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新・世界標準ISOマネジメント(第22回)

平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第22回

2.4.5 医療機器 ISO 13485

  • 1) 規格の内容
  • このセクター規格は、医療機器(医療用具)は人命及び健康維持につながるため、ISO 9001規格に対して追加要求事項を規定したものである。旧規格のベースは、ISO 9001:1994及びISO 9002:1994であったが、2003年7月にISO 13485:2003が発行され、2000年版への対応が図られた。多くの個所はISO 9000シリーズ規格をそのまま引用している。
  • 追加要求事項は、全ての医療機器に適用されるものと高リスクの医療機器のみ適用されるものとに分けられている(リスクの防止に係わる条項が多い)。
  • ISO 13485:2003の特徴(ISO 9001:2000規格との主な相違)は以下の通りである。
  • ISO 13485:2003の特徴(ISO 9001:2000規格との相違)
    • ① 国の薬事法などの法規との一貫性を維持している。そのため、継続的改善、顧客満足向上等の要求事項は除外している。
    • ② 滅菌バリデーション、リスクマネジメント活動が要求されている。
    • ③ 清浄性・汚染管理、ラベリング、勧告書(Advisory Notice)等、医療機器特有の要求事項が追加されている。
    • ④ 文書化の要求が多い。
  • 以下にISO 13485:2003の特徴について解説する。
    • ① 薬事法
    • 医薬品、医療機器、医薬部外品、化粧品等の有効性、安全性、品質などの確保を目的として、一定の基準や取扱いを定め、必要な規制を行うための法律である。その規制の対象は製品を製造する組織だけではなく、製品を取り扱う医療機関、医療関係者も対象となっている。医療機関での日々の業務における、医薬品・医療機器の取扱い、添付文書の記載事項、治験を実施する上でのルールなどが定められていることから、医療関係者にとってのバイブルになっているものである。
    • ② 滅菌バリデーション
    • ISO 9001:2000規格7.5.2に追加されている要求事項である。“滅菌医療用具に対する特別要求事項:組織は、妥当性が確認された滅菌工程で医療用具を滅菌し、滅菌工程の総てのプロセスパラメータを記録すること。”また、厚生省令第40号第4条(工程管理)第1項には、次の要求がある。「滅菌医療用具については、滅菌に係るバリデーションを行い、その記録を作成すること。」
    • なお、厚生省令第40号ではバリデーションを次のように定義している。「製造所の構造設備並びに手順、工程その他の製造管理及び品質管理の方法が期待される結果を与えることを検証し、これを文書とすること」
    • ③ リスクマネジメント
    • ISO 9001:2000規格7.3に追加されている要求事項である。“組織は、リスクマネジメントを含めた設計・開発の文書化された手順を確立し、維持すること。設計・開発のプロセスを通じて、組織は、リスクマネジメント活動を実施すること。リスクマネジメント活動の記録は維持されること。ISO 14971:2000参照”
    • ④ 清浄性・汚染管理
    • ISO 9001:2000規格6.4に追加されている要求事項である。“組織は、製品要求事項への適合を達成するために必要な作業環境を明確にし、運営管理すること。
    • 6.4.1 組織は、要員が製品又は環境と接触して製品の品質に悪影響を与える恐れがある場合、要員の健康、清潔さ及び衣服に対する要求事項を確立し、維持する。(6.4.2、6.4.3、6.4.4略)”
    • ISO 9001:2000規格7.5.1.1に追加されている要求事項である。
    • “製品の清浄性及び汚染管理:組織は、次に示す事項が該当する場合、製品の清浄性に対する要求事項を定め、文書化し、維持すること。1)製品が、減菌及び/又はその使用に先立ち、組織によって洗浄されるか、又は2)製品は減菌されずに供給されるが、その後、減菌及び/又はその使用に先立ち洗浄工程が設けられているか、又は3)製品は減菌されずに使用するよう供給されるが、使用中の清浄性が重要であるか、又は4)製造工程内で副資材が除去されることになっている場合”
    • ⑤ ラベリング
    • 3.6に次のように定義されている。“文書、印刷物、グラフィックなどにあって、医療用具又は総ての容器又は包装に貼付され、又は医療用具に添付され医療用具の識別、技術的説明及び使用に関するものをいう。ただし、出荷用文書は除く。”
    • ISO 9001:2000規格7.5.1に次の追加要求事項がある。“g)ラベリングの誤りを防止するために、定められたラベリング及び包装のやり方が実施されていること。”
    • ⑥ 勧告書
    • 3.3に次のように定義されている。“医療用具を引き渡した後に、補足的情報を提供し、及び/又は次の事項に対して取るべき処置を勧告するために、組織によって発行される通知書であり、医療用具の使用、医療用具の改造、医療用具を供給した組織への返却、医療用具の破壊に関して、是正処置又は予防処置をとる及び国又は地域の法的要求事項に適合させることを目的とするものである。”ISO 9001:2000規格8.5.1に次の追加要求事項がある。“組織は、医療用具に対する勧告書を発行するための文書化された手順を確立し、維持すること。”

      

  • 2)経緯
  • 1994年、ISO/TC210/WG1が発足し、医療用具(医療機器)に関する審議が始まった。世界各国が様々な品質システム(GMP: Good Manufacturing Practice(優良製造規範))を法令によって要求したことから、非関税障壁を防止するため、各国で異なる品質システムに係わる法令(GMP)を国際規格に整合させる機運が生じた。これは、医療用具は人命に直接関わるとの立場からのセクター規格の審議でもあった。
  • 1996年、ISO13485/13488の2つの規格が誕生した。これらはISO 9001規格をベースにしたセクター規格であった。
  • 2003年、TC210において、ISO 13485がISO9001:2000規格に準拠したISO 13485:2003として改訂された。
  • 3)利用状況
  • カナダ、オーストラリアは、ISO 13485/13488をそのまま法令化しているが、日本ではJIS化されていない。しかし、2005年に施行が予定されている日本の改正薬事法においては、医療機器に関する品質システム要求事項がISO 13485:2003に準拠する予定で進んでおり、今後多くの利用が予測される。
  • 厚生労働省では医療機器の審査登録について検討をすすめており、近い将来新しい審査登録分野が開けてくる可能性が大きい。