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品質マニュアルの作り方(第40回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第40回

条項4.10 検査,測定及び試験の装置

  • 会社の検査,測定および試験の装置についてポイントを述べている。
  • 1.会社は,使用する装置の絶対的な精度を知るだけでなく,その装置の妥当性を把握するために,検査・測定・使用装置の精度を知るための校正システムを運営する。
    • ① ジグ,固定具,型板,型などの装置も,契約にうたわれる要求事項に適合していることを検証するために,この校正システムに含まれる。
    • ② すべての校正活動は,国家的標準につながる仕組みとなっている。これは,校正のために社内で使用される一時標準器を,外部標準器校正機関へ校正依頼することで実施している。
    • ③社内で校正できないすべての装置は,次のうちのどれかに送って校正されなければならない。
      • a)国家標準につながる校正装置をもっている校正機関。
      • b)国家計測器校正委員会が認定した会社。
      • c)その装置の生産会社。
  • 2.すべての装置は,個別に識別番号がふられている。
    • ① すべての装置は,記録カードによって管理されている。
    • ② 装置がその持っている精度能力から外れている場合,校正周期を調整すると同時に,その装置を使用した最近の製品の調査を行い,分析をする(場合によっては市場にまでトレースする)。
    • ③ 校正は,外部校正または内部校正のそれぞれの規定要求事項に従って実施される。
  • 3.会社は,すべての検査,測定および試験の装置に対して,適切な保管・維持と取扱いを実施する。

条項4.11 検査及び試験の状態

  • 製品,部品などの検査および試験の状態について述べている。
  • 1.会社は,すべての段階で,検証活動が誤って行われたり,不必要に繰り返されたりしないよう,製品の検査と試験の状態を表示することを徹底する。
    • ① 物品が搬入されても,その品質が規定要求事項に適合することが検証されないかぎりは倉庫へ移動させない。
    • ② 受入場所または倉庫にある物品の状態は,おのおののパレットまたは箱(受入数量によって異なる)に,ラベルによって次の通り表示される。
      • a)検査待ち
      • b)合格
      • c)不合格
      • d)保留(判断待ち)
  • 2.製品が製造工程中にあるときは,すべての製品は製品に添付される「工程管理票」によって,その状態が表示される。作業者は,その工程が終了したとき,その工程管理票にサインをする。
  • 3.すべての工程と検査が問題なく終了すると,完成した製品は,品質保証部の保留区域に移動される。品質保証部は,完成した製品がすべての規定要求事項を満足していることを確認して,完成品出荷証明書を発行する。

条項4.12 不適合品の管理

  • 不適合品の管理について述べている。
  • 1.会社は,使用に適合しない部品および製品を管理する手順を維持する。この手順書には,不適合品が認可なしに使用されたり,出荷されたり,適合品と混入したりすることを避けるための,識別についての規定が記述されている。
  • 2.不適合品は,定期的に開催される品質会議において,定期的に見直しされる。

条項4.13 是正処置

  • 是正処置についてその目的と手順,実施部門について述べている。
  • 1.検査結果,製品監査,再加工,廃棄などの記録は,すべて保管,維持される。
  • 2.これらの記録は,統計的手法を用いて分析され,欠陥または不適合の識別のために活用される。
  • 3.製品の不適合原因は調査され,迅速な是正処置がとられる。また品質システムの改善を必要とする場合は,直ちに実施される。
    この活動は,会社内のすべての部門で行われると同時に,必要な場合には,外注会社においても実行され,その形態は,手順書,工程,設計,材料および管理の改善という形をとる。
  • 4.是正活動の効果と永続性についてはよく考慮されなければならない。是正活動を必要とする場合,それを実行する責任部署は,
    • ① その欠陥が存在した部署,
    • ② その欠陥を生む原因となった部署,
    • ③ その欠陥システムの存在している部署,の3つの部署になる。

条項4.14 取扱い,保管,包装及び引渡し

  • 物品の取扱い,保管,包装および引渡しに関するシステムについてポイントを述べている。
  • 1.会社の方針は,製品品質を作り込む努力を,製品の取扱い,保管,包装および引渡しに至るまで実施することにある。後工程のちょっとしたミスによって,せっかく作り込んだ品質を台無しにすることほど,従業員の士気を減じるものはない。
    • ① 従業員にもっと注意を払うよう働きかけることによって問題の解決をはかろうとしない。仕事を遂行するために最も効果的な方法,装置,材料を導入することによって問題の解決をはかる。
    • ② 正しい製品の取扱いのなかには,製品の受取りから完成品を顧客に引き渡すまでの,製品の移動にあたっての適切な梱包材の使用が含まれている。同包される物には,製品の状態を正しく保つための梱包材だけでなく,製品のラベルや製品カードも含まれている。
  • 2.会社は,製品の保管のために,安全性,保存期間,移動性を考慮した適切な保管場所を設定する。
    • ① 壊れやすいもの,温度・湿度管理を必要とするものは,それぞれ個別の保管場所で保管される。
    • ② 保存期間のあらかじめ判明している製品は最小限の期間保管され,「先入れ先出し」のシステムで管理される。在庫を回転させることにより,「先入れ先出し」を確実に実施できるよう工夫する。
    • ③ 保存期間および保存状態によって,製品品質が左右されるようなことがあってはならない。それを防止するために,保管手順書に従い,定期的に製品の保存状態を確認する。
    • ④ 製品が誤って使用されるリスクを最小にするために,製品の識別が明確に実施され,その手順は文書化されている。
  • 3.出荷した製品
    • ① 顧客に引き渡されるまで,会社の敷地内にあるときと同じ考え方が適用される。
    • ② 製品の引渡しにあたっては,適切な手段によって顧客の正しい住所まで届けられるだけでなく,取扱い,包装および識別が正しく実行されることが重要である。
    • ③ 会社の包装と引渡しに関する手順書には,ラベルの添付,同包書類などに関する記述も含まれており,顧客の規定要求事項に適合するよう文書化されている。