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「パフォーマンスの改善」(第46回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第46回

プロセス改善プロジェクトの例

ここに、我々がファシリテータを努めたプロセス改善プロジェクトのサンプルがあります。

コンピュータ部品製造会社のあるチームは、低い納期遵守率に関心がありました。12人のマネージャーからなる組織横断チームは、注文から配送までの全体のプロセスを分析して、一連の改善提案を検討するのに4日間かけ、その改善提案は、2カ月に渡って実施されました。このプロセス 改善活動により、平均サイクルタイムは17週間から5週間に短縮され、納期遵守率が65%増加しました。このプロセス改善は、その後の12カ月も改善効果が続き、サイクルタイムは今や5日間まで短縮されています。
地方の電話会社の経営幹部は、その会社の殆どの部門に関係する顧客への請求書発行プロセスのパフォーマンスに関心がありました。そのプロセス改善活動は、規制緩和が進む状況で品質を改善するというニーズの下に推進されました。プロセスが広範囲に及ぶことと複雑であるため、5つの組織横断的なサブプロセスチームが編成されました。彼らはプロセスにおいて183の断然を見つけました。これらを改善した結果、品質向上(顧客調査に基ずく)、コスト削減、及びプロセス全体への各部門の貢献度を評価するシステムを実現することができました。
3人の中間管理職仲間は、彼らの会社が新しいコミュニケーション商品を設計・開発するのにかかる時間を大幅に短縮し、その商品を大量に生産するという厳しい競争上のプレッシャーを受けていました。彼らは、12人のマネージャーとエンジニアから構成されるチームが5日間働く組織横断的なプロセス改善プロジェクトを立ち上げました。彼らは現状「Is」プロセスを分析し、あるべき姿「Should」を開発しました。新プロセスによって、製品開発と導入に必要な期間は36ヶ月から12ヶ月に減らすことができました。プロジェクトを立ち上げた3人のマネージャーで構成されるプロセス監視委員会の注意深い視線の下、新製品はその新プロセスによって生産されました。
新しい電話会社は、吸収合併による成長戦略を検討していました。CEO(最高経営責任者)と彼のトップマネジメントチームは、販売から請求書作成のプロセスを記述するのに、マップ作りの手法を活用しました。その後、彼らは、固有の特徴を持つ会社を合併吸収する各々のシナリオを検討するいくつかのグループに分かれました。各々のグループは、新会社の統合の成功に不可欠であろうプロセス改善処置に加え、吸収合併のタイプ毎に現れるプロセスの潜在的な問題と機会を明確にするためにマップを使いました。この分析は、吸収合併の決定と、成長戦略実施への主要なインプットでした。
消費者向け製品を作るある会社は、二人の新副社長の席と現3人の副社長に対する新しい任務を伴う組織再編を経験しました。彼らの新しい責任を明確にするため、社長と副社長は1週間の内3日会合を持ちました。組織のマップを使用して、そのチームは、組織が3つの異なったタイプの注文にいかに対応し、年間計画をどのようにまとめるかを決定しました。その結果、主要な機能(部門)の役割に関して明確にされ合意されました。また、彼らは、たぶん組織再編を妨げるであろう問題を特定して、それを解決しました。この先取りしたプロセス改善により、新しい組織における「空白」の問題を最小限にとどめることができました。
大きい保険会社の新しい支社長は、支社のスタッフと本社のスタッフと共に方針を作成し、実施して、監視する、そしてまた現場の問題に対処する際に、支社と本社の役割を明確にするためのツールとして、マップ作り手法を活用しました。彼らの1日ミーティングで際立った成果の一つは、支社長が彼の支社の業務フローと機能的な関係を包括的に理解したことです。
あるエンジニアリングと製造の会社は日本の特許攻勢に強い関心がありました。この会社では、米国特許庁に申請されるまでに、社内の特許出願プロセスに平均2年もかかっていました。プロセスを分析して、改善することによって、チームは即座にその時間を6カ月まで短縮することができましたし、その後も改善が続いています。
ハイテク会社のタスクチームは、工場の目標と一般的なパラメータを規定することによって、半導体の「新設工場」の設計を、組織レベルで開始しました。そして、そのメンバーは、製造プロセスと核となる補助プロセスを設計するためにあるべき姿“Should”プロセスマッピング(レベルⅡ)を使用しました。最後に彼らは、レベルⅢに移り、そのプロセスに求められる業務、スキル、及び要員を定めました。
営業している国の急速な経済成長に遅れないように、銀行系のクレジットカード部門のマネージャーは、現在のコスト構造をそのまま残し、飛躍的なビジネスの増加を望んでいました。彼らは請求書作成及び支払いプロセス改善プロジェクトを立ち上げサポートしました。その結果、取引量50%増、マイクロフィルム作成や保管費用の削減、郵便物の混載(これだけで200万ドル節約)による運転費用の20%削減、顧客サービスのオンラインによる提供、取引明細のサイクルタイムを48時間まで短縮、そして不正行為によるロスの減少等により、フェーズ1の間に確立された目標の全てを達成し、中にはそれを越す成果を出しました。

これらのプロジェクトの各々には、固有の目的、固有の業務フロー、及び独特の方法論の使用があります。それらのすべてが、現状「Is」の分析や、あるべき姿「Should」の設計を求める古典的プロジェクト改善プロセスとは限りませんでした。そして、各プロジェクトにおいて、組織横断チームは、重要経営課題を取り扱うためにマップ作手法や他のプロセス改善ツールを使用しました。事例には次に示すプロセス改善の4つの利用法を含んでいます。

現在の課題を解決する。(請求書作成の品質)
基本的に満足できるが、改善の余地を持っているプロセスを改善する。(顧客サービス)
変化を評価して、実施する。(会社の合併吸収)
新しいシステムを設計する。(「新設工場」)