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ISO19011に準拠した内部監査に関する質問50選(その20)

内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

C:監査の実施
ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。

【質問20】
内部監査員の力量(スキル)の要素について教えてください。

【回答20】
 内部監査員の要件の一つに力量(スキル)があります。前回の質問で力量には次の4つの監査スキルがあると説明しました。
・観察するスキル(文書の確認・レビューを含む)
・質問するスキル(インタビュー)
・文書作成スキル(監査所見、監査結論及び報告書の作成)
・サンプリングスキル

内部監査員の4つの監査スキルのそれぞれについて以下に説明します。
①観察するスキル(文書の確認・レビューを含む)
 内部監査で観察する対象は主につぎのとおりです。
 ・職場(雰囲気、照明、温湿度、騒音、換気など)
・人々の作業(プロセス)
 ・機械、設備
 ・金型、道具
 ・材料
 ・エネルギー
 ・スペース
 ・保管
 ・文書
 ・記録 など

以上のものを観察する場合に、ただ漫然と眺めていたのでは観察したことになりません。何を観察すべきかその対象を事前に決めておき、対象を規定している標準を読むことで、事前にポイント把握しておくことが重要です。標準としては、例えば、手順書、取扱い標準、点検基準、組成表、環境基準、安全の栞等いろいろなものがあります。

②質問するスキル(インタビュー)
 できるだけ、5W1Hの質問形式でインタビューします。Yes、Noで答えられる質問はあまりしないようにします(絶対にしないということではない)。
 例)・手順書の通り仕事をしていますか? →はい(Yes)
   ・手順書はいつ(When)見ますか?→はい(Yes)、いいえ(No)では答えられない。
    従って、こちらの質問の方が多くの情報を得られます。
③文書作成スキル
監査所見、監査結論及び内部監査報告書などの文書の作成が適切にできるスキルです。文書作成の目的、文書の構成、主語と述語、使用する語彙、誤字脱字など習得する要素が多くあります。
④サンプリングスキル
 質問する相手を選んだり、観察する文書・記録を選んだりする主導権は監査する側にあることを明確にしておくことが大切です。被監査側にサンプリングの主導権を与えると客観的な内部監査にならない恐れがあります。なぜならば、被監査者は自分に都合の良い対象を選ぶ(サンプリングする)からです。

「観察についてJIS Q 19011:2019の該当する部分」 (抜粋、赤字は筆者追加)
A.14 情報源の選択
選択する情報源は,監査の範囲及び複雑さに応じて異なってもよく,それには,次の事項を含んでもよい。
a) 従業員及びその他の人々へのインタビュー
b) 活動並びに周囲の作業環境及び作業条件について行う,観察
c) 文書化した情報。例えば,方針,目的(又は目標),計画,手順,規格,指示,ライセンス及び許認可, 仕様書,図面,契約及び注文
d) 記録。例えば,検査記録,会議の議事録,監査報告書,監視プログラムの記録及び測定結果
e) データの要約,分析及びパフォーマンス指標
(後半省略)

「質問(インタビュー)についてJIS Q 19011:2019の該当する部分」 (抜粋、赤字は筆者追加)
A.17 インタビューの実施

インタビューは情報を収集するための重要な手段であり,対面又はその他のコミュニケーション手段を通じて,その場の状況及びインタビュー対象者に合わせた形で行うことが望ましい。ただし,監査員は,次の事項を考慮することが望ましい。
a) インタビューは,監査範囲内で,活動又は業務を遂行している適切な階層及び機能の人々に対して行うことが望ましい。
b) 通常,インタビューは,通常の就業時間中に,実行可能であれば,インタビュー対象者の通常の就業場所で行うことが望ましい。
c) インタビューを始める前及びインタビュー中に,インタビュー対象者の緊張を解くことを試みることが望ましい。
d) インタビューを行う理由,及びメモをとるのであればその理由を説明することが望ましい。
e) インタビュー対象者の業務について説明を求めることによってインタビューを始めてよい。
f) 質問の種類を注意して選択することが望ましい[例えば,自由質問,選択質問,誘導質問,価値を認める質問(appreciative inquiry)]。
(後半省略)

「文書作成についてJIS Q 19011:2019の該当する部分」(抜粋、赤字は筆者追加)
A.13 監査作業文書の作成

監査作業文書を作成するとき,監査チームは各文書に対して次の質問を考慮することが望ましい。
a) この作業文書を利用してどの監査記録を作成するか。
b) この特定の作業文書がどの監査活動に結び付くか。
c) この作業文書を利用するのは誰か。
d) この作業文書の作成にどのような情報が必要か。
複合監査に対して,監査活動の重複を避けるために,次の事項によって作業文書を策定することが望ましい。
- 異なる基準から類似の要求事項をまとめる。
- 関係するチェックリスト及び質問事項の内容を調整する。
監査作業文書は,監査範囲内のマネジメントシステムの全ての要素に対処するために十分であることが望ましい。また,監査作業文書は,いかなる媒体で提供してもよい。

「サンプリングについてJIS Q 19011:2019の該当する部分」(抜粋、赤字は筆者追加)
A.6.2 判断に基づくサンプリング※

判断に基づくサンプリングは,監査チームの力量及び経験に依存する(箇条 7 参照)。 判断に基づくサンプリングに対して,次の事項を考慮し得る。
a) 監査範囲内の前回までの監査経験
b) 監査目的を達成するための要求事項(法令・規制要求事項を含む。)の複雑さ
c) 組織のプロセス及びマネジメントシステム要素の複雑さ及び相互作用
d) 技術,人的要因又はマネジメントシステムの変化の度合い
e) 以前に特定された重要なリスク及び改善の機会
f) マネジメントシステムの監視からのアウトプット
(※)判断に基づくサンプリングとは、統計的なサンプリングではないものをいう。

(次号へつづく)

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