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持続可能な開発目標(SDGs)その9

C:ISOとの関わり

 ジュネーブは、ISOの主要な拠点であるが、持続可能な開発目標(SDGs)を実行する上で重要な役割を担っている。ISOは国連(UN)と長い間築いてきた協力関係を、世界の最もグローバルな課題に取り組むのに不可欠なものとして生かそうとしている。ISOは、2030アジェンダのためのロードマップをたどる中で、将来に向けて変革を起こす力を持っている。今日、世界はより複雑に相互に結び付いたグローバルな課題に直面している。最もローカルな問題でさえ範囲が広がっていることが多い。このような状況において、2030年までに世界の人々が共同作業を行うことで、持続可能な開発への複数の目標をステークホルダーと共に取り組むことは極めて重要である。
ISOの機関紙「ISOフォーカス」は、ジュネーブの国連事務所(UNOG)の事務局長である Michael Møller氏と、世界の人々が直面している極めて重要な問題とそれらにどのように取り組むべきか2018年に対談したので、ここではその紹介をする。

C-1 ISOフォーカスと国連事務局長との対談

ISOフォーカス:世界は現在SDGsにどのように組み込んでいますか?

事務局長:2015年9月の国連の193の加盟国による2030アジェンダ(SDGs)の採択以来、世界中に持続可能な開発目標の達成への、かつてないほどの勢いがある。いくつかの階層で多くの異なるステークホルダーが取り組んでいる。政府、市民社会組織、学術機関、企業、国連自身及び他の国際的な組織はすべて、結果を早く出せるよう積極的に協力している。
国連では、開発システム全体でアジェンダの実行の際の各国のサポートに取り組んでいる。さまざまな国連のエンティティの専門知識を十分に利用するいっそう効率的なシステムを保証するために、国連組織内で改革も実施されている。他の国際組織も、また、SDGsをそれらの仕事計画に組み入れるために集まり、それらの戦略と活動を 2030アジェンダのビジョンと目的の活動に直すよう調整している 。
国レベルでは、SDGsの体系(組織)上の性質に取り組むために、多くの国はよく考えた上で方針変更を実行し、新しい運営方法を要求するアジェンダへのコミットメントを表明した。しかしながら、最も強力な手段(変更)は、ステークホルダーが互いに関わり合う方法にある。このアジェンダは、組織とさまざまなステークホルダーの戦略的パートナーシップ(協力関係)及び積極的な協力を通してのみ達成されるというのが共通の認識である。ジュネーブでは、私のオフィスは、パートナーたちが全体として大きな機能を発揮するということを実証するために、パートナーたちを集めるのに特に積極的である。私が2017年1月に立ち上げたSDGラボは、ジュネーブの収益活動協調体制(エコシステム)で主催(招集)及びパートナーたちを結び合わせる役目をし、国レベルで実行をサポートする戦略的パートナーシップ(協力関係)を熟慮する際に、すでに大きな成果を上げている。

ISOフォーカス:2015年9月にSDGが採択されて以来、主にどんな対策が取られていますか?そして、さらに重要なことには、私達は期待どおり進んでいますか?特に、あなたがSDGsをそれらの先駆けであるミレニアム開発目標(MDGs)と比べるのはどんな時ですか ?

事務局長:国連総会と経済社会理事会の主催で毎年開かれる、持続可能な開発目標に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)は、グローバルなレベルでの2030アジェンダの実行のフォローアップ及び見直し(レビュー)において中心的な役割を果たしている。2015年9月以来、HLPFsは2回開催され、3回目はニューヨークで2018年7月に行われた。各国が自発的国別レビューを通じてそれらの成果と課題を共有するこのレビューにますます多くの種々のステークホルダーが参加している。
この毎年開催されるレビューは、SDGsの達成における共通の機会と障害(困難)について万全の準備をするのに、そして成功をもたらすプラクティスやそれほどもたらさないプラクティスから学ぶのに最も重要な機会である。障害に対処する新しい方法を開発する機会でもある。財源を見つけること、分野横断的な方針と予算を確保することなどの頻発する課題が持ち上がっているが、開発の成果が早く出せるようにする役割をテクノロジーが担うような傾向は励みになる。

ISOフォーカス:特にここジュネーブにおいてパートナーシップ(協力関係)はどの程度ですか?SDGsに対するISOの協力はどのくらい重要ですか?

