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「パフォーマンスの改善」(第51回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第51回

大罪6:組織は、実施よりも再設計に視点を置いている。
プロセスの再設計は、実施するまでは理論的なものです。変化を起こすことへの投資は、変化を成功裏に実施するために必要な暦時間、マネジメントの時間、及び資源と比べると見劣りがします。
最高経営層は、注意持続時間過小症に罹っている人々として定義されています。プロセス改善の実施を管理する時、この疾患には、安静にしてもらうことが必要です。あなたとトップマネジメントチームの他のメンバーは、再設計されたプロセスが定着するまで、焦点を合わせ続けなければなりません。複雑なプロセスでは、実施に9~18ヶ月かかるものがあります。
もし、あなたが我々の知っている電話会社の重役室を訪問したら、3×6フィートの厚紙のポスターを目にします。それは、その会社に対して作成された、総額13億ドルの小切手なのです。メモ欄には「プロセスリエンジニアリング再構築料金」と書かれています。それには、「株主」とサインされています。その小切手は経営層が変化に対しコミットし、焦点を合わせ続けさせる手助けをします。
実施するには、実施リーダーの指名、詳細な行動計画の立案、設計プロセスに参加した人数の大抵6~10倍の人数のグループの役割と報酬の明確化、及びそれらを運営管理することなど、新製品を市場に出すか又は新しいマーケットに参入する事に着手するのと同じくらいの規模変化を吸収する準備が必要です。
実施するには通常、方針、様式、コンピュータシステム、業務分掌、報酬等の変化が伴います。
肝心なことは、もしあなたが、卵をかき混ぜる用意が出来ていないのなら、人々にオムレツを設計するように頼んではいけないのです。第10章に示す実施プロセス(フェーズ3)は、この罪が私たちを苦しめない様に、設計されました。

大罪7:チームは、継続的なプロセス改善に必要な評価システムとその他の基盤(インフラストラクチャー)を残さなかった。組織がプロセス改善(プロジェクト)からプロセスマネジメント(継続的改善)へ移行しない場合、その組織は、必要ないくつかの問題解決には取組んでいるが、投資に対する潜在的な利益は享受できていません。
担当者レベルの設計チームにこの罪に対する責めを負わせることは出来ません。もし、彼らが再設計されたプロセスの継続的改善への手段をつくっていないなら、おそらく、活動の主唱者がそれを期待していることを伝えていなかったからでしょう。
プロセスマネジメントは、評価指標を基礎にしなければなりません。これらの評価指標は、部門目標が組織横断的なプロセスの有効性についてより大きな利益をもたらすこと、部門目標が顧客と財務上の両方のニーズをプロセスの終わりと上流部分両方に反映されること、及び部門目標がマネジメントの計器パネル上のプロセスの健康状態を示す「最も重要な」計器であることを確実にします。もし設計チームが新しいプロセスは作るが、そのプロセスについての評価指標を開発しないならば、彼らは仕事を完全にしたとは言えません。
いったん評価指標が確立すると、マネジメントはそれを通してパフォーマンスを監視し、そしてその情報を、意思決定、問題の特定、フィードバック、報酬の基礎として用いなければなりません。プロセスを基礎とした評価システムを導入することは、簡単なことではありません。しかし、これ以上の継続的改善に有効な手段はありません。そして、効果的なプロセス評価指標は、組織レベルの評価指標(収益と市場占有率のような)と担当者及びチームの評価指標の間の連係を提供します。
評価指標に加え、プロセスマネジメントは通常、個々の鍵となるプロセスに上位階層から「オーナー」を任命する必要があります。ダウ社のトップチームは、最も重要な会社規模のプロセスを8つ特定し、それぞれに「グローバルチャンピオン」を任命しました。これらの経営層には、プロセスパフォーマンスを監視し、報告し、問題に対処すること、プロセス改善活動を調整すること、ベストプラクティスを生産ラインと事業場をまたいで共有することが求められています。
プロセスマネジメントは、恒久的なプロセス改善チームを形成すること、正式にプロセスの見直を実施すること、プロセス毎に計画し予算を組むこと、場合によってはプロセスをベースに組織編成することにより強化されます。
問題は、再設計したばかりのこのプロセスへの焦点の集中を失わないように何をするか、ということです。ある地方の電話会社は、この問題に対し説得力のある言い方で答えました。その会社は、6年から7年の間に、プロセス改善プロジェクトが生み出した利益を誇に思っていますが、まだ日常での「プロセスによる運営管理」に到達していないということを心配しています。トップマネジメントチームは、その会社が発信する最も強い信号は、人々を評価し報酬を支払う方法にあると結論付けました。その会社は今、最高経営層から、労働組合に入っている末端の労働者に至る全従業員に対し、彼らが働いているプロセスのパフォーマンスを基本にしてボーナスを支払っています。彼らは、継続的プロセス改善に対するしっかりとした基盤を確立しました。
もしあなたが、プロセスを継続的に運営管理することへの用意がないとしても、大規模で特別なプロジェクト改善プロセスに継続的に資金を提供することを頼まれても驚かないでください。(7つの大罪を避けるために、12章で述べる評価システムと13章で述べるプロセスマネジメント基盤を確立することをお薦めします。)
殆どの会社では、最高経営者は、もはや「プロセス改善とはなんなのか?」とか「なぜプロセスを改善しなければならないのか?」などということは尋ねてきません。今日、彼らは「どのようにしたら、プロセス改善への投資による利益を増やすことができるのか?」と尋ねてきます。私達は、これらの解答の多くの部分が「これらの大罪を避ける事」であると信じています。