ISO情報

ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール(第42回)

平林良人「ISO 9001 有効活用のためのビジネス改善ツール」(2005年)アーカイブ 第42回

(7)標準化

標準化とは、「製品、方法又はサービスをその目的に合致させるために、多様性の調整をしたり、有用性・両立性・互換性を高めたり、安全性・環境保全を確保したりする”規定”を確立する活動」である。さらに、その目的は、相互理解を深めたり、経済性を高めたり、流通(貿易)をスムーズにさせることである。

ISO/IECガイド2には、互換性、安全性、多様性の調整、両立性等について次のように説明がされている。

  • ① 互換性
  • ある製品、方法又はサービスが、同じ要求事項を満たしながら、別のものに置き換えて使用できる能力。
  • ② 安全性
  • 容認できない傷害のリスクがないこと。標準化では、製品、方法及びサービスの安全性は、一般に、人及び財貨に対する傷害のリスクを容認できる程度にまで軽減する幾つかの要素の最適の平衡を図る、という見地から検討される。
  • ③ 多様性の調整
  • 大多数の必要性を満たすように、製品、方法又はサービスのサイズ・形式を最適な数に選択すること。
  • ④ 両立性
  • 特定の条件の下で、複数の製品、方法又はサービスが、相互に不当な影響を及ぼすことなくそれぞれの要求事項を満たしながら、共に使用できるための適切性。

「管理図」の項目で述べたように、工程は必ず「ばらつく」が、管理することによってこのばらつきを最小限にすることができる。このばらつきを最小限に管理する方法として最も効果的なものが標準化である。標準化を推進する上で、標準化には次の2つのレベルがある。

  • ① それまでに蓄積された技術を投入し製造条件を規制、標準化する。
  • ② 好ましくない結果が得られたとき、その原因を探索し、原因が判明したら、同じ原因で二度と好ましくない結果が生じないように、その原因を除去するために製造条件を規制、標準化する。

①のレベルは、今までの実施方法を確認し、やり方の統一を図るものである。やり方がばらばらでは、互換性、安全性、多様性の調整、両立性等が確保できない。標準化されていれば、効率も高まるであろう。しかし、今までの実施方法を踏襲している限りにおいては、その方法が一番良いと確認できているわけではない。ともすると、「惰性」の標準となる危険性を孕んである。②のレベルになると、標準化の内容を吟味して、現時点ではこの標準化された方法が最良であると確認されている。いってみれば、「進化」した標準である。

日本式TQCでは、組織全体のシステムの標準化は別として、「標準作業」の標準は生産現場の者がつくれ、と強調されてきた。けっして上からのお仕着せであってはならない、とされた。標準作業において考えられる要素は、人と機械と物であって、常にそれらが相互に有効に組み合わさっていないと、効率的な生産を行うことは不可能だからである。どんな標準も常に内容の吟味が必要であり、問題の解決を図りながら継続的に改善をしていかなければならない。

(8)QCストーリー

工程を安定させるために、日本式TQCでは日々の問題解決を現場で行ってきた。この問題解決では、デミングサークルP,D,C,Aに沿って実行するのがよいとされてきた。QCストーリーは、問題の解決を一つの「物語り」として、定型化したものであり、QCサークル活動の中で実践されてきたものである。

次のような手順で問題解決をする。
手順1 Plan:「テーマの選定と活動計画の作成」

  • まず取り組むべきテーマを決める。重点的に問題解決を図らなければならないので、業務上の問題点、あるいは上司からの指示によりテーマ選定をする。この際なぜ、この課題を取り上げたかの理由を明確にしておく。この理由の明確化には、特性要因図、パレート図、層別等のQC7つ道具が使われる。
  • 次に、達成すべき目標を明確にし、活動計画を作成する。活動計画書には、責任者とスケジュールを決めるが、目標達成手段は次の段階で決める。

手順2 Do:「対策の立案と実施」

  • 計画段階で設定した目標を達成するために、現状を分析し、対策を立案する。つまり、現状と目標との差(ギャップ)をどのような手段で埋めるのかを考察する。現状の課題はどうして起きているのか、その原因を考察する。多くのケースでQC7つ道具である管理図、ヒストグラム、散布図等が使われる。
  • ここで重要なことは、本当の原因を把握することである。日本式TQCでは、「なぜを5回繰り返せ」といわれた。一見原因に見えてもそれは真因ではないことが多い。
  • たとえば、機械が動かなくなったと仮定する。
    • ①「なぜ機械は止まったか」
    • 「過負荷になって、ヒューズが切れたからだ」
    • ②「なぜ過負荷になったのか」
    • 「軸受け部の潤滑が十分でなかったからだ」
    • ③「なぜ十分に潤滑されなかったのか」
    • 「潤滑ポンプが十分油を汲み上げなかったからだ」
    • ④「なぜ十分汲み上げなかったのか」
    • 「ポンプの軸が磨耗してガタガタになっていたからだ」
    • ⑤「なで磨耗したのか」
    • 「フィルターが付いていなく、切粉が入ったからだ」
  • また、作業者がミスをしたとする。その原因を作業者の質が悪いからだと決め付けてはいけない。ミスをした背景には多くの原因があるものである。関係者全員の衆知を集めて原因を洗いだすことが重要である。
  • 何か問題が起きた時の対策は、その問題の原因を取り除くことが最も効果的であるが、格別問題が起きたわけではなく、改善を図りたいという場合も以上のようなアプローチは有効である。

手順3 Check :「効果の確認」

  • 原因を取り除いたつもりがそうではなかった、ということがある。実行した結果の効果を確認する。ここで重要なことは、今後同様なことが再発しないことの確認をすることである。また、改善を目的に進めてきた場合も、本当に効果があったかチェックすることが必要である。

手順4 Action :「歯止め、標準化」

  • 目標を達成したならば、その効果を確認し、問題解決に役に立った固有技術、手順、管理項目、管理特性等を歯止めするために標準化する。すなわち、日常の業務の適用できるように標準書類を作成、改定する。と同時に、作成、改定した標準書類をもとに教育を行う。さらに、関係する部署にも緊密な連携を保たなければならない。業務実施方法が変更になったことによる関係部署への影響も考慮する必要がある。