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「パフォーマンスの改善」(第45回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第45回

フェーズ3:実施

我々は、プロセス改善の実施とは、単に計画して、それを実行するという簡単な事ではないと思っています。少なくない組織が、変容の計画を行なったがうまく実施できなかったという経験をもっています。変化への抵抗は、時により大きいことがよくあります。必要とする仕事量とコミットメントを形成する必要性のために、広範囲の参画が不可欠です。業務設計やソフトウェア開発のような領域では、特別な専門的技術が必要です。プロジェクトマネジメントは、行なわねばならない活動の幅と活動間の連携が原因で、大きな挑戦となります。そして、プロセスの再設計の核心への直接関与を避けた(及び避けるべき)経営者は、実施において積極的な役割を果たさなければなりません。
大規模なプロジェクトでは、フェーズ3は次のことを含みます。

実行への移行、それは次のことを含みます。
変容に対する準備と、身分の壁に与える変化の影響を評価し、それに立ち向かう。
改善対象プロセス関連部門メンバーからなるチーム作り、スケジュール表の作成、コミュニケーションと研修に関する要求事項を含む実行のためのインフラストラクチャを明確にする。
設計チーム及び実施チームの新メンバーの向けのあるべき姿“Should”内容の説明と同様に、実行のための訓練を行う。
組織全体への途切れないコミュニケーションを開始する。
「何を」「誰が」「いつ」そして「リスク分析」を含む詳細で統合された実施計画を策定する。
インフラストラクチャ、計画、及び資源に関し、運営チームが同意する。
インストール、それは詳細計画であるべき姿“Should”への移行に関し、必要と特定されたステップ、手順、コンピュータシステム、作業、作業環境、及び評価システムに「命を吹き込む」ことを含んでいます。インストールは、しばしば新しいプロセスの先行試験の役割を果たします。プロジェクトマネジメント、推進チームの関与、及びコミュニケーションが成功の鍵です。

フェーズ3では、変化が作業環境にサポートされ、かつ実施チーム自身が手におえないような仕事に立ち向かうために士気を高めることを確実にする手助けのツールとして、ヒューマンパフォーマンスシステム(第6章参照)が使用されます。

時間

プロセス改善プロジェクトには、どのくらいの時間がかかるのでしょうか。それは次の要素によります。

重大プロセス課題(CPI)の特質と大きさ
プロセス改善努力に含むその他の目標
プロセスの複雑さ
プロセスの状態(文書化、評価、管理されたことがない初期のプロセスでは、成熟し微調整だけですむプロセスより、分析と再設計に時間がかかるでしょう)

我々は、フェーズ1と2が8時間未満で効果的に実施され、フェーズ3が2、3日で成し遂げられた例を知っています。広範囲に及ぶ厄介なCPI(重要プロセス問題)と、複雑で、過度に組織を横断しているプロセスをもつ大プロジェクトでは、フェーズ2は3~4カ月にわたり、チームメンバーの20日分の時間を取ることもあります。変化の大きさによっては、第3フェーズが24カ月継続する必要があるかもしれません。
我々は、多くの時間や多くの月日がかかろうとも、すべてのプロセス改善プロジェクトは、上記のステップを踏むことで得るものがあると理解しています。ちょっとした活動においては、設計チームは複雑な活動で必要となるいくつかのサブステップと補助的なツールを使う必要は無いし、かつ、中間の推進チームチェックポイントを必要としませんので、そのステップを早く完了するでしょう。
ファシリテータの第一の役割は、設計チームが改善に必要なレベルの深さまで到達し、固有のプロジェクトが必要とするツールの使用を確実にすることです。フェ-ズ1で概説した憲章を効果的に満たすのに必要な時間をかけて、ただし、あまりかけ過ぎない、活動を確実にさせるのは、ファシリテータの仕事です。