは無いでしょう。10年間のプログラムの後、従業員は、多少の期待は残るが、従来どおりの古いままの組織を認識することになるでしょう。
アメリカビジネスの短期的な財政展望は、ここ数年間多くの本と記事で徹底的に文書化され、(ほとんど効果はありませんが)酷評されています。短期的な視点は、組織改善にも及んでいます。魔法の弾丸を求めるアメリカのマネジメントの性急さは、企業家精神と製品イノベーションにおける印象的な記録が根底にあるものと思われます。しかしながら、こと実質的で持続するパフォーマンスの増加となると魔法の弾丸は存在しません。
我々の経験では、最も効果的な教育訓練計画や組織開発支援でさえ、パフォーマンスパズルの多くのピースの1つか2つだけを提供するだけに留まります。我々はどんな改善活動も、それが品質、顧客志向、生産性、サイクルタイム、コスト低減、又はカルチャーチェンジのどれに誘発されているかに関係なく、3レベルのパフォーマンスを取り込んだ度合いに沿った分だけ効果的であることを発見しました。

失敗したパフォーマンス改善活動の4つの例

あなたはこれらのパフォーマンス改善プログラムをどのように格付けしますか?
例1.ABCエレクトロニクス社の社長は「品質」という宗教に触れ、その信者になっています。彼の会社では、品質に十分な注意が払われていないので、彼は下記のことを行います。

すべてのマネージャーのために1日か2日のセッションを行なうため強烈に品質を語る講演者を見つけます。
人材能力開発部門に対し、各監督者にその部下と共にビデオに基づく議論のセッションを行う準備をするように指示します。
彼に直接報告するフルタイムの品質責任者を任命します。
品質責任者に1パラグラフの品質声明を作り、それを全社員に回覧するよう指示します。
従業員コミュニケーション部門に対し、優秀な作品を表彰するポスターコンテストを開催するよう指示します。
人事部門に対し、全社員が「品質-それはABC社の基本です」と書いてあるバッジを付けるように手配するよう伝えます。
品質技法のワークショップの外注又は開発のための追加財源を人材能力開発部門に提供します。

評価。ABCエレクトロニクス社の社長は、効果的な品質活動の多くの形式を採用し、その実態について少ししか採用しませんでした。彼の対応は、高貴に動機づけられて必ずしも危険であるというわけではないが、彼は組織、プロセス、又は業務/遂行者レベルにおいて長く残る顕著な行いを何もしていないので、総合的には「F」不可の評価となります。
彼が組織の品質戦略をはっきりさせたとか、機能(部門)間の関係を設計したという形跡はありません。彼は戦略的に重要なビジネスプロセスに品質を組み込むという活動を起こしませんでした、そして会社は評価、教育訓練、フィードバック、個々の業務に対する表彰制度に、品質を組み込んでいるように見えません。このシナリオには、短命と最小の効果に陥る全ての罠が含まれています。