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品質マニュアルの作り方(第12回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第12回

条項4.5 Document control(文書管理)
条項4.5.1 Document approval and issue(文書の承認及び発行)

【ポイント】

  • ① すべての文書およびデータを管理する手続きを定めた文書管理規程がある。
  • ② 文書管理規程に従って実行している。

【背景】

  • ISO9000シリーズ規格の大きな特徴の1つである文書管理について規定している。
  • ② 日本の企業はこの文書管理を苦手とするところが多いが,これは一つには手間ひまがかかるわりに実効果が少ないと経験的に思われてきたからである。
  • ③ したがってなんでもかんでも文書化するのではなく(文書化することが仕事ではない),最小限の仕組みを構築し,凡帳面にルールを守っていくことが大切である。

【企業内実施例】

  • ① 標準書類の作成,承認,制定,登録,配布,保管などの方法を定めた基準がある。
  • ② 標準書類に従って作成,承認,制定,登録,配布,保管などが行われている。
  • ③ 標準書類の改廃に伴い廃止される文書などを使用の場から撤去する方法が基準に定められている。

【審査時の質問事項】

  • ① 文書管理規程を見せてください。
  • ② 文書の種類,体系を説明してください。
  • ③ 廃止文書の回収方法を教えてください。
  • ④ 改訂文書の配布先を教えてください。(配布先へ行き)旧図面(旧文書)がないことを確認させてください。

【不適合】

  • ① 文書管理規程がない,またはあっても不十分である。
    〔注〕 旧文書を「自然切替え」などの理由である期間保管しておかなければならないような場合,「旧図面」などの印鑑を押し,識別しておく。

条項4.5 Document control(文書管理)
条項4.5.2 Document changes/modifications (文書の変更・改訂)

【ポイント】

  • ① 文書を変更する場合の作成,承認,発行,改訂などの方法を定めた基準を作成し,常に最新版の文書で作業が行われている。
  • ② 文書の変更は,最初に審査,承認した同一の機能・組織が審査・承認する。

【背景】

  • ① 設計変更と同様,文書(規程,基準,標準,指示書,図面など)変更も日常の生産活動のなかでは頻繁に起こる。
  • ② 関係部門と密接なコミュニケーションをとり,常に最新の情報によってオペレーションが進められるようにする。
  • ③ 特に現場では,旧文書(旧図面)が使用されていないことが重要である。

【企業内実施例】

  • ① 変更(改訂)時の裏付情報の収集,作成,改訂の履歴,承認,配布,回収などの方法を定めた基準がある。
  • ② 基準通りに文書の変更(改訂)が行われている。
  • ③ 改訂前の文書の誤使用が,社内,外注で起こらないような工夫がなされている。
  • ④ 文書管理台帳により最新版の文書が直ちにわかるようになっている。

【審査時の質問事項】

  • ① 変更(改訂)時の裏付情報をどのように収集していますか?
  • ② 変更基準を説明してください。
  • ③ 文書管理台帳を見せてください。

【不適合】

  • ① 制定者と変更者が異なっている(組織変更などの理由の場合は除く)。
  • ② 現場で旧図面(旧文書)が使用されている。
  • ③ 文書変更の基準がない,またはあっても不十分である。

条項4.6 Purchasing(購買)
条項4.6.1 General(一般)

【ポイント】

  • ① 購買品が会社の規定要求事項に適合していることを確認する。

【背景】

  • ① 材料・原料などの購買は完成品の品質確保に重要な要件である。
  • ② 購買活動はコスト,納期,品質という順序で管理のウェートが置かれがちである。
  • ③ 品質システムにおいては,購買品に対する品質要求事項を明確にして,この事項に購買品が適合していることを確認するシステムが必要である。

【企業内実施例】

  • ① 購買品の規定要求事項が定められている。
  • ② それが文書化され,関係部門に伝達されている。
  • ③ 購買品が規定要求事項に適合していることを確認する手段が定められている。
  • ④ 基準通りに適合しているかどうかの確認が実施されている。

【審査時の質問事項】

  • ① 購買品の規定要求事項を説明してください。
  • ② 購買品が規定要求事項に適合していることを,どのようにして確認していますか?

【不適合】

  • ① 規定要求事項が定められていないか,不十分である。
  • ② 購買品と規定要求事項とが適合しているかどうかの確認手段が定められていない。

条項4.6 Purchasing(購買)
条項4.6.2 Assessment of sub-contractors (下請負契約者の評価)

【ポイント】

  • ① 会社は品質を含む下請負契約要求事項を満たしうる能力に基づいて,下請負契約者を選定する。またその選定の基準がある。
  • ② 下請負契約者の一覧,能力,これまでの実績についての記録がある。

【背景】

  • ① 下請負契約者(いわゆる外注)が,完成品の品質に与える影響は大きい。
  • ② 下請負契約者選定にあたっては下請負契約者の履歴,実績,エ場の実態,設備,人材など,あらゆる角度から評価をしなくてはならない。
  • ③ これらは新規選定時に実施するだけでなく,定期的に実施して,常に下請負契約者の品質管理レベルを把握しておき,それを取引に影響させることである。

【企業内実施例】

  • ① 品質要求を含む下請負契約要求事項が定まっている。
  • ② 下請負契約者選定の基準がある。
  • ③ 選定後に,下請負契約者を活用するための管理方法(品質保証システム監査,エ程監査,技術指導など)が定まっている。
  • ④ 下請負契約者の能力,実績が記録としてある。

【審査時の質問事項】

  • ① 下請負契約者に対する品質要求事項を説明してください。
  • ② 下請負契約者の選択の仕方を教えてください。
  • ③ 下請負契約者の一覧表を見せてください。
  • ④ 下請負契約者の能力,実績の記録を見せてください。
  • ⑤ 活用にあたっての管理方法にはどんなものがありますか?

【不適合】

  • ① 下請負契約者選定の基準がない,または明確でない。
  • ② 品質を含む要求事項が明確でない。
    〔注〕 基準に達していなくても,その下請負契約者を活用せざるをえない場合は,特別採用などの基準が設定されていること。