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私とマネジメントシステムそしてISO(その44)

第44回

前回、ISO9001追補改正の設計仕様書抜粋をお示ししましたが,当時(2005年5月)の正式な資料がありますので、参考に見ていただこうと思います。見ていただきたいのは、内容そのものよりは国際会議の資料の形式、体裁、詳細度合いなどです。この資料は国内委員会向けに日本語に翻訳してありますが、国際会議では当然ですが、英文が正式資料になります。少し長くなりますが,国際会議の作業を理解していただくために,ISO9001:2000に対する追補改正の参考訳を記載します。

ISO 9001の追補作成に関する設計仕様書

文書:ISO/TC 176/SC 2 N730
目次

序文
利用者のニーズ,並びに影響及び便益の評価
追補作成の目的及び範囲
追補後の規格の適用範囲,目的,表題及び適用分野,並びに基本原則
両立性
一貫性
モデル及びその特徴
規格の構成
追補の本文で対応すべき事項
ドラフト作成に関する手引き
リエゾン
附属書A:参照用インプット文書の一覧
附属書B:提案された変更による影響及び便益の評価ツール

0. 序文
2004年にISO/TC176/SC2はISO9001:2000の廃止,確認,追補作成,改訂の決定をするために公式な定期見直しを実施した。大多数は追補作成することが望ましいという回答であった。

定期見直しと併行して,ISO/TC176/SC2では,広範囲なISO9001:2000及びISO9004:2000 に関するユーザーフィードバック調査を実施した。
ISO/TC176/SC2は,次にISO/Guide72:2001 Guidelines for the justification and development of management system standardsにしたがって,追補を作成する必要性の十分な根拠があることを実証するために,ISO/TC176にジャスティフィケーションスタディーを示した。

2004年に行われた総会での議論を受けてISO/TC176はジャスティフィケーションスタディーの提言を承認し,ISO9001:2000の限定的な追補作成のためにこのプロジェクトを実施することが望ましいと決議した。
この設計仕様書は,追補を作成するために要求される事項に対するアウトプットをまとめたものである。
ISOGuide72ではまた,設計仕様書がドラフト作成に先駆けて承認されることを推奨している。その結果,この設計仕様書がISO/TC176/SC2のメンバーにレビュー及び投票のために回付されることになる。

この設計仕様書は、ISO/TC176/SC2エキスパートにISO 9001の追補作成に対する手引きを与えるために,またドラフト作成プロセスのアウトプットに対する検証の枠組みとして使用される。

1. 利用者のニーズ,並びに影響及び便益の評価
Justification Studyでは,次に示すによって利用者のニーズを明確化した。
2003年から2004年に実施されたISO9001:2000に関する定期見直しの結果(ISO/TC176/SC2文書:N676R)
ISO/TC176/解釈WGからのフィードバック(ISO/TC176/SC2文書:N683R)
ISO/TC176/SC2/WG18により,広く各国を対象として実施されたISO9001及びISO9004ユーザーフィードバック調査(ISO/TC176/SC文書:N681)及び同様な各国の国内調査

また,利用者及びそのニーズの明確化を行なったISO9001の元々の設計仕様書(ISOTC176 文書SC2 N307)も参照した。
追補プロセスへの上記文書及び他のインプット文書は,附属書Aに列記した。
また,Justification Studyでは,TC176/SC2及びTC207/SC1 Joint Task Group on Co-ordination (the JTG)が発表した両立性に関するアウトプットも,利用者のニーズに関する重要な情報源として活用した。そのフィードバックからの要求事項は,4章“両立性”で扱われている。

上記インプットについては,検討を加えたうえで,この設計仕様書の作成作業の中で考慮した。(8章参照)。
利用者のニーズを満たすためには,追補後の規格も現行版と同様に一般的なもので,あらゆる産業分野で事業を展開するあらゆる規模及び業種・形態の組織に適用できるものでなければならないということを強調した。しかしながら,次のことも留意した。
コメント及び調査におけるサンプルの規模と回答者の地理的バランスには限界があった。
ISO9000及びISO9004ユーザーフィードバック調査での,規格の特定の章に関するコメントの総数は,調査への回答の総数と比較して少ない場合があった。
解釈の数が限られていることが,必ずしも利用者全員による明確化の必要性を代表するものではない。
追補の作成は,関連するマネジメントシステム規格に影響を与えることがある。

