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品質マニュアルの作り方(第25回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第25回

3.3 社内編集委員会の設置

既存品質システムのチェックが各部門で実施され,推進母体がそのまとめを行えば,いよいよ品質マニュアルの編集に着手することになる。各部門から選出された推進委員が中心となり編集委員会を設置する。
編集委員会は,推進母体の組織(多くは品質保証部門)が事務局となって,なるべく少人数で編成する。この編集委員会で草稿を起案し,社内のしかるべき機関にかけて承認を受け品質マニュアルを制定することになるので,機動性のあることがこの委員会の第1の条件になるからである。図3.1(略)に編集委員会の代表的な組織構造を示す。それぞれの役割は大略次の通りである。
経営:品質マニュアルを制定する。
部門:自部門に関係する部門マニュアルを制定する。
推進委員会:部門を代表して調整,決定をする。
編集委員会:品質マニュアルを起案する

3.3.1編集の手順
品質マニュアルの編集は次の手順にしたがって行う。

図3.1 編集委員会の設置:略

  • 1)全体の構成を決める:第1章の“品質マニュアルが具備すべき要件” を参考にしながら,この要件をすべて満足させるような構成を1ページ目から具体的に決めていく。
  • 2)様式を決める:マニュアル全体のフォーマツトを決める。付録の品質マニュアルのモデル例にいくつかの例を掲載しているが,自社に一番ぴったりくる体裁を選べばよい。付録をつける場合,その体裁も決める。
  • 3)品質方針を定める:品質方針が既にあればそれを使えばよい。まだなければ編集委員会から経営者に依頼する。
  • 4)組織の責任と権限を定める:各部門長に各自の分課分掌を記述してもらう。その記述をもとに各部門の責任と権限を簡便に制定する。
  • 5)インデックスを作成する
  • 6)ISO 9000シリーズに準拠して条項4.1から記述していく:第4章“標準的品質マニュアル”を参考にする。

3.3.2 編集のポイント
以下,条項4.1から順次,編集のポイントとなるべき事項を簡単に解説しておく。

条項4.1 “経営者の責任”

  • 4.1.1“品質方針”
    経営者が自分の言葉で起草する。
    品質に関する会社の方針,目標,責務をできるだけ具体的に記述する。
    社長や事業部長などの組織体のトップがサインする。
  • 4.1.2 “組織”
    組織図を簡略化して掲載し,どのような単位で企業が構成されているかが理解できるようにする。
    掲載する組織は部単位まででよい(課編成の場合は課でよい)。それ以下はここには掲載しない。

    • 4.1.2.1 “責任及び権限”
      社長をはじめ組織図に記載した部門長(または課長)の主たる職務内容を記述する。主たる責任と権限について記述し,特に関係部門との相互関係に暖昧さを残さない。
    • 4.1.2.2“検証の手段及び人員”
      設計審査,製造段階における検査(受入検査,工程内検査,最終検査,出荷検査),内部品質監査,工程監査(外注会社監査)について記述する。
      さらに監査員の独立性について言及する。
    • 4.1.2.3 “管理責任者”
      管理責任者について明確に記述する。
  • 4.1.3 “経営者による見直し“
    品質システム見直しの方法,間隔,記録の保管について記述する。

条項4.2 “品質システム”
品質マニュアルを頂点とする社内標準書類について,その発行部門と内容について記述する。ここには本章の3.1.1項“既存標準書の整理”で述べた,標準書を見直ししたものを整理して記述する。

条項4.3 “契約内容の見直し”
顧客と契約を結ぶ部門,その手順ならびに関係部門との確認の仕方,そのルー トについて記述する。仕様,数量,納期,価格の確認の仕方について記述する。

条項4.4 “設計管理“

  • 4.4.1“一般“
    設計業務の手順を製品企画から図面制定までのステップごとに主管部門,関係部門がどの部門かを記述する。
  • 4.4.2 “設計及び開発の計画”
    設計計画の制定について記述する。

    • 4.4.2.1 “活動の割当て”
      設計テーマに適格な人の割当てについて記述する。
    • 4.4.2.2 “組織及び技術上の相互関連”
      特に技術,製造,品質保証との相互関係について記述する。
    • 4.4.2.3 “設計へのインプット”
      設計にインプットする事項を明確に記述する。
    • 4.4.2.4 “設計からのアウトプット”
      設計からアウトプットする事項を明確に記述する。
    • 4.4.2.5 “設計検証”
      設計審査,試作品評価,計算確認などの設計アウトプットを検証する手段を記述する。
    • 4.4.2.6 “設計変更”
      設計変更する方法を明確に記述する。

条項4.5 “文書管理”

  • 4.5.1 “文書の承認及び発行”
    文書類の作成,承認,発行,廃止の手続きについて記述する。会社の文書体系についてもここで説明,記述する。
  • 4.5.2 “文書の変更,改訂”
    文書類変更時の作成,承認,発行,改訂の手続きについて記述する。

条項4.6 “購買”

  • 4.6.1 “一般”
    購買品の品質確保に関しての一般事項を記述する。
  • 4.6.2 “下請負契約者の評価”
    下請業者の能力を評価し,その記録の保管について記述する。
  • 4.6.3 “購買データ”
    購買時に必要とする承認図,技術標準類,検査規格,限度見本について記述する。
  • 4.6.4 “購買品の検証”
    購買品の検証について記述する。