ISO情報

品質マニュアルの作り方(第14回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第14回

条項4.9 Process control(工程管理)
条項4.9.1 General (一般)

【ポイント】

  • 製造工程から据付工程までの工程を管理する方法を定め,実施する。これには次のものを含む。作業指示書など,工程の監視・管理,工程・設備の承認,作業出来映え基準。

【背景】

  • ① 「品質は検査ではなく工程で作り込まれる」というように,工程管理は製品品質を設計が意圏した通り作り込むための非常に大切な管理である。
  • ② 工程管理の仕方については,それぞれ固有技術に基づいた独特のやり方があるが,この管理のやり方次第で品質に関するコストが変わってくる。作業指示書,手順書,外観見本, 統計的手法など業種によっていろいろな工夫がある。

【企業内実施例】

  • ① 図面,フローチャート,作業指示書,QC工程表,品質計画書などの内容,体系,部門を定めた基準がある。
  • ② 図面,フローチャート,作業指示書,QC工程表,品質計画書などの作成,変更,登録,発行,回収などの方法を定めた基準がある。
  • ③ 生産に用いられる設備について精度,評価方法,メーカーとの調整部門を定めた基準がある。
  • ④ 設備の点検,異常時の処置などの管理すべき事項を定めた基準がある。
  • ⑤ 外観などの良否判断をするときの限度見本の作成,承認,有効期限,表示,回収,部門などを定めた基準がある。
    〔注〕ここで品質計画書とは,個々の製品,サービス,契約またはプロジェクトについての品質業務,経営資源および活動順序を定めた文書のことをいう(ISO8402の3.9項)。

【審査時の質問事項】

  • ① 工程管理のやり方を説明してください。
  • ② その基準書を見せてください。
  • ③ QC工程表または品質計画書を作成していますか? あれば見せてください。
  • ④ 設備の日常点検,定期点検の基準書を見せてください。
  • ⑤ 官能検査の限度見本はどの部門で作り,承認していますか?
      保管,使用部門はどこですか?

【不適合】

  • 工程管理の基準通りに現場で実行されていない。
    〔注〕基準書の種類,内容についてではなく,あくまでもその工場にある基準に照らし合わせて現実の状態をチェックする。

条項4.9 Process control(工程管理)
条項4.9.2 Special processes(特殊工程)

【ポイント】

  • 特殊工程については工程で品質を作り込む方法を明確にし,特別な管理を行って品質確保をはかる。
    〔注〕特殊工程とは,後工程の検査や試験によってチェックできない工程のこと(たとえば溶接,メッキ,熱処理など)。

【背景】

  • ① 破壊検査をしないと品質の良し悪しがわからない工程では特別な管理を必要とし,人,機械,条件(温度,湿度,圧力,周囲環境),手順などの管理を明確にして生産を行う。
  • ② このような場合,QC工程表,品質計画書などは有効な工程管理の手段である。

【企業内実施例】

  • ① 溶接,メッキ,熱処理などの工程で特別の管理をする基準が定められている。
  • ② 基準通りに特殊工程が明確にされ,工程に明示されている(少なくとも品質マニュアルに明示されている)。
  • ③ 管理する特性,方法,頻度などが具体的に定められている(QC工程表,作業標準書など)。
  • ④ 特殊工程に従事する作業者には必要な教育を実施している。
  • ⑤ 特殊工程に従事する作業者についての教育,資格の記録が残っている。

【審査時の質問事項】

  • ① 貴社には特殊工程がありますか?
  • ② 特殊工程の管理方法について説明してください。
  • ③ 特殊工程の作業者の教育・訓陳計画を見せてください。
  • ④ その記録を見せてください。

【不適合】

  • ① 特殊工程の定義によって作業が認定されていない。
  • ② 作業者の教育・訓練がなされていない,記録がない。

条項4. 10 Inspection and testing(検査及び試験)
条項4.10.1 Receiving inspection and testing(購入検査及び試験)

【ポイント】

  • ① 受入物品は,それが規定要求事項に適合していることを検査および試験によって確認し終わるまで使用してはならない。
  • ② 緊急で受入検査なしで使用する場合は,その記録,回収および交換などの方法を定めて実行する。

【背景】

  • ① 搬入されるすべての物品(部品,材料,半完成品,完成品など)の受入検査のやり方,たとえば検査方式,無検査移行,データ確認など,その製品の状況に応じて検査のエ夫をしていく。
  • ② Cost of quality(品質のコスト)意識も最近重要視されているが,まずは品質の確保に主眼をおいて計画を立て,実行していくべきであろう。

【企業内実施例】

  • ① 受入方法,検査方法,監査方法などを定めた基準がある。
  • ② 受入検査基準の作成,承認,制定,登録,配布,回収などの手続きを定めた基準がある。
  • ③ 受入検査が実施され,その記録が残っている。
  • ④ 基準通りに受入れがなされており,合格品以外は流さない。
  • ⑤ 受入検査前に緊急加工をする場合の識別,記録,回収,交換の手続きを定めた基準がある。

【審査時の質問事項】

  • ① 受入検査の手順を文書に基づいて説明してください。
  • ② 受入検査基準の作成,承認,制定,登録,配布,回収などについて説明してください。
  • ③ 受入検査の記録を見せてください。
  • ④ 緊急加工の手続きは決まっていますか?

【不適合】

  • ① 受入検査の手順が文書化されていない。
  • ② 記録が不十分であり,説明がよくなされない。