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「パフォーマンスの改善」(第49回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第49回

大罪2:プロセス改善活動が、適切な人、特に最高経営層を、適切なやり方で巻き込んでいない。我々は、プロセス改善は、部外者によってなされるべきでないと信じています。CEOは「我々のためにそれをしてくれる」の専門家を雇いたがります。これらのコンサルタントは、改善のための推奨提案事項を提示します。このやり方で一番欠けていることは、コンサルタントの推奨提案事項についての彼らの分析や知恵の完全性ではありません。むしろ、変化を部外者が提案するので、変化を実施する人達の参画が十分に得られないことにあります。
我々は最近7000万ドルを費やしたリエンジニアリングコンサルティング会社を使うのをやめた製造会社を知っています。感動的で、迅速なコスト削減効果がある一方で、会社が長期的パフォーマンス改善をもはや期待できなくなるような誤った願望を実務者に植えつけてしまいました。
プロセスの改善は、顧客と供給者を含むプロセスにかかわる人達によってなされるべきです。価値を付加する役割は、外部コンサルタント、又は品質、人事、プロセスリエンジニアリングのような部門の内部コンサルタントが果たすことができます。しかし、その役割には、分析と再設計を行うことを含みません。その役割は、プロセスの中で働き、その変容と共に生きていく人達にツールと指針を提示することです。
プロセス改善活動の欠陥のよくある原因は、最高経営層が活発に役割を果たさないことです。「最高経営層」には、事を起すことができる「スポンサー」又は「オーナー」及びプロセスに関係している部門又は地域の責任者から成る推進チームを含みます。彼らの役割は、プロセス改善活動全体を導く戦略を示し、各プロジェクトの方向性を示し、重要な岐路でチームを導き、障害を取り除き、妥当な推奨提案事項を承認し、変化の実施を運営管理することです。
皆が好む「権限委譲」のテーマに関して話すことは可能です。しかしながら、Dowなどの組織では、部門や地域や生産ラインのマネージャーの積極的参画なしには、意味ある変化は何も起こらないでしょう。もしあなたが積極的に役割を果たす準備をしていないなら、プロセスの再設計に投資してはいけません。(もし第10章で説明したフェーズ1の役割を明確に定義し、フェーズ2と3でその役割を果たせば、この罪に陥ることはありません。)

大罪3:プロセス改善チームは、明確で、適切な憲章を与えられているわけでもなく、またその憲章を実現させる責任を持たされていない。プロセス改善チームは、適切な部門と地域からの適切な階層の、高いモチベイションを持った人達で構成されていると仮定します。それは好調なスタートといえます。しかし、彼らが、任務の方向性や境界について明確な自覚がないと、彼らは、もがき苦しみ、活力を失い、期待に応えることができないでしょ。
最高経営層の役割の重要なことは、設計チームのメンバー1人1人に、以下の質問の答えを確実に理解させることです。

推進する課題は何ですか、そして、なぜそれが選ばれたのですか?(我々はなぜここにいるのでしょう?)
プロジェクト/プロセスの明確な目標は何ですか?(何を持って成功といえますか?)
我々の役割と活動に参加する他の人達の役割は何ですか?(なぜ私達各々は選ばれたのでしょうか? 我々はアナリストなのでしょうか? 推奨事項提案者なのでしょうか? 実施者なのでしょうか?)
成果物は何ですか?(新しいワークフローでしょうか?ベンチマーキングの情報でしょうか?アクションプランでしょうか?費用対効果の分析でしょうか?)
我々が改善すべきプロセスの境界はどこですか?(どこで、始まり、どこで終わるのでしょうか?)
もしあるとすれば、制約条件は何ですか?(何が「禁止事項」ですか?)
期限はいつですか? スケジュールはどうなっていますか?この活動にどのくらいの時間を費やすことができますか?
我々がこのプロジェクトにかかわっている間、我々の通常の業務はどうなりますか? 
我々の貢献はどのように報いられるのでしょう?(中身は何なのでしょうか?)

もし無気力で、そして冴えない結果しか出さないか、又は6ヶ月以上かけてもまだ推奨できる一連のプロセス改善を示せないチームの主唱者なら、その原因はこれらの質問に適切に答える憲章がないからでしょう。そして、それはあなたの責任です。
トップマネジメントは、憲章を策定し、成果を追及するプレッシャーを維持しなければなりません。ダウ社では、合理的な課題解決と「事実に基づく管理」を強調します。一般的にそのアプローチは大変役立ちました。しかし、過度の分析はプロセス改善活動を役に立たなくしてしまいます。なぜなら、追加情報は常に存在し、別の階層にある根本原因が掘り起こされるからです。ある時点では、改善活動の主唱者は、前に進まなくてはいけない時を明確にしなければなりません。
もし、プロセス改善チームに明確な方向性を示したり、「火に足を向けさせる」用意が無いなら、彼らの結果に失望すべきではありません。(推進チームがフェーズ1で仕事を完璧にこなし、フェーズ2と3で、その役割を果たせば、この罪を犯すことはありません。)