ISO情報

私とマネジメントシステムそしてISO(その46)

第46回

クアランプールで行われた、ISO9001:2000規格の追補について説明をしています。追補すなわち規格を修正するかしないかの投票についてお話をします。
ISOの総会では初日の冒頭に幹事国のセクレタリが各国の出席を取ります。各国とも5,6名のデリゲーションを組んで会場にセットされた国名札の席に陣取っていますが、各国の団長は国の名前を呼ばれたらテーブル席においてある国名札を手で掲げて、「Yes」とか「Present」とか言って出席していることを明らかにします。

さて、投票結果の結果は次のようなものでした。

  • Pメンバー投票総数   33カ国
  • 修正に賛成       27カ国
  • 今のままでよい      6カ国

以上のような圧倒的多数で、ISO9001:2000規格は修正されることは、この2004年11月のクアランプールTC176総会で決定されました。
その当時想定された次のステップへの予定は次の通りでした。

  • 2005/05/末   設計仕様書案完成
  • 2005/06/01~08/31 3ヶ月投票
  • 2006/07    CD投票へ
  • 2007/01    DIS投票へ
  • 2008/01    FDIS投票へ
  • 2008/年内   IS発行

ISO9001:2000規格修正可否の投票においては、各国から付帯のコメントが付けられましたが、その主なものを紹介します。

【アルゼンチン】

  • ① 解釈グループからの課題、特に不明確な部分を修正する。
  • ② worldwide user survey の結果を反映させる。
  • ③ ISO/TC176セクターフォーラムとWG18/TG1.14分析を反映させる。
  • ④ ISO14001、14004との両立性を高める。

【オーストラリア】

  • ① SAIでは、この時点での大きな変更は望まないとのユーザーの強い意見を受けている。
  • ② 1.2「適用」は明確でないので修正する。
  • ③ ISO140001規格との両立性を強くサポートする。
  • ・TC207との間で用語の定義を協議する。
  • ・QMSとEMSの比較表であるAnnex Aは修正する。

【オーストリア】

  • ① ISO9001の現時点での変更は必要としない。
  • ② MSS(Management System Standard)統合へ向けて資源を投入する。
  • ③ ISO9004の改訂から先に手をつける。
  • ④ EMS、OHSMS、SRMSなど他規格の要素を調べ統合する。
  • ⑤ ISO9004のCDの段階でISO9001の修正をするかどうかを決める。 

【カナダ】

  • ① 解釈グループで取り上げた課題を中心に修正することを指示する。
  • ② ISO14001との両立性を推進する。

【コロンビア】

  • ① 5.5.3に記述されている”process”は“channels”(9004の用語)に置き換える。
  • ② ISO9001にも効率の概念を入れる。
  • ③ 4.1のプロセスアプローチを強化する。
  • ④ 継続的改善のアプローチを強化する。
  • ⑤ 予測するアプローチを入れる。
  • ⑥ “review”の概念に効率を入れる。

【チェコ】

  • ① 6.2「人的資源」に従業員のモチベーションを入れる。
  • ② 6.4「作業環境」に安全と清潔を入れる。
  • ③ 7.1「製品実現の計画」に変更管理を入れる。
  • ④ 7.4.3「購買製品の検証」に供給者実績モニタリングを入れる。
  • ⑤ 7.5.1「製造及びサービス提供の管理」にメンテナンス活動を入れる。
  • ⑥ 8.2.2「内部監査」に内部プロセスと製品監査を入れる。
  • ⑦ 8.5.1「継続的改善」に生産及びサービスプロセス改善を入れる。

【フランス】

  • ① 2003年の移行期間から間もないこの時期に修正は必要ない。

【ドイツ】

  • ① とくに無い。

【イタリア】

  • ① 修正は大きな変更を含まないこと。
  • ② ISO/TC176が採用している解釈やガイドラインを反映させる。

【日本】

  • ① 2000年版からまだ間がないこの次期に大きな変更は必要ない。
  • ② しかし規格の意図、意味が不明確なところは修正することが望ましい。
  • ③ 8.2.1「顧客満足」と8.5.1「継続的改善」は5「経営者の責任」の項に移す。
  • ④ 8.2.4「製品の監視及び測定」と8.3「不適合製品の管理」は7「製品実現」の項に移す。
  • ⑤ 0.2「プロセスアプローチ」においてP,D,C,Aとの関係を追記する。
  • ⑥ アウトソースの概念はN544R2に合わせる。
  • ⑦ 1.1「一般」の参考に記述されている「製品」に関しての個所には「独立して用いられる場合は」を入れる。
  • ⑧ 5.4.2「品質マネジメントシステムの計画」a)における「品質目標及び4.1に規定する要求事項を満たすために、品質マネジメントシステムの計画が策定される」の意味を更に明確にする。
  • ⑨ 5.5.3「内部コミュニケーション」における“process”は“activities”に変更する。
  • ⑩ 7.1「製品実現の計画」は製品実現の計画の全体を意味することを更に明確にする。
  • ⑪ 8.2.2「内部監査」に記述されている「客観性及び公平性」はISO19011に合わせて「独立性」に変更する。

【韓国】

  • ① 修正を支持する。

【メキシコ】

  • ① 認められた規格解釈の結果を反映させる。

【ノルウェイ】

  • ① ISO9001にはもっと具体的な要求事項を入れる、例えば不良品を如何に扱うか等。

【ウクライナ】

  • ① 規格は効果についての基準をもつべきである。
  • ② 顧客の意味を明確にする。例えば、8.2.1「顧客満足」でいう顧客とは、直接の顧客なのか最終ユーザーなのか。

【イギリス】

  • ① 修正は必要不可欠な最小限のものとする。

【アメリカ】

  • ① 2008年の6月までは修正版を発行しない、との前提で“Justification study”がされていると理解している。
  • ② 規格解釈グループからのフィードバックを反映させる。
  • ③ user survey の結果を反映させる。
  • ④ いろいろなセクターのニーズを分析する。
  • ⑤ ISO14001との両立性を強化する。

(つづく)