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品質マニュアルの作り方(第11回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第11回

条項4.4 Design control(設計管理)
条項4.4.3 Design input(設計へのインプット)

【ポイント】

  • ① 設計にインプットする事項を明確にし,文書化する。
  • ② 不明確または矛盾する事項は,インプット事項作成責任者とともに事前に解決をしておく。

【背景】

  • ① ここでは,設計業務を推進するのに最も基本となる仕様の検討において不完全,不明確事項を解決し,具体的インプット事項を明確化(文書化)することを求めている。日常の設計業務において,設計者が無意識のうちにインプットして実施していることでも文書に書き表してみると,意外と品質問題の事前予防につながるものである。

【企業内実施例】

  • ① 顧客の要求事項,安全・環境条件,製造工程能力などの基準が文書化されている。
  • ② 基準通りにインプット事項が設計に反映されている。
  • ③ 不完全・不明確事項が関係者のあいだで検討され,明確にされている。

【審査時の質間事項】

  • ① 設計へのインプット事項は何ですか?
  • ② インプット事項を文書化したものを見せてください。
  • ③ 顧客の要求仕様のなかで不明確であった事項にどんなものがありましたか?
  • ④ その不明確事項をどのように解決しましたか?
  • ⑤ その記録を見せてください。

【不適合】

  • ① 設計へのインプット事項が明確にされていない。文書化されていない。
  • ② 不完全・不明確事項の検討がなされていない。その記録がない。
    〔注〕 設計へのインプット事項としては,たとえば次のものがある。性能特性,官能特性,据付特性,法的規制など。

条項4.4 Design control(設計管理)
条項4.4.4 Design output(設計からのアウトプット)

【ポイント】

  • ① 設計のアウトプットは要求事項,計算書および解析書に文書化する。
  • ② 設計のアウトプットがインプット要求事項,法規と合致しており,合否判断基準を含んでいる。

【背景】

  • ① 設計のアウトプットとして何が期待されているかを明確にし,設計にインプットされた要求事項が文書化されたアウトプットと一致するかを確認することが要求されている。
  • ISO9000シリーズ規格では,確認において技術的内容を問題にするのではなく,あくまでも確認のための管理システムをチェックするのであり, また実際にそのシステムが実行されていることを実証する。

【企業内実施例】

  • ① 設計のアウトプット(図面,計算書,試作品など)の保管方法,管理方法を明確にした基準がある。
  • ② 基準通りにアウトプットが保管,管理されている。
  • ③ 設計のアウトプットなどで製品の安全性,致命的な部分が明確にされている。
  • ④ インプットとアウトプットとの合致性を確認する方法,内容,サンプルなどを定めた基準がある。

【審査時の質問事項】

  • ① 設計のアウトプットとしてはどんなものがありますか?
  • ② 設計のインプットとアウトプットの合致性を確認する仕方を説明してください。
  • ③ 設計でチェックしておかなければならない法規制にどんなものがありますか?

【不適合】

  • ① 設計のアウトプットが明確でない。定められた通りに実行されていない。
  • ② 設計のインプットとアウトプットが一致していない。
    〔注〕 設計へのアウトプットとしては具体的には次のようなものになる。製品仕様書, 設計図面,設計計算書,試作品など。

条項4.4 Design control(設計管理)
条項4.4.5 Design verification(設計検証)

【ポイント】

  • ① 設計のアウトプットを検証する機能を計画し,文書化する。
  • ② 次のような設計管理手段によって設計検証を行う。設計試作,設計審査,量産試作,比較評価。

【背景】

  • ① 設計の質は以降のステップに多大の影響を与えるため,次ステップへ移るまえにDesign review(設計審査)を行うことが多くの企業で行われている。
  • ISO9000シリーズ規格でも,その検証の仕方を文書化して,確実に行うことを要求している。検証の手段は,それぞれの固有技術に負うが,検証という管理システムは普遍的なものである。
  • ③ 試作品を製作して性能の比較評価をするとともに,製造のしやすさなどの検証も行う。

【企業内実施例】

  • ① 設計のアウトプットを審査する責任部門,関係部門,審査項目,審査者などを定めた基準がある。
  • ② 設計審査を行う人の能力,資格が明確になっている。
  • ③ 設計審査が基準通りに行われ,その実施記録が残っている。
  • ④ 設計審査の結果のフォローが確実に行われている。
  • ⑤ 試作の手順が明確になっている。
  • ⑥ 比較評価の項目が決まっている。

【審査時の質問事項】

  • ① 設計審査基準を見せてください。
  • ② 設計審査を行う人の能力,資格はなんですか?
  • ③ 設計審査の記録を見せてください。
  • ④ 試作手順書を見せてください。

【不適合】

  • ① 設計審査基準がない,またはあっても不十分である。
  • ② 基準通りに設計審査が行われていない,または記録がない。

条項4.4 Design control(設計管理)
条項4.4.6 Design changes(設計変更)

【ポイント】

  • ① 設計変更する方法を明確にし,文書化してある。

【背景】

  • ① 設計業務に変更はつきものである。変更前と後の情報が正しく関係部門に伝わっていないと大きな混乱を引き起こす。変更管理を手順に忠実に実施し,適切に関係者に理解させておくことが不可欠である。
  • ② 最近では海外生産も活発になってきており,海外の子会社も含めてこのシステムのもとに実施していくことが必要である。

【企業内実施例】

  • ① 設計変更するときの変更書類,審査方法,承認方法,変更確認方法,伝達方法,伝達先などを定めた基準がある。
  • ② 設計変更の理由が明確にされており,関係部門で検討された後,設計変更がなされている。
  • ③ 基準に従い,設計変更が実施され,徹底されている。

【審査時の質問事項】

  • ① 設計変更の手順を定めた基準を見せてください。
  • ② 設計変更の検討記録を見せてください。

【不適合】

  • ① 設計変更の手順書がない,またはあっても不十分である。
  • ② 検討記録が残っていない。