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品質マニュアルの作り方(第19回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第19回

条項4.15 Handling, storage, packing and delivery(取扱い,保管,包装及び引渡し)
条項4.15.5 Delivery(引渡し)

【ポイント】

  • 客先への引渡しまで製品の品質保護の対策を講じる。

【背景】

  • ① 機械設備などのビジネスにおいては,客先への据付け,試運転の実施などの初期性能を評価して初めて供給者側の品質の評価が終了することになる。
  • ② 客先への運送については,普通運送業者に任せることになるが,結果に供給者としての責任がもてるよう,その業務推進の仕方を明確に基準化しておく。
  • ③ 特に遠距離輸送の場合には,製品品質の保護に万全を期すことが必要である。

【企業内実施例】

  • ① 輸送中の製品保護について定めた基準がある。
  • ② 最終検査終了後から引渡しまでの責任について基準が定められている。

【審査時の質問事項】

  • ① 輸送中の製品保護について定めた基準を説明してください。
  • ② 製品の最終検査終了後から引渡しまでの責任について説明してください。

【不適合】

  • ① 製品輸送中の品質保護の基準がない。
  • ② 基準に従った品質保護が実施されていない。
  • ③ 最終検査終了後から引渡しまでの責任が明確に定められていない。

条項4.16 Quality records(品質記録)

【ポイント】

  • ① 品質記録の識別,保管,維持の手順を確立し,維持する。
  • ② 品質記録は読みやすく,劣化・損傷がなく,即座に検索できるものとする。
  • ③ 品質記録の保管期間を定めて保管する。

【背景】

  • ① 品質記録は,その企業が関係する法規,規程,基準により設定した期間,保管される。
  • ② 最近ではマイクロフィルム,またはフロッピーディスクなども利用されている。マイクロフィルム,フロッピーディスク(またはハードディスク)などの場合には,バックアップを作成しておく。
  • ③ 保管される品質記録は劣化・損傷しないよう工夫する。また記録は誰にでも理解でき,できるだけ読みやすく作成されており,必要な場合には即座に検索できることが必要である。
  • ④ PL(製造物責任)問題などで議論するような場合には,この品質記録が証拠として必ず必要となる。

【企業内実施例】

  • ① 品質記録の種類(下請負契約者の品質記録を含めて),記述方法,識別,見出し付け,主管部門,実施部門などを定めた基準がある。
  • ② 品質記録の保管について,劣化・損傷,検索の方法などを定めた基準がある。
  • ③ 品質記録の保管期間,期限の明示方法を定めた基準がある。
  • ④ 品質記録の基準通りに実施されている。

【審査時の質問事項】

  • ① 品質記録の種類,記述方法,主管部門,実施部門などを定めた基準を説明してください。
  • ② 品質記録の保管方法を定めた基準を説明してください。
  • ③ 品質記録の保管期間は何年ですか?
  • ④ 品質記録の保管場所はどこですか? そこへ連れて行ってください。

【不適合】

  • ① 品質記録に関する基準がない,またはあっても不十分である。
  • ② 基準に定められた期間,記録が保管されていない。
  • ③ 記録がかすれたりして見えなくなっている。
  • ④ 記録の見出し,ファイリング,保管状態が劣悪である。

条項4.17 Internal quality audits(内部品質監査)

【ポイント】

  • ① 品質システムの有効性を判定するために包括的内部品質監査を計画し,実施する。
  • ② 監査結果は文書化し,是正処置をとる。
     〔注〕内部品質監査とは,品質システムが効果的に実施され,目的達成のために適切なものになっているかどうかを判断するために行う体系的,かつ独立的な会社内吟味活動。日本の従来のQC診断とはねらい,方法などに違いがあるが,融合させていくことが望ましい。

【背景】

  • ① 品質システムは一度確立したからといっても,そのままの形では次第に現実と垂離しがちである。それを防ぐのが内部品質監査で,これはそのまま「経営者による品質システムの見直し」につながる。
  • ② 内部品質監査は計画的に行い,その予定は関係部門にあらかじめ公開されていることが望ましい。そうすることによって,監査される側にも “自部門の品質システムをチェックしておこう” という機運が生まれるからである。
  • ③ 内部品質監査を行う人材を育成しておくことが大切である。

【企業内実施例】

  • ① 内部品質監査のための期間,監査員資格,チーム編成,チェックリスト,監査報告などを定めた基準がある。
  • ② 監査を行うトリガー(非定期)の重要性を定めた文書がある。
  • ③ 監査の結果,その報告,改善計画,フォローアップ監査,標準化などの是正処置を定めた基準がある。
  • ④ 内部品質監査の計画~実施~報告~フォローアップ監査までのー連の記録が残っている。
  • ⑤ 監査結果が「経営者による品質システムの見直し」に活用されている。

【審査時の質間事項】

  • ① 内部品質監査の期間,監査員資格,監査報告を定めた基準を説明してください。
  • ② 非定期監査はどのようなときに行うのですか?
  • ③ 監査結果の報告,改善計画,是正処置などを定めた基準を説明してください。
  • ④ 内部品質監査の記録を見せてください。
  • ⑤ 「経営者による品質システムの見直し」 との関係を教えてください。
  • ⑥ 内部品質監査員の教育・訓練,資格について説明してください。

【不適合】

  • ① 内部品質監査の基準が明確に定められていない。
  • ② 内部品質監査が基準通りに行われていない。
     〔注〕内部品質監査はどこの部門でも最低年に1回は実施されることが望ましい。 (製造工程は年に1回では少なすぎる)