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ISO19011に準拠した内部監査に関する質問50選(その29)

内部監査はJIS Q 19011に沿って行うことが推奨されています。「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って分かりやすく解説します。

C:監査の実施
 ここでは内部監査の実施段階の質問を扱います。
【質問29】
質問(インタビュー)には、「開かれた質問」と「閉ざされた質問」があると聞きましたが、それぞれどのような質問でしょうか?
【回答29】
この質問に対しては、以前に回答20の中で監査員の力量の一つとして、「②質問するスキル(インタビュー)」を上げ、その中で骨子を述べましたが、なお詳しく説明します。
監査員(質問者)が質問するときに期待することは、当然のことですが、被監査者からできる限り多くの情報を聞き出すことです。
監査員(A)が得る情報量を多くするためには、聞きたいことをBに分かってもらわねばなりません。日常多くの場面で経験することですが、Aの思っていることは簡単にはBに伝わりません。その理由は、AとBとでは「言葉」についてそれぞれ思っていることが異なるからです。
例えば、「花」と言う言葉を聞いても、Aは「ラン」のような派手な花を思うかもしれませんが、Bはもしかすると「さくらそう」のような可愛らしい花を思って答えるかもしれません。AとBは言葉について同じレベルで考えることがコミュニケーション上どうしても必要ですが、そのような状態を作り出すには工夫が必要です。
 1) 話題にしていること対象にしていることについて、その背景を共有すること。
 2) 質問の意図を十分に説明すること。
 3) 多く答えざるを得ない質問をすること。

3)に書かれている「多く答えざるを得ない質問」が、「開かれた質問」です。この質問の仕方はISOマネジメントシステム審査における手法として海外から紹介されました。「開かれた質問」はOpen Questionと呼ばれています。これと反対の言葉が「閉ざされた質問」で、Closed Questionと呼ばれます。

開かれた質問(オープンクエッション)とは、質問を受けた人がいろいろしゃべりやすい形の質問を言います。
例えば、
 -何(What)をしていますか?
 -いつ(When)しますか?
 -どこで(Where)しますか?
 -誰(Who)としますか?
 -どちらを(Which)しますか?
などの質問に対しては、聞かれた人は何かを答えなければなりません。
それに対して、
 -それは終わりましたか?
 -明日終わりますか?
 -ここで行いましたか?
 -Aさんと行きましたか?
 -Bを選びましたか?
などは、ハイ又はイイエの一言で回答が出来てしまいますので、閉ざされた質問(クローズドクエッション)と言います。このような形の質問はできるだけ避けることがよいとされています。もちろん、最初のあいさつで「お元気ですか?」と話しかけることまでいけないということではありません。

< JIS Q 19011:2019の該当する部分> 
A.17 インタビューの実施(再掲)
インタビューは情報を収集するための重要な手段であり,対面又はその他のコミュニケーション手段を通じて,その場の状況及びインタビュー対象者に合わせた形で行うことが望ましい。ただし,監査員は,次の事項を考慮することが望ましい。
a) インタビューは,監査範囲内で,活動又は業務を遂行している適切な階層及び機能の人々に対して行うことが望ましい。
b) 通常,インタビューは,通常の就業時間中に,実行可能であれば,インタビュー対象者の通常の就業場所で行うことが望ましい。
c) インタビューを始める前及びインタビュー中に,インタビュー対象者の緊張を解くことを試みることが望ましい。
d) インタビューを行う理由,及びメモをとるのであればその理由を説明することが望ましい。
e) インタビュー対象者の業務について説明を求めることによってインタビューを始めてよい。
f) 質問の種類を注意して選択することが望ましい[例えば,自由質問,選択質問,誘導質問,価値を認める質問(appreciative inquiry)]。
g) 仮想設定における限られた非言語コミュニケーションを認識する。その代わりに,客観的証拠を見出すために用いる質問の種類に焦点を当てることが望ましい。
h) インタビューの結果をまとめて,その内容をインタビュー対象者とレビューすることが望ましい。
i) インタビューへの参加及び協力に対して,インタビュー対象者に謝意を表することが望ましい。

(次号へつづく)

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