Justification Studyでは,ISO9001の変更を追補のレベルに限定することにより,規格の利用者への影響を限定的なものに止めることを求めている。また,その変更が利用者に明確な便益があるところに導入することを求めている。その結果,附属書Bに記述したツールを活用して,提案されている変更によって生じる可能性のある影響及び便益の分析が行われるであろう。

追補プロセスの目的及び範囲
2.1 目的

追補作成の目的はISO9001:2000の明瞭性を高め,ISO14001:2004との両立性を高めることである。
範囲
次に示す要求事項を追補プロセスに適用すること。
ISO9001:2000で明確化したモデル及びプロセスアプローチを維持すること(6章“モデル”及び7章“構成”参照)。
追補後の規格も現行版と同様に一般的なもので,あらゆる産業分野で事業を展開するあらゆる規模及び業種・形態の組織に適用できるものであること。
ISO14001:2004との両立性を維持し,可能であれば更に高めること。
ISO9001とISO9004の一貫性を維持すること(5章参照)。
利用者への追補の影響を限定的なものに止めるべく変更は抑え目にすること。また,その変更は利用者に明らかな便益があるところに導入されること。(8章及び附属書B参照)。
追補の執筆者は,附属書Aに列記したインプット文書,並びにISO/TC176で承認されれば他のいかなるインプットにも対応するよう徹底すること。
執筆者らは,明確化のための問題を明らかにする過程でISO9001:2000支援パッケージを活用することが望ましい。
追補後の規格のドラフトは,設計仕様書に照らして検証し,利用者によって妥当性確認をうけること。

3.  追補後の規格の,適用範囲,目的,表題及び適用分野,並びに基本原理
規格の現在の適用範囲及び目的,表題,並びに適用分野は,ISO9001:2000と変えないこと。
(ISO9000:2000に記載されている)品質マネジメント基本原則は,追補においても適用し,変えないこと。

4.  両立性
両立性の問題に対応すべき主要分野が二つある。
4.1 ISO14001
ISO/TC176/SC2及びISO/TC207/SC1が共同で確立した両立性の概念をこのプロジェクトで用いること。その定義は次のとおりである。
マネジメントシステム規格の場合,“両立性”とは,複数の規格の共通要素の全て又は一部を,不必要な重複や相対立する要求事項の強要を伴わずに,同じやりかたで組織が実施できることを意味する。“両立性”とは,複数の規格の共通要素の文章が全く同じでなければならないということではないが,実際には,可能な場合は,できるだけ同じ文章であるほうが望ましい。
ISO14001:2004が発行され,このISO9001:2000との両立性が高いことに留意し,ISO9001:2000への追補案では現在のレベルの両立性を維持し,両立性を更に高めるように努力することが望ましい。
ISO14001:2004との両立性を維持するにあたっては,次の事項が必ずしも矛盾を引き起こす可能性を有しているとは限らないということに留意することが重要である。
共通の要素又は用語における異なる文章
項番号の振りかたの違い
異なるモデル及び構成
手引き,参考,附属書の記載

セクター規格又はその他の規格
数多くの他のマネジメントシステム規格はISO9001:2000に基礎を置くものであり,この規格の構成及び本文を使っている。追補の執筆者らは,変更が他のマネジメントシステム規格とISO 9001との両立性に与える影響について認識する必要がある。

5.  一貫性
ISO9001:2000の追補とISO9004:2000の改訂版との一貫性とは,次を意味する。
双方の規格の間に矛盾がないこと。
双方の規格は互いに補完し合うが,単独でも利用できること。
整合のとれた概念及び用語。
一方の規格から他方へ容易に移行できること。
両規格が同じマネジメントシステムに容易に適用できること。

2000年版のISO9001とISO90004では,両規格間の章立て構成上の一貫性に重きが置かれ,可能な限り同様の項に揃えられた。今回の改訂では、両規格は,ISO9004がその利用者のニーズを満たすうえで今以上に柔軟性を発揮できるように,従来の固定された項立てのアラインメントが緩められるであろう。
ISO9000ファミリーの他の規格との一貫性も同様に維持すること。

6.  モデル及びその特徴
ISO9001:2000の図1で示したプロセスモデルは変えないこと。
規格の構成
利用者への影響を最小限に抑え,ISO9001と他のマネジメントシステム規格及び関連文書との両立性を維持又は強化するため,規格の全体的な構成は変えないこと。

項目内又は項目間で要求事項がある程度移動することは,規格の意図が変わらず,利用者への影響が限定的で,その移動が利用者による規格のより明確な理解に寄与するのであれば,許容される。要求事項を移動する場合,追補の執筆者らは1.2“適用範囲”に規定されている制約事項について考慮すること。

