ISO情報

新・世界標準ISOマネジメント(第6回)

平林良人「新・世界標準ISOマネジメント」(2003年)アーカイブ 第6回

1.2.3 日本のISOへの取り組み

  • 日本は、戦後、欧米諸国に少し遅れて1952年(昭和27年)に、JISを審議している日本工業標準調査会(JISC)が閣議了解を経てISOに加盟した。
  • 現在、日本はISOの常任理事国となり、ドイツ、フランス、イギリス、米国と同等の分担金を負担し主導的な役割を担っている。また、ISOに設けられている大半のTCにP(積極的、Participating)メンバーまたはO(オブザーバー、Obserber)メンバーとして参加している。しかしながら、TC/SCの規格策定をリードする幹事国の引き受け数が、日本の産業規模に比較して、また、欧米諸国に比べて少ないためやや力不足の感がある。最近、米国の幹事国の引き受け数が倍増しており、日本も参考にするべきものがある。
  • 日本の国際標準化への対応は、一部の業界では幹事国を引き受け積極的に対応しているものの、一般的には他の先進工業国に比較して受け身の傾向が強い。また、日本から国際規格を提案することはまだ少なく、他国提案にコメントするだけであることが多い。これは、他国に国際規格を作ってもらっていることと大差はない。
  • こうした背景には、日本人にとって共通の悩みである英語による国際交渉の経験不足は否めない。また、企業経営層の国際規格に対する方針の弱さや姿勢によるところも大きいと言える。しかし、その中でも電子機器の分野では、新規提案の60%以上は日本からのものという分野もある。
  • 一方、欧米企業では、「規格に投資することは利益を生み出す」という基本的な認識があるのに対して、我が国企業は輸出先の標準にあわせるのは当たり前として対応してきたきらいがある。その結果が、国際規格の策定に参加するものの、自ら国際規格の提案をすることが少なく、他国に対してコメントするだけという姿勢につながっている。
  • これまで国際規格に日本の意見が十分に反映されてこなかったが、これからは、日本にとって受け入れにくい国際規格の策定は阻止していかなければならない。また、今後は自国の自社の利益のために国際規格を提案するという姿勢が必要である。
  • 余談であるが、国際規格は、英語とフランス語の2カ国語で発行されるため、日本のように言葉が異なると、国家規格として制定する場合に時差が生じる。ISO 14001の場合、1996年9月1日にISO規格が発行され、イギリスでは、同年9月15日にBS-ISO 14001として制定されたが、日本では、1カ月後の1996年10月20日、JIS Q 14001として制定された。
  • イギリスや米国など英語圏では表紙を差し替えれば、そのまま国家規格として制定されるが、日本では翻訳作業という時間が必要となる。これは、お隣の韓国、中国でも同様で、とくに中国では環境規格の重要性に鑑み、日本と同じように年内に制定の予定で作業を進めていたが、完成したのは翌年の春となった。
  • 当時、環境JISの制定を目指していたJIS専門委員会(委員長:吉澤 正 筑波大学教授)は、数回のプロジェクターを使った逐条訳の作業に加えて、より翻訳の精度を上げるため2回の泊まり込みの合宿を重ねて正訳を完成させている。翻訳は「解体新書」以来、今日でも日本にとって大変な作業である。