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COP26,IPCC第6次報告書と審査・監査

  1. IPCC 第6次報告書 2021年8月9日:自然科学的根拠の概要
    • 人間の活動の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている
    • 温室効果ガスの排出を直ちに、急速かつ大規模に削減しない限り、産業革命当時に比べ温度上昇を1.5℃以下に抑えることどころか2℃以下さえ困難。(国連2021年09月02日)
    • 産業革命当時に比較して気温1.5度上昇と2度上昇では、気象災害など発生確率で大きな違いがあると予測される。


  2. COP26の概要COP26「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」は2021年10月31~11月13日 イギリスグラスゴーで開催された。主要な内容は下記の通りである。
    • 産業革命当時に比べ温度上昇を2度C以下の目標からより厳しく1.5度C以下に抑える目標とすることに関しては合意が得られた。
    • 排出削減努力のとれていない石炭火力の段階的削減努力。石炭火力発電廃止に関して賛同は40か国にとどまった。インドの主張を反映して合意文書は、廃止から削減に変更された。
    • 京都議定書に基づいて2013年以降に認証された削減量はパリ協定のもとでも2030年の各国の削減目標に算入できる。また、取引に参加する国は削減量の透明性を確保し二重計上などを防いで排出量の増加につながらないようにする。途上国は京都議定書に基づく削減も認めるよう要求。2013年以降国連に届け出た削減量とすることで合意。
    • 中国、ロシア、インド等は、温暖化への対応の必要性は認めながらも経済成長優先の戦略を捨てられない。
    • 石炭は急激には廃止できない。代替エネルギーに切り替える資金、技術と時間が必要。
    • 各国が現時点での目標を達成したとしても、今世紀末2.7度Cの上昇が予想されている。(国連2021年10月26日)。コロナ禍への対応による削減策実行の遅れや現在の各国の取組み状況や実現の度合では今世紀末4度C温度上昇はあり得る。

  3. 審査、監査への視点
    温暖化による気候変動は、身近には就業中の熱中症の増加、今迄なかった浸水被害などがある。業務阻害、顧客への製品・サービスの提供に重大な影響がある。中小組織ではCO2削減は容易ではないが取り組まないと顧客や金融機関の評価が下がる恐れがある。
    • 温暖化対策に組織は真剣さと拡大した目標設定計画があるか。(年率1%程度の省エネ目標通用しなくなると認識すべき)
    • 製品や施工、提供サービスにおいて(工場では)どの工程がエネルギー消費が多いか、定量的に把握し、CO2削減を検討しているか
    • 身近な問題として、従業員を熱中症から守る対策を強化しているか
    • 組織はハザードマップを入手してリスクを直視しているか。審査員も出来るだけハザードマップやグーグルストリートビューを利用して組織の立地をMSの種類に関わらず予め理解しておくことが望ましい。中小河川の洪水、内水被害、土砂災害があり得るので過去の経験に頼らず、重要設備等のかさ上げや移転、浸水対策講ずる必要がある。その計画はあるか。
    • 気象災害は停電の頻度や時間の増加につながる恐れがある。停電対策強化が必要。停電時間と損害額、リカバリー策を検討しているか
    • 災害で全ての活動が中断されるリスクが高まるので、マネジメントシステムの種類に関わらずBCP(事業継続)の視点からリスクの軽減策、回避策、リカバリー策、顧客対策などを真剣に検討しているか。
    • 再生可能エネルギー(例えば太陽光発電導入は停電対策としても有効)導入計画は、買電含めて最近検討しているか。
 (内藤壽夫)