ISO情報

「パフォーマンスの改善」(第6回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第6回

パート1:パフォーマンスを改善するための枠組み

第2章 組織をシステムとして見る

-適応か、死か。
– 不明

組織についての伝統的な(縦の)見方

多くのマネージャーは、自分達の事業を理解していません。最近言われている、「原点に戻る」及び「自分の仕事に専念する」を実践することにより、自部門の製品とサービスを理解することができるかもしれません。加えて、彼らは顧客及び競合相手も理解できるでしょう。しかし、彼らはしばしば自分達の事業において、製品とサービスがどのように開発され、製造され、販売され、配送されているかを細部まで十分に理解していません。我々はこの理解不足の主な原因は、マネージャー(マネージャーでない者も)のほとんどが基本的に歪んだ組織像を抱いているからだと思います。
我々がマネージャーに自分達の事業体(会社全体、事業体又は部門)の姿を絵に描くように依頼すると、ほとんどが図2.1に示す伝統的な組織図を描きます。もっと多くの階層の箱と各種部門名があるかもしれませんが、その絵は必ず部門の縦の指示命令系統を表しています。
事業体の絵として図2.1には何が欠けていますか?第一に、顧客が示されていません。次に、顧客に提供する製品とサービスが示されていません。第三に、製品とサービスを開発し、製造し、配送する業務の流れをイメージすることができません。このように図2.1は、我々が行なうこと、誰に対してなのか、又はどのようにそれを行なうかを示していません。そのことを除くと、それは素晴らしいビジネス図です。しかし、皆さんは、組織図は上述のようなものを表すものではないと言うでしょう。いいでしょう。では上記のことを示すビジネス図はどこにあるのでしょうか?
小さいか又は新しい組織では、他の部門を理解する必要があり、組織の誰もがお互いを知っているので、この縦の見方は大きな問題にはなりません。しかしながら、時間が経過し、環境が変わり、技術がより高度化するにつれて組織がより複雑になってくると、この組織を縦に見ることが不利になってきます。

マネージャーが組織を縦の機能として見ると、彼らは縦割りの運営管理をしがちになり、ここに危険が潜んでいます。いくつかの部門を束ねるマネージャーは、大抵各部門を個々に運営管理します。目標は部門毎に独立に策定され、部門同士のミーティングは、活動を報告する時に限られます。
この環境では、マネージャーは他の部門をパートナーとしてではなく競争相手と認識しがちです。「サイロ」(高く、厚く、窓のない構造物)が部門を中心に築かれます。往々にして中間管理職は、これらサイロのために部門間の問題を解決することができなくなります。例えば、日程のやり繰りのような組織横断的な問題は、サイロのトップまで昇ります。サイロのトップのマネージャーは、別のサイロのトップのマネージャーとそれを協議します。そして両方のマネージャーは、その問題の解決策を業務レベルまで下ろすことになります。

サイロ文化は、マネージャーに低レベルの問題に首を突っ込ませ、もっと優先順位の高い、顧客及び競合相手に関する課題に取り組む時間を、彼らから奪います。これらのレベルの問題に本来当たるべき者は、自分自身は単に指示に従えばよい、或いは情報を提供していればよいと錯覚し、結果何ら責任を取らないことになります。でもこのシナリオは最悪ではありません。もっと悪いのは、部門の責任者がお互いに対立し、組織横断的な問題を全く取り扱わなくなることです。このような環境になると、「誰も責任を取らない」、「泥沼に陥った」というような事態が起きます。
各部門は、部門目標を達成しようと努力し、自部門のことしか考えなくなります(「金勘定」だけが上達する)。部門が自部門のことしか考えないと、組織全体は二の次となってしまいます。例えば、マーケティング/販売部は、製品とサービスを多く販売することによってその目標を達成し、会社で評価されるでしょう。もしそれらの製品とサービスが予定通りに利益を出すように設計されていなくても、又は配送されなくても、それは研究開発部門、製造又は配送部門の問題であり、販売部門は販売と言う業務をしたことになります。研究開発部門は、技術的に精巧な製品とサービスを設計することによって、良い評価を得ることができます。もしその製品とサービスを販売することができなければ、それは販売部門の問題です。もし利益を出すように作ることができないならば、それは製造部門の問題です。最後に製造部門がその生産額及び不良品減少の目標を達成すれば、それはそれで製造部門は組織の花形になれます。もし製品の急増により在庫コストが高くなるなら、それは配送部門、マーケティング部門、又は恐らく財務部門の問題です。このように、それぞれの状況下では、部門は伝統的な評価指標に対して卓越して行きますが、部門の事しか考えないことを続けていると、全体としての組織はいつか傷つくことになります。
A部門、B部門及びC部門のマネージャーが、B部門の下位マネージャーの所に行って、B部門がどうして納期通りに製造できなかったのかの理由を調べようとすると、「それはA部門の従業員のためです」という返事になりがちです。1987年8月24日発行のForbes誌 に紹介された、General Motorsの元CEO(最高経営責任者)とのインタビューは、この現象を説明しています。Forbes誌の記事は次のような質問から話を始めています。