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「パフォーマンスの改善」(第62回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第62回

フォードとボーイングを含むいくつかの組織は、プロセスが上記事項、及び他のパフォーマンス基準に合致しているかどうかを確認するために、プロセス認証格付制度を確立しました。この場合、4ポイントスケールにおいて、トップ格付けを達成するため、フォードのプロセスは35の基準を満たさなければなりません。これらの基準は、プロセスが名前を持ち文書化されているということから顧客によって欠陥がないと評価されるという要求事項までの幅をもっています。プロセスオーナーは評価と認証プロセス管理に関する基本的な責務を負っています。
定着化したプロセスマネジネントは、単なる認証プロセスとは違います。それは次のような企業文化でもあります。

プロセスオーナー、プロセスチーム、及びラインマネージャーは散発する問題を都度解決するのではなく継続的なプロセス改善を行う。
マネージャーは変化を計画し、実行し、新入社員を啓発し、戦略的代替案を評価し、内外部顧客へのサービスを改善するツールとして関係及びプロセスマップを活用する。
内外部顧客のニーズが、目標設定と意志決定を動かしている。
マネージャーは、部門内のプロセスの有効性と効率について及び部門が関係する組織横断的なプロセスについて繰り返し問いかけ、回答を得ている。 これらの質問に答えるためにはプロセスベースの評価システムが必要である。
プロセスの要求事項に基づいて資源を割り当てる。
部門長は、部門内のプロセスに対してプロセスオーナーとしての役割を果たす。
他部門に対する深い理解、インタフェースの整備、及び目標の両立性を通して組織横断的なチームワークを構築する。
要員が働いているヒューマンパフォーマンスシステムによって最適なプロセスパフォーマンスが強化されている(第6章参照)。

プロセスマネジネントが組織で定着した状態では、システム的視点(第2章参照)がパフォーマンス問題と機会を取り扱うための枠組みとなっています。プロセスの有効性と効率は、方針、技術、及び要員の判断を手段とするところの終着点です。

縦・横の組織運営

プロセスマネジネントの定着化には、組織内に縦と横の両次元が問題なく共存することが必要です。多くの場合、プロセスを取り巻く組織は実際的ではありません。プロセスに立脚した組織構造(第14章でより詳しく議論する)は縦と横の間の緊張をなくす一方で、プロセス間に種類の異なる空白「...」を作ってしまいます。その上、要員の追加を必要としますし、学習と資源の共有が阻害され、キャリアパス障害を作り出します。ほとんどのプロセスベースの組織では、機能(部門)が、「優秀性の中心」として残っています。
組織はどうすれば効果的な縦・横の構造を確立できるのか?我々の経験の示すところでは、鍵は評価です。我々が第12章で推奨したように、顧客志向であってかつプロセス中心の評価指標を確立することが第一歩です。プロセス中心の環境においても、部門マネージャーは、結果を出し、資源を割り当て、方針と手順を開発することに引き続き責任を持ちます。伝統的な(純粋に縦の)組織との唯一の違いは、各部門がプロセスへの貢献を反映した目標に対して評価がされるということです。ラインマネージャーは、伝統的な組織におけると同じ責任権限を有します。多くのマトリクス管理組織にあるような、2人の上司間の綱引き競争はありません。
部門は常に上位の正当性に貢献します。定着化されたプロセスマネジネント環境においては、その上位の正当性とは組織戦略に貢献するプロセスのことです。プロセスマネジネントは、供給者と顧客間に「我々は共にこの中にいる」という共生の考え方を助長しますから、部門長は「空白」を運営管理する何らかのサポートを必要とするでしょう。その支援に、プロセスオーナーがいます。
まとめると、プロセスマネジネントは、次の理由により、機能(部門)組織と問題なく共存することができます。

事業の方向を変えない。
組織構造や指示命令系統を変えない。
機能(部門)目標がプロセス目標と整合していることを確実にする。
責任や権限を変えない。
プロセスマネジメントはプロセス(既にそこにある)が合理的であることを確実にするためだけに、事業のやり方を変更する。