ISO情報

私とマネジメントシステムそしてISO(その38)

第38回

4.1 規格の仕様書の作成着手
ブカレスト総会から約1年,2004年11月30日〜12月5日にマレーシアのクアラルンプールにおいてISO/TC176総会が開催されました。この2004年は,ISO9001/9004の“次”を見据えた議論を開始し,将来への伏線をはったブカレスト総会での決議を受けて,ISO 9001/9004の定期見直しが実施された年でありました。

私はこの時も妻と娘を連れて行きました。前の年のブカレスト総会への同伴で海外の人たちとの交流に楽しみを見出した彼女らはISO 総会の予定日を1年も前から聞き出し、1週間の計画をあらかた立てていました。娘はイギリスの私立6年生高校アウンドル(Oundle:Peterborough)を卒業したことから、高校時代にマレーシアからイギリスに来ていて同クラスの生徒との面会をことのほか楽しみにしていました。

以下は日本代表団の飯塚先生の回想録から引用させていただきます。
「クアラルンプール総会は,その結果を受けて,ISO9001/9004の改正作業を実質的に開始する大切な総会であったにもかかわらず,こともあろうにWG18のリーダのJeff Hooperが来なかった。これは非常にまずい。新米副リーダの私(飯塚)はWG18の開会時と閉会時の総会を主催し,さらにSC2の開会時の総会でWG18の活動報告をしなければならない。もっとやっかいなのは,WG18の幹事会であるPOTGを毎日開催し,WG18の各TG(タスクグループ)での審議の進捗管理をしなければならなかった。母国語でできないことに加えて,様々な事柄の背景,相互関係を総合的に理解しておかなければならないことにはつらいものがあった。しかし,まあ何とかなるものである。」

2004年11月30日午前中,ISO/TC176の開会時の総会において,以下の決議が採択されました。この決議は,この週にSC2が,ISO9001の追補とISO9004の改正の規格の設計仕様書(Design Spec.)の作成に着手することを認めるものでありました。
<ISO/TC176クアラルンプール総会決議>(開会時)
ISO/TC 176/SC2からのISO9001追補及びISO9004改正提案
規格の妥当性評価(Justification Study)及び本提案への関連インプット,並びに各加盟団体からのコメントのレビューを完了し,ISO/TC176は,ISO/TC176/SC2が提案しているISO 9001の追補及びISO9004の改正の業務の実施を許可することに同意する。

そして,SC2の閉会時の総会のときに,以下の決議が採択されました。
<ISO/TC176/SC2クアラルンプール総会決議>(閉会時)
ISO9001追補及びISO9004改正の設計仕様書(Design Spec.)
ISO/TC176/SC2は,ISO9001追補及びISO9004改正の仕様書につき,それがWG18によって完成されたら,3か月投票に付し,回付する。

これは、上記のISO/TC176総会開会時の決議を受けて,SC2において,WG18/TG1.16とTG1.17が検討したISO9001追補とISO9004改正の設計仕様書(Design Spec.)を3か月投票に付すというものです。この投票が成功することを見越し,翌2005年5月に開催予定のSC2で,コメントを考慮して修正した設計仕様書(以下,仕様書という。)を正式に了承して,ISO9001追補及びISO9004改正の原案執筆を始めることができるようになると考えたわけです。

規格の仕様書とは,規格を製品と考えたときの製品仕様書のことです。今回の改正にかかわる仕様書は,正確には,ISO9001:2000に対する追補の仕様書,及びISO9004:2000に対する改正の仕様書です。ISO9004については大幅に改正するのだから,次のISO9004をどのような規格にするか。その仕様と考えてよいわけです。ISO9001については,2000年版から実質的内容を変えないと決めているので,“追補”と称してISO9001:2000に対してどのような変更を加えようとするのかについての仕様を作成することになります。だから丁寧な言い方をすれば“ISO9001:2000に対する追補の仕様書”となり,ISO9004の改正の仕様書とは異なり,追補という“変化”を明確に規定する文書を作成することになったのです。

(つづく)