追補後の規格の本文で対応すべき事項
追補の対象となるかもしれないISO 9001:2000の項を明確にするために,附属書Aに列挙されたインプット文書の分析が行なわれた。次の表は,この分析の結果を示し,個々の項に対するコメントの例を列記している。(しかしながら,これらの例は,修正が必要かもしれない個々の要求事項を明確にするための出発点であるということを認識することが重要である。)

追補作成プロセスの途中(例えば,CD又はDIS投票段階)で得られる変更への更なる推奨事項は,ドラフト作成チームによって,附属書Bに挙げられたツールを利用した分析をされるであろう。

作成プロセスにおいて推奨される変更のいくつかは,附属書Bのツールを利用した分析を受けて,追補の基準から外すことを考慮しなければならないかもしれないということに留意することが望ましい。このような場合,推奨事項はこの追補においては考慮されず,次回のISO9001の改訂の際の検討材料として,留保されるであろう。

採用されたいかなる変更も,ISO TC176/SC2/WG18の設計仕様書の維持,更新プロセスに組み込まれるであろう。

ドラフト作成チームへの推奨事項
全体 関連する文書を明確にすることにより,附属書Aで示した導入及び支援文書の必要性を削除する。
全体 潜在的な明確化,翻訳の問題を考慮するために用語を見直す。
TC176/SC1との連携が次に対応するために必要か決定する。
4.2文書化
6.4作業環境
7.3レビュー,検証,妥当性確認
7.5製品及びサービス提供
7.5.1.f引渡し後の活動
7.6較正
7.6監視及び測定機器
8.3不適合製品及び8.5.2不適合の関係性
規格全般で使われている“方法”
全体 規格の中のさまざまな大項目及び小項目に関連する諸活動が同時に実施される場合についての明確化を検討する。
全体 規格で要求されている文書類(手順書,品質マニュアル)を組み合わせることができるかどうかを検討する。
要求された文書化の手順を明らかにするための異なった形式を明確にする(例えば、8.5.2及び4.2.3)。
1.1 意図された製品に関わる適用範囲を明確化する
1.2 特にサービスを提供する組織に7項で可能な適用除外に関わるこの章の意図を明確にする。(例えば,7.5.5及び7.6)
4.1 “アウトソースしたプロセスに求められる管理”を明確にする。
4.2.3.a
4.2.3.b
“review”と“need for review”(追補)との相違を含めて,“review”の意味を明確にする。
4.2.3.c
4.2.3.e
4.2.3.f
4.2.3.g
“identification”,“identified”,“identifiable”の潜在的矛盾を見直し,要求事項を明確にする。
4.2.4全体 要求されている記録を明確にすることにより,記録の必要性を明確にする。注(4.2.4参照)と要求事項への適合の証拠を持たなければならないとしている4.2.4の表現
5 トップマネジメントの活動に対するプロセスアプローチの適用を明確にすることについて検討する。
5.4.2 品質目標(5.4.1)を達成するためにQMS計画を作成するということを明確にすることについて検討する。
5.5.2 “appoint a member of management…”の要求事項を明確にする。
5.6.2 この項に列挙されているものだけがマネジメントレビューへのインプットではないということについて検討する。
6.2.1 “personnel performing work affecting product quality(製品品質に影響がある仕事に従事する要員)”に関する要求事項を明確にする。
6.2.2.c “effectiveness of training(教育訓練の有効性)”に関する要求事項を明確にする。
6.4 製品要求事項への適合の達成という観点から作業環境について明確にする
7一般 7項と8項との関係を明確にする。
7.2.1 “statutory and regulatory requirements(法令・規制要求事項)”を明確にする。
7.2.1.c “requirements related to the product(製品に関連する要求事項)”に関する要求事項を明確にする。
7.2.1.d “any additional requirements determined by the organization(組織が必要と判断する追加要求事項)”に関する要求事項を明確にする。
7.2.3 最初の文章にある“effective arrangements(効果的な方法)” に関する要求事項を明確にする。
7.3 サービス志向の組織に対する要求事項を明確にする。
7.3.4,7.3.5,7.3.6の要求事項に対する関係性を明確にする。
7.4.1 供給者の評価及びそれに伴う記録に関する要求事項を明確にする(例えば,中小企業)。
7.5.2 この項はどのような場面に適用するのが望ましいのかに関して,最初の段落の意図を明確にする。その中でISO 9001:1994にあった特殊工程との関係も併せて明確にする。
7.5.4 “protect”と“safeguard”の相違を明確にする。
“intellectual property(知的所有権)”とは何かについて明確にする。
全ての製品タイプに対するこの要求事項への適用を明確化する。
7.6 この項の一番目及び二番目の文に関連する適切な項を明確にすること。
“When used in the monitoring and measurement of specified requirements, the ability of computer software to satisfy the intended application shall be confirmed (規定要求事項にかかわる監視及び測定にコンピュータソフトウエアを使う場合には,そのコンピュータソフトウエアによって意図した監視及び測定ができていることを確認すること)”に関する要求事項を明確にする。
7.6.a “or”という言葉を使った三番目の段落にある要求事項を明確にする。
8.2.1 監視vs測定という観点から“customer perception(顧客がどのように受け止めているのか)”に関する要求事項を明確にする。
“methods shall be determined(方法を決めること)” に関する要求事項を明確にする。
8.2.2
参考
10011を19011に変更する。
8.2.3 8.2.3はQMSの諸プロセスを対象としたものであることを明確にする。
この項と8.2.4の関係を明確にする。
QMSの諸プロセスと製品との関係を明確にする(最後の文)。
8.2.4 “release of product(製品のリリース)” に関する要求事項を明確にする。
8.3 サービスを提供する組織という観点から,この項を明確にする。
8.4 不一致が生じるのを避けるために冗長性及び/又は他の項目との繋がりを見直す。
8.5 8.5.1,8.5.2,8.5.3の関係を明確にする。
是正処置と予防処置の概念の相違について明確にする。
8.5.1 継続的改善及び5.6.3.b)との関連から,製品の改善に関する要求事項について明確にする。
8.5.2.f “review(レビュー)”を明確にする。
8.5.3 サービスを提供する組織に関連してこの項を明確にする。

