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2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方(第37回)

平林良人「2000年版対応 ISO 9000品質マニュアルの作り方」アーカイブ 第37回

◆このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「2000年版対応ISO9000品質マニュアルの作り方」です。

8. 測定,分析及び改善
8.1 計画

  • 管理責任者は,当支店の商品,サービスが顧客の要求事項を満足しているかについて下記のことをチェックする計画を立案する。
    • 1) 窓口業務対応が万全であるか。
    • 2) 事務処理,融資先審査,資金運用等の業務において適切な検証がされているか。
    • 3) 業務中における要員の後退や手順の変更等の変更における相互監視,自主確認は行われているか。
    • 4) 商品に対する規定要求事項は満たされているか。
  • 以上の計画の遂行は,「契約管理規定T-06」「業務管理規定T-07」「交差規定T-15」の規定に沿って行われる。実施結果は,「窓口業務記録K-11」「考査記録K-16」に記録する。
  • 融資管理課長は,商品に対する「顧客満足度」及び「顧客苦情率」,プロセスでの「貸出不良資産」等を把握し,商品の改善を行うために,統計的手法を用いて,データを分析し処理する。
  • 以上のことが確実に行われているかを,年1回内部監査でチェックする。

8.2 監視及び測定
8.2.1顧客満足

  • 窓口業務課長,渉外課長は,顧客満足度について,相談窓口サービスにおいて「お客様アンケート」を行い情報を収集する。その結果は,「顧客相談記録K-17」にまとめられる。
  • 当行の顧客への相談窓口サービスとして下記の物がある。
    • 1) 生涯生活プランの相談
    • 2) 資金運用相談
    • 3) 不動産情報提供
  • 顧客からの苦情は,「顧客相談記録K-17」にまとめられ,集計される。
  • プロセスの詳細は,「顧客相談管理規定T-16」に定める。
  • 以上のことが確実に行われているかを,年1回マネジメントレビューでチェックする。

8.2.2 内部監査

  • 管理責任者は,内部監査を効果的に実施するために,下記のことを行う。
    • 1) 品質活動が計画された通りに実施され,効果的に機能しているかどうかを判定するために,内部監査を計画し実施する。
    • 2) チームリーダーは,被監査部門のそれまでの監査結果及び活動の状況や重要性に基づいて計画を立てる。
    • 3) チームリーダーは,監査の範囲,頻度及び監査方法について内部監査の計画に定める。
    • 4) 監査チームは,被監査部門から独立した者で構成される.内部監査員の認定は「内部監査実施規定T-14」による。
    • 5) チームリーダーは,監査の結果を「内部監査報告書にとりまとめ,被監査部門長へその情報を伝達する・是正指摘事項のある場合は「是正処置要求・回答書」を作成し,「内部監査報告書」とともに被監査部門長に発行する。
    • 6) 被監査部門長は,その不適合指摘事項について適切な時期に,是正処置を実施する。
    • 7)チームリーダーは,とられた是正処置の効果の確認のためフォローアップ監査を行う。
      以上の一連の記録は,「内部監査記録K-15」としてまとめられる。
    • 8)管理責任者は,「内部監査記録K-15」をマネジメントレビューのインプット資料とする。「内部監査記録K-15」の帳票様式を付録に付ける。
  • 内部監査実施の詳細は,「内部監査実施規定T-14」に定める。
  • 以上のことが確実に行われているかを,年1回マネジメントレビューでチェックする。

8.2.3 プロセスの監視及び測定

  • 管理責任者は,内部監査を活用して品質マネジメントシステムのプロセスの達成状況を監視する。プロセスには次のものを含む。
    • ①経営者の責任            ⑩教育訓練
    • ②顧客垂硯              ⑪インフラストラクチャー
    • ③品質方針              ⑫作業管理
    • ④品質目標              ⑬サービスの実現
    • ⑤品質マネジメントシステムの計画   ⑭ 顧客満足
    • ⑥責任及び権限            ⑮ プロセスの監視及び測定
    • ⑦管理責任者             ⑯ データの分析
    • ⑧内部コミュニケーション       ⑰ 継続的改善
    • ⑨経営資源の提供           ⑱ 予防処置
  • 管理責任者は,監視の結果,十分でないと認めた場合は支店長と相談して対策をとる。
  • 以上のことが確実に行われているかを,年1回マネジメントレビューでチェックする。

8.3 データ分析

  • 総務課は,QMSの適正性,有効性を決定するため,改善の可能性を明確にするために,データを収集し,分析する。
  • データには課内部の検査データ,及び「新商品売上K-05」「融資記録K-06」「取引先評価記録K-07」「窓口業務記録K-11」「紙幣管理記録K-12」「内部監査記録K-15」「考査記録K-16」「顧客相談記録K-17」「ISO委員会議事録K-19」「契約書K-20」「日常点検シートK-21」「品質計画書K-22」がある。
  • 総務課は次の事項の情報を得るために,統計的手法を用いてこれらのデータを分析する。
    • 1) 顧客満足の指標としての「顧客苦情率」
    • 2) 顧客苦情率の削減率,貸出不良資産の削減率への換算。
    • 3) 当支店の貸出資産能力,商品特性,及びこれからの商品特性の傾向。
    • 4) 供給者の品質及び工程能力。
  • 以上のことが確実に行われているかを,年に1回内部監査でチェックする。

