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品質マニュアルの作り方(第37回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第37回

条項4.1 経営者の責任

4.1.1 品質方針

  • 会社の品質方針を述べ,社長がサインをしている。
  • われわれは,全従業員が一丸となって,顧客および消費者の全員に喜ばれ,愛される製品作りを目指すため,社内に品質保証システムを構築し,4M,すなわち人,機械,方法,材料の管理を徹底することで,ISO 9002の規定要求事項を遵守していることを,ここに声明する。
  • 1.顧客第一主義の徹底
    • われわれは,顧客とは何かを自問しながら,常に顧客のニーズを把握し,その要求に適合する製品作りをするためのシステムを確立し,維持する。
  • 2.システムの遵守
    • 何人といえども,会社の製品品質に関与する者は,会社の品質システムに規定されている事項を遵守しなければならない。
    • 外部協力工場を含め,定期的に,ここに定めるシステムが有効に働いているかどうかをチェックする。

    3.ボトムアップ

    • 製品の品質を支えているものは,上記2.で述べた,製品品質に関与するもの全員の力である。大多数の人々の働くこの現場にこそ,品質の各要素を育てていく芽が存在することを,経営者は常に意識していく。
    • この声明を全従業員に徹底させるため,各部門の責任者は,その周知を確実に行うと同時に,部門ごとに掲示する。
    • 社長名
      サイン

4.1.2 組織

  • 会社の組織図を部のレベルまで掲載している。
  • 社長  人事総務部
        経理部
        購買部
        生産管理部
        品質保証部
        技術部
        第1工場
        第2工場

4.1.2.1 責任及び権限

  • 組織図に掲載した役職の貴任と権限を次のように規定している。
  • 1.社長

    • ① 会社経営方針の策定と実行に全責任を負う。
    • ② 会社の年度事業計画の設定と実施に全責任を負う。
    • ③ 安全の確保と品質の向上のために経営会議メンバーを管理する。
    • ④ 市場における顧客からのコストと納期の要求に対して対応をはかる。

    2.人事・総務部長

    • ① 地域社会貢献委員会の委員長を務める。
    • ② 組織・人事・労務管理に責任を持つ。
    • ③ 教育・訓練,社員の啓蒙活動を進める。
    • ④ 雇用・採用活動に責任を持つ。
    • ⑤ 組合との窓口である。
    • ⑥ 副資材品の購入を管理する。
    • ⑦ 建物の営繕に責任を持つ。

    3. 経理部長

    • ① 年間予算を立案し,その実行管理に責任を持つ。
    • ② 従業員の給与・支払管理をする。
    • ③ 売上金回収に責任を有する。
    • ④ 原価管理と予算・実績差管理を推進する。

    4. 購買部長

    • ① 外注評価と市場調査および外注開拓を進める。
    • ② 単価調整と注文書の発行に責任を持つ。
    • ③ 外注活動の監視と指導に責任を持つ。
    • ④ コスト低減活動を進める。

    5. 生産管理部長

    • ① 顧客注文を生産計画にタイミングよく置換する。
    • ② 営業と販売のバランスを監視し,製造工場の能力を管理する。
    • ③ 生産進捗を管理し,緊急注文への対応のための生産計画変更を行う。
    • ④ 生産の納期確保に責任を有する。
    • ⑤ 材料・部品の工場への供給に責任を持つ。
    • ⑥ コンピュータ生産管理システムの構築と運用に責任を持つ。
    • ⑦ 倉庫内の安全と作業環境に責任を持つ。

    6. 品質保証部長

    • ① 品質システムの管理責任者である(品質システムの確立と運営に責任を持つ)。
    • ② 経営者による品質システム見直し活動の事務局となる。
    • ③ 不適合対応のための是正処置の推進に責任を有する。
    • ④ 要求されるすべての検査・試験が規定通り実施されるかを管理する。
    • ⑤ 外注メーカー一覧に記載されているすべてのメーカーの品質監査を実施する。
    • ⑥ 経営会議に定期的に品質状況レポートを提出する。
    • ⑦ 品質保証部門の全従業員の教育・訓陳に責任を持つ。

    7. 技術部長

    • ① 部門の手順書の編集とその維持に責任を持つ。
    • ② 全社の技術的サポートの要求に応じる責任を有する。
    • ③ 経営会議に定期的に技術活動状況レポートを提出する。
    • ④ 工場の手順書をして顧客の要求事項に合致せしめる責任を有する。
    • ⑤ 技術部門の従業員全員の教育・訓練に責任を持つ。
    • ⑥ すべての部門の作業環境に責任を持つ。
    • ⑦ 技術部門の活動諸経費を効率的にする。
    • ⑧ コスト低減活動の技術分野の推進に責任を有する。

    8. 工場長(第1工場,第2工場)

    • ① 就業規則に規定されている従業員遵守事項を守らせる。
    • ② 効率とコストを考慮しながら,製造要求に見合う人員の雇用に責任を持つ。
    • ③ 製造活動レポートを定期的に経営会議に提出する。
    • ④ 工場内の安全と作業環境に責任を持つ。
    • ⑤ 従業員自主活動(QCサークル活動,5S,提案活動)の援助と育成をする。
    • ⑥ 工程内品質と生産出来高に責任を持つ。

    〔注〕 条項4.1.2.3の“管理責任者”については,6.の“品質保証部長”のなかの①にうたわれている。

4.1.3経営者による見直し

  • 会社品質システムの総合的な見直しについて述べている。
  • 1.会社の品質システムは,この品質マニュアルでその責任と権限を定められた経営者, 管理者によって1回/月,見直しされる。
  • 2.見直しにあたっては,内部監査報告,月度品質状況報告,新製品推進状況などが討論され,課題については次回の見直し会議までに是正活動が行われる。
  • 3.見直しのすべての記録は,正しく保管される。