ドラフト作成に関する手引き
9.1 一般

規格の明瞭性,用語,表現文体を維持又は更に向上させ,利用者にとっての使い易さを増大させるため,ドラフト作成チームは次を確実にすること。
規格の元来の意図を維持する。
規格は文化的偏見にとらわれない。
規格は品質用語,専門用語の過度な使用を避け,品質専門家のみならず,全ての利害関係者に理解できるよう,明確な文体で記述する。
規格は,複数の解釈が出る余地を防ぎ,共通の解釈を得られるよう,曖昧さを残さないかたちで記述する。
文章は短く,しかも曖昧さを生じさせないようにし,過剰な冗長を減らす。
一貫性のある用語の使用を維持し,用語の問題は,TC176/SC1の助力を得て解決する。
提案された変更がISO9001:2000の他の要求事項に与える影響を事前に検討する。
要求事項は監査ができるかという観点で記述する。
規格は,他の言語に翻訳することができる。
他のマネジメントシステム規格並びにISO/CASCO規格及び指針との両立性及び一貫性の問題について十分検討する。

翻訳の問題
ドラフト作成チーム内のさまざまな言語を話す人々,及び適切な場合はドラフト作成チーム外の言語の専門家らと協議することにより,翻訳の難しさが生じる可能性のある文章を明確にすることが望ましい。これには,テクニカル・ライター,品質の専門家ではない人々,並びに英語を母国語としない国々出身のTC176委員が含まれる。彼らは明瞭性及び翻訳容易性の観点から規格ドラフトの本文を検討することが望ましい。

リエゾン
ISO9001:2000の追補の作成に伴い,ISO TC176/SC2へのリエゾン機関のニーズ及びISO 9001の潜在的変更がそれらの組織のマネジメントシステム文書に与える影響について検討を行なうこと。

附属書A:参照用インプット文書の一覧
ISO9001:2000の追補のドラフト作成作業において,次の文書の最新版について検討を行なうこと。
ISO/TC 176が承認した解釈
ISO/TC 176/解釈WG –解釈とSC2へのインプットの照合
(ISO/TC 176/SC 2 文書: N 683R)
ISO9001及びISO9004について行なわれた定期見直し
(ISO/TC 176/SC 2 文書: N666, N667, N676R, N677R)
ISO中央事務局の支援を受けてISO/TC176/SC2がインターネット上で実施したISO9001及びISO9004に関するフィードバック調査
(ISO/TC176/SC2文書:N631,N668,N681,N705)
米国,日本,ドイツ,カナダなど各国のフィードバック調査及び研究
(ISO/TC176/SC2文書:N607-1,N607-2,N637,N680)
ISO9001:2000の追補及びISO9004:2000の改訂に関するJustification Study
(ISO/TC 176/SC2 文書: N682)
ISO 14001:2004, Environmental management systems – Requirements with guidance for use
ISO Guide 72:2001, Guidelines for the justification and development of management system standards
The ISO 9001:2000 Introduction & Support Package 文書一式
ISO 9001:2000のための設計仕様書 (ISO/TC 176/SC 2 document: N307)
ISO 9004:2008のための設計仕様書 (ISO/TC 176/SC 2 document: N731)
ISO 9000:2000, Quality management systems – Fundamentals and vocabulary
ISO/IEC専門業務用指針:2001

