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「パフォーマンスの改善」(第59回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第59回

このシステムにおいては、目標は定期的に業務/遂行者とマネージャーの協議によって設定されます。パフォーマンスは、継続的に業務/遂行者によって、またマネージャーによって定期的に監視され、「対策がとられ」、是正されます。例えば、販売窓口担当は絶えず顧客訪問を行なっており、そのパフォーマンスを継続的に監視し、診断し、向上させていくべきです。販売マネージャーは販売と販売活動情報を継続的に監視すべきです。マネージャーと販売窓口担当とが隔週一緒に出張するようなときは、マネージャーはパフォーマンスを観察し、その観察について議論し、改善のための提案をするべきです。
パフォーマンス改善要素(ステップ3)のチェックは定期的に行われるべきであり、そうすることでより長い期間の改善活動に、業務/遂行者の表彰に、及び次期の目標につなげることができます。
効果的にパフォーマンスを管理するために、組織は、図12.7で示される全てのレベルの担当者向けパフォーマンスマネジメントシステムをもつことになります。ホテル経営の例に戻るならば、部門長は地区支配人と一緒に地区目標を設定し、地区支配人はホテル支配人と一緒にホテル目標を設定し、以下同様に設定していきます。その目的は、組織におけるすべての業務/遂行者レベルが組織及びプロセス目標と同じ方向に向かって動くことを確実にするため、業務/遂行者レベルと連動させることです。各レベルで監視される評価情報は、各レベルで必要とされるアウトプットに大きく左右されることになります。マネジメントの各レベルでは、部下の就業パフォーマンス、問題解決、是正の提案を監視することが主要指標です。
マネジメントの各レベルは、ステップ1の目標に対して部下のパフォーマンスを定期的にレビューし、どんな処置が継続的なパフォーマンス向上に必要かを下位のマネージャーと共に決定します。このようなシステムは、評価指標の誤用を防止し、以下の様に評価指標効力を高めます。

パフォーマンス計画/目標設定を行うことは、各レベルに期待されているアウトプットを明確にします。その結果、マネージャーは彼らの部下の仕事を行うことはしなくなる。組織横断的なプロセスパフォーマンスへのサポートを確実にするため、最高経営者は、責任が組織全体を通して適切なレベルに与えられていることを確認する目的で、このアウトプットの階層を見直すべきである。すべての業務/遂行者レベルのアウトプット階層を構築するプロセスは、前述のホテル・チェーンで我々が展開したパフォーマンスマネジメントシステムの主要な部分でした。先に本章で議論した(図12.5参照)担当責任マトリクス、部門モデル、及び業務モデルは、望まれる業務アウトプットを明確にしてそれを表す有効な方法であす。
先に本章で議論した評価システムは、システムのパフォーマンス問題解決要素を追跡するための情報を提供してくれる。ステップ1で特定する業務アウトプットと目標は、どんな評価情報(ステップ2)が、それぞれの業務/遂行者に利用可能であるべきかを決める大きな要因となる。パフォーマンスマネジネントシステムのこの要素は、問題の解決のための建設的な力となる。これが、工場長が行った製造ミーティングとホテル地区支配人の現場訪問の正しい目的である。
ステップ2では、評価情報を活用し、短期的な問題解決を図ることができる。ステップ3では、長期的な視野に立った個人/チームの育成と事業の継続的改善のためその情報を活用する。

評価システムを活用することで、全部門の3レベル全ての評価指標と、それぞれの部門の全ての従業員の評価指標とを確実に連動させることができます。パフォーマンスマネジネントシステムは、パフォーマンスを効果的に運営管理する評価指標の活用の仕組みを提供します。

要約

評価は、パフォーマンスマネジネントの主要な要素成分です。この題材は本一冊に値する大きい課題なのですが、システムとして組織を運営管理するに適切ないくつかの領域に議論を絞りました。
我々は、評価に関する次の「原則」が、組織と要員のパフォーマンスについての効果的な運営管理の基礎になることを信じます。

評価指標がなければ、パフォーマンス(成果)は運営管理できない。
評価指標がなければ、問題を具体的に特定できないし、説明もできないし、優先順位を付けることもできない。
評価指標がなければ、要員はどんな成果が期待されているのか完全には理解できない。
評価指標がなければ、要員は彼らの業務が正しいのか、そうでないのか確信できない。
評価指標がなければ、賞(昇給、ボーナス、昇進など)又は罰(懲戒処分、降格、解雇など)のための客観的で公正な基礎が存在しえない。
評価指標がなければ、パフォーマンス改善活動への引き金がなくなる。
評価指標がなければ、運営管理は非科学的な推測に陥る。
評価指標がなければ、プロセスによって行われる運営管理の基礎がなくなる。

残念ながら、良い評価指標を確立するということは簡単ではありません。幸運なことに、簡単なテクニックと基準(一部分は本章にある)が、マネージャーと個人の両方の貢献に対する評価ニーズに合う評価指標の質と量を確実にする助けになります。
評価指標単独では十分ではありません。たとえ評価指標が正しくても十分ではありません。評価指標はガイド及び道具として役立つだけでなく、パフォーマンスマネジネントシステムの基礎として役立たねばなりません。この点に関するシステム要素は、既に上述のように説明しています。
パフォーマンスマネジネントへの唯一の障害は、パフォーマンスマネジネントシステム構築に必要な時間を割く意欲がないことです。これへの投資は少なくはありませんが、短期的、長期的に投資分以上の回収ができることを経験的に知っています。第13章では、評価指標をベースとしたパフォーマンスマネジネント利点を示す「システムとして組織を管理する」シナリオを提示します。

図12.6 パフォーマンスマネジメントシステム(略)

図12.7 組織パフォーマンスマネジメントシステムの要素(略)