事務局長:パートナーシップ(協力関係)(より「独自の」パートナーシップ(協力関係)を含む)は、SDGsの達成に重要である。私達は、予想外のパートナーが協力することで、異なるが補足的な専門知識により確実に新しい解決策が引き出されるマルチステークホルダーの協力を考える必要がある。知識の多様性に加えて、リスクと機会が共有できて、プログラムが定期的な資金提供を頼りにできるように、資金調達源を拡大しなければならない 。ジュネーブでは、SDGラボが、SDGの実行を支持して、ジュネーブ2030収益活動協調体制(エコシステム)ネットワークを共同で作った。このネットワークでは、その比類のない場所のさまざまなステークホルダー間の関係や革新的なパートナーシップ(協力関係)が熟考される。協力に向けた力強さをかつてないほど感じる。標準化がその中心的な活動であることから、ISOがその目標を達成する上で重要な役割を果たすのは明らかである。ISOの22000以上の国際規格のポートフォリオは、産業から医療、テクノロジー及び教育に至るほとんどすべてのSDGsを網羅し、パートナーシップ(協力関係)を成功へ導く。

ISOフォーカス:SDGsの達成の助けとなるISO規格の役割をどのように考えますか?

事務局長:独立した非政府組織としてISOは、革新を支える役に立つ規格を定義する重要な役割を果たす。これは結果を早く出すための基本となる。
規格を定義するプロセスそれ自体は、2030アジェンダの趣旨に従った、協議とパートナーシップ(協力関係)の成果(が実を結んだもの)である。さらに、SDGsに極めて重要な(不可欠な)要素は進捗状況の監視及び測定である。この分野では、ISO規格は、成功を測り(判断)し、課題を特定する役に立つ。

ISOフォーカス:あなたはInternational Gender Champions(国際ジェンダーチャンピオン)の主導者の1人であるが、現在ISOはそれに属している。あなたは今後チャンピオンのネットワークがどのように拡大すると見ていますか?ISOなどの組織は、これらの目標の達成を進める際にどのように役に立つことができますか?

事務局長:The International Gender Champions(国際ジェンダーチャンピオン)は、性別の壁を取り除き、彼らの影響が及ぶ範囲で男女の平等を仕事上で実現しようと決意している女性と男性の意志決定者を集めるリーダーシップネットワークである。2015年7月にジュネーブのパレ・デ・ナシオンで開始して以来、このイニシアチブは世界中に205人のチャンピオンを獲得した。この205人のチャンピオンは、良いガバナンス、リーダーシップ&説明責任、選択&補充 、仕事と生活のバランス、組織のサービス、ミーティング、会議&代表団及びプログラム作業 &フィールドワークに関係のある、約600の約束をした 。国連の事務総長であるAntónio Guterres氏やISO事務局長の Sergio Mujica氏など、ますます多くのリーダーたちがこのイニシアチブに参加している。私はチャンピオンのネットワークが将来成長し続けると強く信じている。これらのチャンピオン、大使、局長及び市民社会の活躍者は、panel parity pledge(パネルの同等誓約)のように、彼らの階層で具体的かつ達成可能な約束をすることによって、SDG 5(男女の平等)に大きな影響を与えるだろうが、これはSDGの目標全体を実行するための基本である。
ISOのような組織にとって、 技術的な仕事(作業)への女性の効果的参加を促進し、女性独自の見方を取り入れ、仕事と生活のバランスを実現することにより、商品(成果物)をさらに男女に対応できるようにすることによって他の目標だけでなく男女の平等を達成する役に立つ。

ISOフォーカス: 2030年までの話のなかで重要な考え/強い願望は何ですか?

事務局長:強い思い入れがある概念が2つある。1つは「考え方(物の見方)の変更」である。2030アジェンダは、物事の考え方も取り組み方も異なる。サイロで働くこと(組織内の各部門が組織全体のことを考えず、自己部門のことだけを考えて働くこと)は効率的ではないので、私達は、人々が自分のセクタの安全地帯の外に出ようとする動機[意欲]を生み出す必要がある。こうした変化をもたらすには、私達はすべての作業階層で模範を示して指導しなければならない。
2番目の概念は「変化」である。SDGsは不可分で、全世界に及ぶものなので、transformational(変形する)が概念を用いている。2030アジェンダが、世界が持続可能な開発における課題とその解決策の両方をどう結束して共有するかを示す歴史的に重要な機会であることは間違いない。
https://www.iso.org/news/ref2325.html

次回に続けます。