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ISO19011に準拠した内部監査に関する質問50選(その50)

今回が50回目の最後の質問及び回答になります。これまで「平林良人の部屋」に掲載されている「内部監査とマネジメントレビューに関する質問100選」に加え、内部監査でのポイントをJIS Q 19011:2019に沿って解説してきました。最後は改善のためのキーである根本原因の探求についてです。

E:監査における処置
ここでは内部監査の処置段階の質問を扱います。
【質問50】
改善についてのポイントである根本原因を探し出す「なぜなぜ5回」を教えてください。
【回答50】

原因の究明には「なぜなぜ」の展開が効果的です。質問45で「なぜなぜ」を5回繰り返す話をしました。
【例】工作機械の切削効率が落ちた。
 ・なぜ工作機械の切削効率が落ちたのか?
  -刃物が摩耗していた。
 ・なぜ刃物が摩耗したのか?
  -切削油が少なくなっていた。
 ・なぜ切削油が少なくなったのか?
  -切削油の流路にあるフィルターの効率が落ちていた。
 ・なぜ切削油の流路にあるフィルターの効率が落ちたのか?
  -フィルターに金属切削くずが詰まっていた。
 ・なぜフィルターに金属切削くずが詰まっていたのか?
  -1週間作業を続けるとフィルターには金属切削くずが詰まる。
この論理的展開のあと、改善として採用されたのは「5日ごとにフィルタを交換する」というものです。
この5回のなぜなぜ問答はトヨタ自動車の元副社長大野耐一氏が紹介したものです(「トヨタ生産方式」ダイヤモンド社 1978年)。このなぜなぜに出てくる5回は、一つの例え話であって、実際は4回だったり、6回だったりします。

「なぜなぜ」の展開で重要なことは次の2点です。
1.要因と結果は論理的につながっている。
2.原因は“人”ではなく“仕組み”に求める。

ここで、要因と原因という類似の言葉が出てきますが、両者の違いは次のとおりです。
 ・要因:結果をもたらすに必要な因子
 ・原因:要因から絞り込まれた、直接結果をもたらす因子

「なぜなぜ」展開で重要な上記2点について説明をします。
例えば、不適合として「メールが誤送信された」があった場合、 要因を「作業者が注意深くなかった」としたとします。
1.「作業者が注意深くなかった」と「メールが誤送信された」とは、論理的には繋っていません。単なる状況説明にすぎません。
  「メールが誤送信された」の論理的要因は、例えば、「メールアドレスが誤っていた」です。
2.「作業者が注意深くなかった」を原因にすると、その対策は、担当者に注意する、担当者に教育訓練をする、あるいは
  担当者を変えるというような人に対する対策になります。しかし、教育訓練をしても、或いは他の人が担当になっても
  同じような不適合は発生します。人が要因になってしまうと、対策の多くは表面的な改善?に終わってしまい、
  再発防止に繋がりません。
  「メールアドレスが誤っていた」を原因とすると、システムに手を打つことになり、効果的な再発防止が期待できます。
  この例の場合、「送信前にメールアドレスをチェックする仕組み」を導入します。当然のことですが、「送信前に
  メールアドレスをチェックする」仕組みは具体的に実行可能なものでなければなりません。

< JIS Q 19011:2019の該当する部分> 
JIS Q 19011には改善の仕方についての記述はありません。
(おわり)

ISO関連用語解説「19011とは」はこちらから