ISO情報

内部監査の実践(その32)

本シリーズ「内部監査の実践」では、組織の規定に沿って、具体的にどのように監査するかを、実例を中心に説明しています。その際、適合性だけでなく、有効性の監査も目指したいということで「ナラティブ内部監査」を採用しています。
ナラティブ内部監査は、平林良人の『つなげるツボ』Vol.297
https://www.technofer.co.jp/tsubob/index.php/2021/02/17/vol-297/)から
ナラティブ内部監査は、平林良人の『つなげるツボ』Vol.342
https://www.technofer.co.jp/tsubob/index.php/2021/02/17/vol.342/)まで
を参考にしていただくと良いと思います。

前回より、購買部に対してナラティブ内部監査を行っている様子をお伝えしていますが、今回はその4回目です。

【取引先管理標準 KBJ103】にはいろいろな記録を取り保管することが規定されています。

  • (被監査者)
  • ええっ、記録を取らなくていいというのですか?
  • (内部監査員)
  • そうではありません、記録を取るにはそれなりの時間がかかります。取った記録をその後活用するならば良いのですが、活用しないのであれば取っておく価値が本当にあるのか疑問に思っても良いのではないかと思いまして・・・
  • (つづく)

前回はここで終わりました。

  • (被監査者)
  • ということは次の4種類の記録がいままでどのように使われてきたかを調べるということになりますね。
    • ① 新規発注先評価表
    • ② 購買先管理台帳
    • ③ 2者監査の結果
    • ④ 受入検査結果
  • (内部監査員)
  • そうです。調べるといっても使用したという記録があるわけではないので、購買部の担当の方が3,4人集まって本当にこの記録は必要なのかを検討していただければいいのではないかと思います。もしも規定を変えたほうがいい、現状に合わせてシンプルにした方がいいというならば、今までの情報があると関係者からの賛同が得られやすいと思います。
  • (被監査者)
  • そうですね。本当に必要ならば今までも記録を見て判断をするという事があったと思いますので少し時間ください。
    ベテランの担当の方に集まっていただいて今までのことを聞いてみます。

<それから一週間後>

  • (被監査者)
  • 過去5年くらいに遡って、3名の方に記録の活用について聞いてみました。結論は記録の内容によって随分と異なります。
    「受入検査結果」記録は、当日は勿論毎月使用されています。というのは、購買先の評価を半年に1回する際の基礎データとなっているからです。
    「新規発注先評価表」と「2者監査の結果」の記録はほとんど使われていません。「購買先管理台帳」は時々使われています。半年に1回の購買先評価の結果を台帳に書き込んでいるからです。
  • (内部監査員)
  • よく調べていただけました。「新規発注先評価表」と「2者監査の結果」は当時評価した一時期の記録ですから、よほどの理由が無ければ評価当時の原点に戻ることはないという事ですね。「購買先管理台帳」情報との相互関係を再度検討すればこの2種類の記録の扱いは変えても良いかもしれませんね。

(つづく)

【取引先管理標準 KBJ103】
(目的)

  • 第1条 この標準は全社の取引先(購買先)の管理に関する業務の進め方を規定し、取引先と互いの便益を増進させることを狙いとする。
  • (新規取引の取引先評価)
  • 第2条 購買部担当者は、新規取引先との取引開始に当たっては以下の手順で新規取引先の評価を行い、購買部長の許可を得て新規取引を行う。
    • ①新規取引申込書
      当社と新規に取引を望む会社には「新規取引申込書」に経歴書、会社概要を添付した書類一式の提出を要請する。
    • ②新規取引要望書
      当社から要望して取引を始める新規取引先に対しては①の書類提出は不要とする。新規取引を望む当社部署に「新規取引要望書」の提出を要請する。
    • ③書類審査
      • ①、②の書類を審査する。審査項目は次の通りである。
      • a. 主要取引先
      • b. 会社沿革及び経営者
      • c. 財務状況
      • d. 社会的評判(必要に応じて信用調査をする)
    • ④実地評価
      購買担当者は、必要に応じて、技術担当者と新規取引先を訪問し、会社の実態を調査し評価する。
    • ⑤最終審査
    • 書類審査と実地評価の結果は「新規発注先評価表」に記入し記録に残す。評価がよければ購買部長に決済を求める。
  • (継続取引先の評価)
  • 第3条 購買部担当者は毎年2回、原則9月、3月に継続して取引をしている取引先を次の評価基準で評価する。
    • ①納入品品質 A,B,C、D 4段階評価
    • ②納期 A,B,C、D 4段階評価
    • ③コスト A,B,C、D 4段階評価
  • 評価結果に一つでもD評価があった場合は、購入している部署の担当者と協議をして、今後の取引について協議をする。
    協議の結果は「購買先管理台帳」に記入し記録に残す。
  • (評価結果に基づく処置)
  • 第4条 購買担当者は、取引先の評価結果に基づき、以下の必要な処置を行う。
    • a. 継続取引
    • b. 改善要求
    • c. 取引停止
  • 必要な処置は「購買先管理台帳」に記入し記録に残す。
  • (取引先の管理)
  • 第5条 取引先は「購買先管理台帳」に登録されている会社とし管理の対象とする。取引先に対する管理の方法及び程度は、その発注する購買品が当社の品質マネジメントシステムのプロセス又は当社の製品(サービス)に及ぼす影響に応じて決定する。
  • 2.購買担当者は、当社又は当社の顧客が取引先で2者監査を行う場合には、取引先に受け入れの要請をし、事前に監査の要領を取引先に説明をする。
  • 2者監査の結果は記録に残す。
  • (受入検査)
  • 第6条 購買担当者は、発注した仕入れ品や外注加工品が当社発注仕様書に合致しているかの受入検査を実施する。受入検査は技術部発行の「部品受入検査基準」に基づき行う。
  • 員数確認、目視検査以外の計測器類を使っての受入検査は品質保証部で行う。
  • 検査の結果は記録に残す。

(付則)
この規程は2020年10月1日から実施する。
この規程の改廃にあたっての立案者は購買部長とする。