8.4 改善
8.4.1 継続的改善の計画

  • 管理責任者は,QMSの継続的改善に必要なプロセスを計画し実行する・この計画を“改善計画”と位置づける。
  • QMSの継続的改善は,次のPDCAを実施することにより促進する。
    • P:品質方針,品質目標,品質マネジメントシステムの計画
    • D:責任権限,内部コミュニケーション,教育訓練,サービス実現
    • C:内部監査,プロセスの監視及び測定,データの分析
    • A:予防処置,マネジメントレビュー
  • 以上のことが確実に行われているかを,年1回マネジメントレビューでチェックする。

8.4.2 是正処置

  • 管理責任者は,是正処置を具体的に実施する手順を「是正・予防処置規定T-18」に定める。
  • 実際に発生した不適合を除去し再発を防止するために是正処置を行う。是正処置は,問題の大きさに対応し,リスクに見合ったものとする。
  • 以下に構成処置に関する手順を抜粋する。
    • 1) 窓口業務課長及び渉外課長は,「顧客相談記録K-17」に基づき,顧客からの苦情の重要度を判断して「不適切サービス管理規定T-17」により,不適切サービス原因部署と共同して原因調査及び不適切サービスの再発防止活動の必要性評価,対策の実施を行う。
    • 2) 不適切サービス発生部門の課長は,プロセス,QMSの不適切サービスのうち,その処置の仕方が作業標準に定められている軽微な不適切サービスを除き,関連部門と共同して原因調査及び不適切サービスの再発防止活動の必要性評価,対策の実施を行う。
    • 3) 不適切サービス発生部門の課長は,是正処置及び予防処置により,手順に変更が及ぶ場合は,その変更を実施し記録する。
    • 4) 管理責任者は,是正処置の実施結果及びその効果を確認して記録する。
    • 5) ISO事務局は,是正処置に関連する記録を保管する。
  • 「顧客相談記録K-17」の帳票様式を付録に付ける。
  • 以上のことが確実に行われているかを,年1回マネジメントレビューでチェックする。

8.4.3 予防処置

  • 管理責任者は,予防処置を具体的に実施する手順を「是正・予防処置規定T-18」に定める。
  • 潜在的な不適合の発生を防止し,その原因を除去するために予防処置を行う.実施する予防処置は,問題の大きさに対応し,リスクに見合ったものとする。
  • 以下に予防処置に関する主な手順を抜粋する。
    • 1) ISO事務局は,「取引先評価記録K-07」「窓口業務記録K-11」「内部監査記録K-15」「考査記録K-16」「顧客相談記録K-17」「ISO委員会議事録K-19」を見直し,管理責任者に報告する。
    • 2) 管理責任者は,報告内容により,潜在する重大な品質問題に対して予防処置を実施させるとともに支店長に報告する。
    • 3) 該当課長は,不適切サービスの原因及び予防処置を管理責任者に報告する。
    • 4) 管理責任者は,この報告を受けさらに結果確認して所見を支店長に報告する。
    • 5) ISO事務局は,これらの一連の記録を保管する。
    • 6) 管理責任者は,QMSを規定する文書に改訂,変更を必要とする場合は,これを指示し実行させる。
  • 是正・予防処置記録K-18」の帳票様式を2種類付録に付ける。
  • 以上のことが確実に行われているかを,年1回マネジメントレビューでチェックする。

8.5 マネジメントレビュー
8.5.1 一般

  • 支店長は,当支店のQMSが品質方針及び品質目標を満足し,適切かつ効果的に機能していることを確実にするため,そのシステムの有効性の確認の会議,マネジメントレビューを毎年3月に主催する。支店長は,この会議の前に,管理責任者からの半年ごと1回の定期報告書,及び毎年1回の内部監査記録を閲覧する。
  • 支店長は,QMSが適切にかつ効果的に運用されている事を評価し,QMSに見直しの必要がある場合は,指摘事項を管理責任者に指示し,適切な処置をとる。レビューの記録は「マネジメントレビュー記録K-01」に保管する。「マネジメントレビュー記録K-01」の帳票様式を付録に付ける。
  • 支店長は,マネジメントレビューの手順を「マネジメントレビュー規定T-19」に定める。

8.5.2 マネジメントレビューヘのインプット

  • 支店長は,マネジメントレビューヘのインプットとして次の項目を充てる。
    • 1)内部監査及び第三者QMS審査の結果
    • 2)顧客からのクレーム及び評価
    • 3)プロセスの実績及び商品,サービスの適合性確認結果
    • 4)予防処置及び是正処置の状況
    • 5)それまでのマネジメントレビューの改善結果
    • 6)組織・要員・設備・環境等の大幅な変更

8.5.3 マネジメントレビューからのアウトプット

  • 支店長は,マネジメントレビューからのアウトプットとして次のことを行う。
    • 1)QMSの改善及びそのプロセスの改善に関連する活動
    • 2)顧客要求事項に関連する商品,サービスの改善に関連する活動
    • 3)必要な経営資源の決定に関連する活動