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審査における緊張 (一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会MELニュース第35号寄稿文

「緊張」

研修機関である株式会社テクノファで代表を務めております青木と申します。
弊社はISO 9001等の審査員、内部監査員養成研修を長らく行ってきている会社ですが、縁あって3年ほど前よりMEL協議会さんのお仕事をお手伝いさせていただいております。
日本で最も早い段階でISO 9001の審査員研修コースを立ち上げた会社として、単に研修事業の提供だけでなく、新規スキームの立ち上げの際にお手伝いをさせて頂くこともあることもあって、新MELスキームのGSSI承認申請の準備段階に、研修内容のリニューアルにかかる参画をさせて頂きました。

さて、今回は実施している研修の内容ということではなく、審査の現場における「緊張感」ということについてお話をさせて頂きたいと思います。

本誌をお読みの方は、MEL審査を受けられる立場の方もいらっしゃれば、審査をされる側の方もいらっしゃると思っております。釈迦に説法の部分もあろうかとは思いますが、初心に立ち返ってより良い業務運営、そして審査業務の改善につながる何らかのヒントになれば幸いです。
さて、本題に入りますが、審査の場面における緊張、というのは審査を受ける方はもちろんですが、審査をする側の方にとってもあるものです。お互いが良い意味での緊張感を保って審査が行われれば、両者にとって準備段階から含めて貴重な時間を使ってきた価値を感じることができるでしょう。

まずは審査を受ける側にとっての緊張感からお話します。

人間だれしも初めてのことを経験する際には大なり小なり緊張するものです。初めて審査を受ける組織の方々にとっては、審査とはどのように進んでいくのだろうか、そもそも審査員とはどのような方がお越しになるのだろうか、いろいろ厳しく指摘をされてしまうのかな、と現場の方々のみならず場合によっては経営者であっても緊張を感じるものです。
2回目以降の審査になればその緊張感はだいぶ和らぎますが、それでも今年も無事審査が終わるかな、という不安は誰もが感じていることのはずです。
その緊張を減らすには、当日では少々対応が遅すぎる、ということになってしまいますので、前日までにとにかくしっかりと、自分たちの考えられる範囲で準備をするしかありません。審査はあくまで基準に対してできているかどうかを判定する場ですから、その基準をしっかり読み込んで、自社の取り組みとしてできているのかどうかを、自信をもって答えられるようにしておけば、審査当日は何も臆することはありません。そこまで準備ができれば緊張する度合いも相当に小さくなるでしょう。もちろんすでに審査を受けたことがある他社の方に状況を聞く、などのことも行っておくに越したことはありません。ですがそれらは補足の対処であり、大事なことは日頃の取り組みです。基準、手順を理解し、その通りに日々の業務遂行ができていれば大丈夫だ、ということを経営者の方が確信し、社員の皆さんを導いてあげていただきたいと思います。

一方で、審査員の方にとっての緊張とは何でしょうか。
これは組織の方とは少々視点が異なります。
ある程度の経験を積んだリーダー審査員の方であれば、初回審査であってもその後の年次審査であっても場面、相手などが違えど大きく緊張する、ということはあまりないでしょう。リーダー審査員が緊張でがちがちに固まっていたら審査業務がスムースに進まずにかえって困ってしまいますから。
従って、審査員の方にとっては、緊張は無縁、と申し上げたいところですが、そこには一つ落とし穴があることにお気を付けいただきたいのです。
緊張がなさすぎることによるリスクです。審査は堅苦しい言い方をすれば、毎回、リーダー審査員と組織の経営者の真剣勝負であってほしいのです。その真剣勝負の中に審査の価値を高める、指摘事項ではなくても経営に付加価値を与える刺激がふんだんに盛り込まれている審査が理想の審査ではないでしょうか。もちろんこれは言うは易し、行うは難し、の典型例でしょう。ですが特に年次審査で前回も自分が担当した組織への再訪問であれば、前回から今回への変化、そして進化(深化も含め)がどのようにあったかを相手の経営者から、その方の1年間の経営のかじ取りの成果としてしっかり見て、感じて、そして受け止めたうえで、フィードバックする場として審査の場を活用していただきたいのです。
筆者自身、MEL審査とはかなり異なりますが、毎年審査を受け、トップインタビューの場に臨みます。その内容についての論評はここでは控えさせていただきますが、少なくとも筆者自身は上述の気持ちで、その審査現場に着席しているつもりです。

だいぶ長くなってしまいました。ここまでお読みいただきありがとうございます。
審査の現場における「緊張」。拙文でどれほど皆様にご理解をいただけたか一抹の不安もありますが、紙面が尽きてしまいました。
機会があれば補足の説明はいつでもさせて頂きます。
関係者の皆様が良い緊張感を常に保ったうえで業務に邁進される姿を拝見できることを楽しみにしております。研修の場でお目にかかった際には引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

以上