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品質マニュアルの作り方(第15回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第15回

条項4.10 Inspection and testing(検査及び試験)
条項4.10.2 In-process inspection and testing(工程内の検査及び試験)

【ポイント】

  • ① 工程内で検査,試験および識別をする。工程監査および工程管理により品質確保をはかる。
  • ② 品質の確認がされるまで次工程には流さない。
  • ③ 不適合品の表示をし,良品と分離して保管する。

【背景】

  • ① 工程内にはいろいろな要素が存在している。たとえば人,機械,材料,方法などが主な要素であるが,これらの要素は常に変化している。したがって工程内の品質は常に変動していると見なくてはならない。
  • ② この変動している品質特性をどのような方法で把握するかを決め,規定された検査に合格しない製品は次工程に流さないような工夫をする。

【企業内実施例】

  • ① 工程内検査場所,試験方法(データ,サンプリング,重要度など),責任部門を定めた基準がある。
  • ② 工程内検査場所,試験方法を作成,承認,制定,登録,配布,回収する方法を定めた基準がある。
  • ③ 検査,試験が実施され,工程流動表などに記録が残されている。
  • ④ 基準通りに製品が流動しており,合格品以外は次工程に流動していない。
  • ⑤ 不適合品は基準通り識別,処置されている。

【審査時の質間事項】

  • ① 工程内検査の方法を説明してください。
  • ② 工程内検査の記録を見せてください。
  • ③ 不適合品の識別,混入防止をはかる手順を説明してください。
  • ④ 修理,回収したものはどの工程まで戻すのですか?

【不適合】

  • ① 工程内検査の方法が明確に定められていない。
  • ② 不適合品が良品と識別されていない,混入している。

条項4.10 Inspection and testing(検査及び試験)
条項4.10.3 Final inspection and testing(最終検査及び試験)

【ポイント】

  • ① 完成品が最終検査および試験において,規定要求事項のすべてに合致していることを確認する方法を基準化し,実施する。
  • ② どのような製品も,承認されるまでは出荷してはならない。

【背景】

  • ① ここでいう最終検査とは,工程内の最後で行われる検査,試験と,品質保証部などで行う出荷検査(Outgoing inspection)のことをいっている。
  • ② 最終工程で行う検査は,普通は全数検査であり,自社で決めた重要管理項目(たとえば安全特性など)を全数検査することになる。
  • ③ 出荷検査は普通,技取検査である。
  • ④ この検査結果を必ず記録として残し,そこまでの工程内検査と照らし合わせて出荷の可否を決定する。
  • ⑤ 出荷責任者が決められており,その人の承認があるまでは出荷してはならない。

【企業内実施例】

  • ① 最終検査,試験について,その実施方法が基準に定められている(合格・不合格時の処置,合格印,識別,受入,出荷検査との関係,責任部門など)。
  • ② 基準通りに最終検査,試験,出荷検査が計画され,実施されている。
  • ③ 最終検査の合否承認の基準が定められている(帳票,承認,責任者)。

【審査時の質問事項】

  • ① 最終検査を定めた基準書を見せてください。
  • ② 出荷責任者は誰ですか?
  • ③ 出荷を承認する基準を説明してください。

【不適合】

  • ① 最終検査,試験について,それを定めた基準がない。
  • ② 最終検査,試験について,それを実施した記録がない。

条項4.10 Inspection and testing(検査及び試験)
条項4.10.4 inspection and test records(検査及び試験の記録)

【ポイント】

  • 受入検査,工程内検査,最終検査のデ一タを作成し,記録として残すことを基準化し,実施する。

【背景】

  • ① 検査および試験の記録を残すとともに,それらの記録を,出荷した製品がすべての規定要求事項に合致している証拠として,定められた期間,保管しておかなければならない。
  • ② 保管期間は,それぞれの企業の経験と法的規制などから判断して企業が独自に定めればよい。

【企業内実施例】

  • ① 受入検査,エ程内検査,最終検査のデータの記録の仕方を定めた基準がある。
  • ② その基準通りに実施され,記録が残されている。
  • ③ 検査,試験の記録の保管方法が決まっている。
      (保管期間,保管方法,責任者,帳票,承認の仕方など)

【審査時の質間事項】

  • ① 検査,試験データの記録の残し方を説明してください。
  • ② 検査,試験の記録の保管について説明してください。
  • ③ 検査,試験の記録を見せてください。

【不適合】

  • ① 検査,試験のデータが保管されていない。
  • ② 記録の仕方,保管方法などについて定められた基準がない。