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新・世界標準ISOマネジメント(第35回)

平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第35回

  • 3)HACCPシステム
  • HACCPシステムによる衛生管理の方法は、最終製品の検査に重点をおいた従来の衛生管理の方法とは異なり、食品の安全性について危害を予測し、危害を管理することができる工程を重要管理点として特定し、重点的に管理することにより、工程全般を通じて危害の発生を防止し、製品の安全確保を図るという方法である。
  • 具体的には、営業者が自ら、
    • ア 食品の製造又は加工のすべての工程で発生するおそれのある微生物等の危害を調査・解析(Hazard Analysis: HA)し、
    • イ この分析の結果に基づいて、何らかの措置を講ずることにより、危害の発生を防止し、安全な製品を得ることができる工程を重要管理点(Critical Control Point: CCP)として定め、
    • ウ 重要管理点が常に管理されていることを確認するため、集中的かつ常時、モニタリングを行い
    • エ 重要管理点の管理状態が不適切な場合には、すみやかに改善措置を講じ、
    • オ さらに、その管理内容をすべて記録することにより、危害の発生の予防するものであり、結果として最終製品全体の安全を保証することとなる。

  • 4)HACCPシステム適用のための12手段
  • 営業者は、次のHACCPシステム適用のための12手順にしたがって、HACCPシステムによる衛生管理の実施計画(以下「計画」という。)を作成し、実施することが必要である。
    • (1) 専門家チームの編成      (手順1)
    • (2) 製品の記述          (手順2)
    • (3) 意図される使用方法の確認   (手順3)
    • (4) 製造工程一覧図及び施設の図面 (手順4)
    • (5) 現場確認           (手順5)
    • (6) 危害分析           (手順6)  (原則1)
    • (7) 重要管理点の特定       (手順7)  (原則2)
    • (8) 管理基準の設定        (手順8)  (原則3)
    • (9) モニタリング方法の設定    (手順9)  (原則4)
    • (10)改善措置の設定        (手順10) (原則5)
    • (11)検証方法の設定        (手順11) (原則6)
    • (12)記録保存及び文書作成規定の設定(手順12) (原則7)

  • 5)HACCPシステムの作成と実施
  • 1 専門家チームの編成(手順1)
  • 2 製品の記述(手順2)、意図される使用方法の確認(手順3)、製造工程一覧図及び施設の図面の作成(手順4)及びその現場確認(手順5)
    • (1)危害分析の基礎となる情報の整理
    • (2)製造工程一覧図及び施設の図面の現場確認(手順5)
  • 3 危害分析(手順6)
    • (1)危害の原因となる物質の特定
    • (2)危害の発生要因及び防止措置の特定
  • 4 重要管理点の特定(手順7)及び管理基準の設定(手順8)
    • (1)重要管理点の特定(手順7)
    • (2)管理基準の設定(手順8)
  • 5 モニタリング方法の設定(手順9)
    • モニタリング方法は、基本的に、重要管理点におけるモニタリングの測定値が管理基準を逸脱した場合に、それを目視等により即時的に確認することができるものでなければならない。
  • 6 改善措置の設定(手順10)
    • HACCPシステムでは、重要管理点においてモニタリングの測定値が管理基準を逸脱したことが判明した場合、管理基準の逸脱により影響を受けた製品を排除し、重要管理点における管理状態を迅速かつ的確に正常に戻さなければならない。
  • 7 検証方法の設定(手順11)
    • HACCPシステムでは、検証により、HACCPによる衛生管理の実施計画が適切に機能していることを、計画の作成時及び実施後に継続的に確認、評価しなければならない。
  • 8 記録保存及び文書作成規定の設定(手順12)
    • 記録を正確に作成し、それを保存することにより、計画を適切に実施したことの証拠を作成することができる。この記録は、営業者が、計画が適切であることの検証等に有効に活用できるだけでなく、食品衛生監視員による監視の際の有効な情報となる。

  • 6)一般的な衛生管理事項(食品の衛生を確保する上であらかじめ必要となる施設設備等の衛生管理事項
  • 施設設備の衛生管理・保守点検、原材料・包装資材の保管等の衛生的取り扱い、従業員の衛生管理・教育訓練、製品の回収方法等を適切に実施すれば、環境から食品への汚染を防止することができるため、危害の発生を防止するために極めて重要な工程である重要管理点(CCP)の管理に注意を集中させることができる。HACCPはそれ単独で機能するものではなく、一般的な衛生管理を実施することにより、包括的に食品の衛生を確保することが可能となるものである。
  • 諸外国においても、HACCPによる衛生管理を確実に実施するためには、施設設備などの衛生管理を実施することが必要であるとしており、例えば、米国では、製品の安全を確保するために必要となる基本的な施設内環境の衛生管理の実施要件(prerequisite programs)、を定め、衛生(Sanitation)、適正製造規範(Good Manufacturing Practices)、従業員の教育訓練(Training)、製品回収(Recall Program)、機械器具の保守点検(Preventive Maintenance)等を実施している。
  • HACCP導入のメリット
  • HACCPの導入によるメリットは、食品の安全性が高まることと合わせ次のことが上げられる。
    1. 食品の安全を保証する
    2. 衛生上の危害に適時対処出来る
    3. PL対策が可能となる
    4. 食品の安全性に関して国際的な信用が得られる

  • HACCPシステム適用のためのガイドライン
  • HACCPを適用する前に、その分野は、及び該当する食品の安全規則に従い操業していなければならない。
  • HACCPシステムの目的はCCPの管理に焦点を当てることである。管理されなければならない危害が確認されても、CCPが見つからない場合、作業の再設計が考慮されなければならない。
  • HACCPは、次の作業から構成される。
    1. HACCPチームの編成
    2. 製品についての記述
    3. 意図する用途を確認
    4. フローダイヤグラムを作成
    5. フローダイヤグラムの現場確認
    6. 危害分析
    7. CCPの決定
    8. 管理基準を設定
    9. モニタリングシステムを設定
    10. 改善措置を設定
    11. 検証手順を設定
    12. 文書化及び記録の保管

終わり