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ISO19011に準拠した内部監査に関する質問50選(その18)

内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

C:監査の実施
ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。

【質問18】
内部監査の実施の手順を教えてください。

【回答18】
内部監査は、組織が日常の活動についてそれぞれの部署が業務を標準通りに推進しているかを確認する手段です。一般に業務の推進状況を監視する手段には、自己チェック・相互チェック、内部監査、マネジメントレビューなどがあります。
自己チェック・相互チェックは「日常管理」と呼ばれ、業務推進者及び管理監督者が自分達の業務推進が正しく行われているのかを自分たちで確認する手段です。マネジメントレビューは、組織のマネジメント層が決められた期間で事業方針、事業計画、実行計画などに沿い実施状況を確認する方法です。

このように会社はいろいろな手段を使って各部署の日常を確認チェックしていますが、中でも有効であると言われているのが内部監査です。しかし、内部監査だけが会社の業務確認をする手段ではありませんので、内部監査の実施手順を複雑にすることは一般に得策ではありません。
物事を行うにはP、D、C、Aのステップに分けて考えることが良いと言われますが、内部監査もP、D、C、Aで手順を決めることをお奨めします。

Plan:監査の計画については、既にこの「内部監査質問50選」の第4回から第11回までに詳しく述べていますが、要約すると以下のようになります。
事業年度の初頭に監査の計画を立てます。ISO19011では、年間複数回行う内部監査の計画を監査プログラムと呼んで、内部監査責任者(監査プログラムをマネジメントする人)がこれを作成することを推奨しています。小さい組織において、年間複数回の監査が現実的でない場合は、1回の監査の計画が監査プログラムとなります。監査プログラムには今年の内部監査の狙い、重点、目的などを経営層と相談して書き込みます。内部監査を効果的なものにするためには、監査側と被監査側の事前の相談が大切です。

D0:今回の質問の監査実施の手順について述べます。監査の実施に当たっては、まず準備事項として、監査側と被監査側の双方で相談して個別の監査計画書を作成します。

1.監査の狙いに沿って、監査側と被監査側の双方で相談して決める主な項目は次の通りです。

   ・監査の対象
    -被監査部署の対象(職場、プロセス、人、機械、設備、型、道具、材料、エネルギー、スペース、保管、文書、記録など)
    -監査する標準書
   ・監査チーム(リーダーとメンバー)
   ・被監査部署の窓口
   ・監査日時
   ・監査の時間割(初回会議、監査実施、最終会議など)
   ・内部監査報告書の作成について
   ・改善活動(フォローアップ活動)について

監査チーム(リーダーを含む)は監査員としての資格を持っている人たちで構成されます。監査員資格者は、組織が資格要件をあらかじめ決め、該当する人を登録しておきます。一般に、資格要件は次のような事柄から決められます。

    -組織における経験(例えば、10年以上の勤続)
    -内部監査員教育の受講
    -監査の力量のある人(例えば、管理監督者経験がある、専門知識がある)
     監査チームのリーダーは登録された監査員の中からベテランが指名されます。
     場合によっては、数次にわたる監査実績がありA評価の人、といった具合です。
     監査員の評価については、<Cチェック>における質問43、44で扱います。

2.内部監査を実施します。

①初回会議で内部監査をスタートさせます。
②計画に沿って監査を次の方法によって行います。
    -観察する(文書の確認・レビューを含む)。
    -質問(インタビュー)する。
    -記録を確認する。
    -計画した監査が終わったら、これまでのまとめをします。
   ・監査所見、監査結論を作成する。
③最終会議で監査の終了を宣言します。

3.内部監査報告書を作成します。

内部監査報告書には監査で得られた事実が書かれます。というか、内部監査報告書には事実を書かなければいけません。事実をベースにした内部監査結果のチェックを監査側と被監査側の双方で行います(監査所見・監査結論の確認)。

Check:改善すべきことを決めます。監査チームのパフォーマンスを評価します。
監査が監査プログラム通りに行われたかを確認します。そして、監査側と被監査側の双方の同意に基づいて改善すべきことをリストアップします。監査責任者はこのリストアップされた一覧を承認します。
また、内部監査員、内部監査チームリーダを個別に評価基準と照らして評価します。

Act: 改善活動(フォローアップ活動)を行います。多くは被監査側で行うことになりますが、場合によっては関係する他部門の活動も必要になるでしょう。内部監査は経営者の指示によって行うものですから、改善も全社で取り組む必要があります。ここでも監査責任者が改善されたことを確認し、監査の終了を承認します。

「JIS Q 19011:2019の該当する部分」
  6.4.1 一般
監査活動は、通常、図1で示す定めた順序で行う。この順序は、個別の監査の状況に合わせて変えてよい。


6 監査の実施
6.1 一般
この箇条では,監査プログラムの一部としての個別の監査の準備及び実施の手引を示す。図 2 は,典型的な監査において実施される活動の概要を示す。この箇条をどの程度適用するかは,個別の監査の目的及び範囲によって異なる。



(次号へつづく)

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