附属書B:提案された変更による影響と便益の評価ツール
B.1 序文
ISO/TC176/SC2は,2008年の次の発行ではISO9001:2000へのいかなる変更もその内容を相対的に小さなものに抑えて,最終利用者への影響を最小限にしつつ、かつ高い便益をもたらすことが極めて重要であるという点で合意している。次に示すツールは,追補のドラフト作成チームが提案されているさまざまな変更の中のどれを盛り込むのかを決定する際に,同チームを支援するために作られたものである。

B.2 ツールの目的
ISO9001追補のドラフト作成チームが,各々の変更提案につきその影響vs便益を明確にし,評価する作業を支援すること。

B.3 影響の分類
次に示す各分類について,各変更提案の適切なレベルを選択する。選択し終わったら,最も高い数字を意思決定マトリックスに入れる。

ISO9001:2000利用者の文書類(記録類を含む)の変更又は新規作成
低 ― 文書類への変更は不要
中 ― 文書類への小さな変更が必要
高 - 文書類への大幅な変更又は文書の新規作成が必要

組織の既存プロセスの変更
低 - プロセスの変更は不要
中 ― プロセスに小さな変更が必要
高 ― プロセスに大幅な変更が必要

ISO9001利用者への追加的教育訓練の必要性
低 - 追加的教育訓練は不要
中 ― 多少の追加的教育訓練が必要(例えば,半日の意識向上教育)
高 ― 大規模な1日から5日間に及ぶ教育訓練が必要

認証への影響
低 - 現行の認証には影響しない
中 ― 登録企業の認証サイクル内で再認証が必要
高 - 定められた移行期間内に再認証が必要

B.4 便益の分類
次に示す各分類について,各変更提案の適切なレベルを選択する。選択し終わったら,最も低い数字を意思決定マトリックスに入れる。

a) 明瞭性の向上
1. 高 - 要求事項の曖昧さが取り除かれる
2. 中 ― 以前よりは明瞭性が向上する
3. 低 ― 明瞭性は向上しない

b) ISO14001との両立性の向上
1. 高 - ISO14001との両立性が大幅に向上する
2. 中 - ISO14001との両立性が向上する
3. 低 ― ISO14001との両立性には影響を与えない

c) ISO9000ファミリーとの一貫性の維持
1. 高 - ISO9000ファミリーとの一貫性の無さを示すような証拠がない
2. 中 - ISO9000ファミリーとの一貫性が向上する
3. 低 - ISO9000ファミリーとの一貫性には影響を与えない

d) 翻訳容易性の向上
1. 高 - 翻訳容易性が著しく向上する
2. 中 - 翻訳容易性が多少向上する
3. 低 - 翻訳容易性は向上しない

B.5 意思決定の原則
影響度の大きな変更は,規格の今回の追補には盛り込まないことが望ましい。

影響度が中程度の変更は,それによる規格の利用者への便益が“中”又は“高”である場合に限って,今回の追補に盛り込む。

例え影響度が小さな変更であっても,その変更が利用者に便益をもたらすことを示して変更の妥当性を明らかにする必要がある。

B.6 意思決定マトリックス
次に示す意思決定マトリックスは上述の原則に基づいたもので,今回の規格改訂のドラフト作成チームは,変更提案を次の改訂で検討するかどうかを判断するにあたってこのマトリックスを活用すること。

便益
影響 1 2 3
1 1 2 3
2 2 4 6
3 *3 6 9
1-2 変更を盛り込む。
3-4 意思決定に先立ち,更なる分析が行なうことが望ましい。

参考:影響度の大きな変更は規格の今回の追補には盛り込まないことが望ましいので,“*3‐高影響x高便益”は例外として扱う。この場合,ドラフト作成チームは,この変更提案及び変更内容の分析を記録に残し,将来の改訂へのインプットとすることを確実にすることが望ましい。

6-9 変更を盛り込まない。

(つづく)