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内部監査の実践(その28)

「設計審査標準 KDR105」を対象にした内部監査の実践について続けていきます。
「ナラティブ内部監査」を実践して「新しい物語作り」を「起承転結」で行っていきます。
「新しい物語」は、「起承転結」を【起】―いまのこと、【承】―いままでのこと、【転】いまからのこと、
【結】―問題(課題)の水平展開、歯止めを書く、という原則に沿うと書きやすいと思います。

前回は指摘事項3の【転】でしたので、今回は【結】の物語を作っていきましょう。

【結】においては、次のようなことが議論されました。

  • 1.「設計審査標準 KDR105第14条(フォローアップ)を以下の観点から見直し改訂する。
    • ① DR会議で指摘されたことがその後確実に設計課で評価され、対応策が取られ、後工程への影響についても考慮されること、並びにその記録が残されることを明確にする。
    • ② 品質管理部は、DR活動の実施状況を確認する。実施状況には次のことが含まれる。
      • ―DR会議指摘事項の評価結果
      • ―設計部での対応内容(設計変更)
      • ―設計変更によるアウトプット(図書)の確認
      • ―設計変更の評価
        • 検証
        • 妥当性確認
  • 2.しかし②は実質的には機能していないので、「品質管理部は、DR活動の実施状況を確認する。」の規定は品質管理部の所管から設計部の所管に移動するように見直し改訂する。
  • 3.設計課長は次のように所感を述べた。
    「今回のA製品の市場クレームについては、DR指摘事項をもっと技術的に掘り下げていれば、問題発生は防げたかもしれないという反省がある。設計課としては、設計変更の内容がDR指摘事項に合致したものになっているか、その効果がどのようなものか、後工程に及ぼす影響にはどのようなものがあるのか、について具体的な活動を規定したい。」
  • 4.設計変更に関しては、「4M変更管理標準KPT105 附則変更管理項目」の設計区分に次のような規定があり、変更管理をすることになっている。
    • 設計 ①契約仕様書
    •    ②適用規則(新規/変更)
    •    ③配置の変更
    •    ④部分的又は全体的な材質の変更
    •    ⑤部分的又は全体的な機能の変更
    •    ⑥使用環境の変更

    ただ、「4M変更管理標準 KPT105」は、日常管理の中で変更が生じたときの対応について規定しているものであり、「設計審査標準 KDR105」に規定されていることとは区分する必要がある。今回は「4M変更管理標準 KPT105」ではなく、「設計審査標準 KDR105」に絞って改訂の検討をする。

  • 5.<設計審査標準 KDR105 改定案>をいつまでに、誰が作成し、組織として定めるかを決める。
  • 6.<設計審査標準 KDR105 改定案>の周知徹底の方法について決める。
    • ―計部内への説明会
    • ―設計審査参加部門への説明
  • 7.<設計審査標準 KDR105 改定案>の有効性評価の方法を決める。
    • ―いつ行うか
    • ―誰が行うか
    • ―どのように行うか
  • 8.<設計審査標準 KDR105>が改定されるとつぎのような効果が期待できる。
    • ―設計に起因するクレームを少なくするか、軽度な被害に食い止める。
    • ―後日クレームが発生したときの原因究明がしやすくなる。
    • ―組織の知財蓄積に貢献できる。

結では、転で議論した以上のことを実行計画にし、実践し、水平展開し、かつ歯止めをします。
歯止めには、有効性評価を定期的に行う仕組みを作ることを含むと良いと思います。

参考
≪4M変更管理標準 KPT105≫
(目的)
第1条 この標準は、「品質に係る各種変更を行う場合に不具合の未然防止を図るために実施する変更管理について規定する。
(定義)
第2条 この標準における変更管理とは、受注、設計、調達、製造、検査、出荷(引渡し)の各段階において、すでに実績のあるものを変更する場合に特別に行う管理のことをいう。
(適用)
第3条 受注、設計、調達、製造、検査、出荷(引渡し)の各段階の変更管理について適用する。
(変更の抽出)
第4条 各部門は、担当製品(業務)について、自部門の変更の抽出を行う。

  • ② 各部門は他部門の変更抽出に対して提案することができる。
  • ③ 各部門長(課長以上)は変更の程度、影響、重要性等を考慮して変更管理を適用する項目を選定する。

(検討)
第5条 変更管理における内容検討は次のいずれか又は組合せによって行う。

  • 1.部門内容検討
    • (1) 各部門は変更管理項目について自部門内で検討を行う。
    • (2) 自部門で検討した結果は関係部門に対して通知する。
    • (3) 変更通知書の情報を受けた部門は、自部門の業務に与える影響を把握しその対応につき「受取側記入欄」等にて指示する。また、必要に応じ自部門の変更管理項目として取りあげる。
    • (4) 変更通知書の内容についてコメントがある場合は適宜担当部門にフィードバックする。
  • 2.依頼検討
    • (1)他部門に対して協議依頼事項がある場合は、協議依頼先に依頼書を送付する。
    • (2)依頼を受けた部門は依頼事項を検討し、その結果を記述して担当部門に回答する。
    • (3)担当部門は回答内容により、必要あれば対策案等の見直しを行い関係部門に通知する。
  • 3.会議体検討
    • (1)重要な変更管理項目について、各部門は関係部門の代表者を招集して会議体において検討できる。この場合既存の会議体を利用してもよい。
    • (2)担当部門は検討結果を記録にまとめ関係部門に通知する。

(指示)
第6条各部門は変更管理により決定した事項を、手順書、図面等に反映し、指示書として発行する。
(評価)
第7条各部門は変更管理による対策実施結果を評価し、以降の製品(業務)において必要な見直しを行う。
(管理確認)
第8条各部門は変更管理のための管理台帳等を作成し、検討・指示・評価等の各段階において必要な措置が適切・確実に実施されていることを確認する。
(付則)

  1. この規程は2020年10月1日から実施する。
  2. この規程の改廃にあたっての立案者は品質保証部長とする。

(つづく)