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品質マニュアルの作り方(第42回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第42回

付録3 モデルB社(詳述タイプ)

  • (1)モデルB社の設定条件
  • 英国の電子部品の製造メーカーである。英国各地に製造工場を持っているが,電子部品によって工場に特色がある。完成品は英国内に約50%,残り50%は欧・米・日に輸出されている。 この工場の人員は約1,000名である。1986年にBS 5750 Part 1の認証を得ている。
  • (2)モデルB社の品質マニュアルの体裁,特長
    • ① ページ数が83ページにのぼる膨大なものである。
    • ② 会社のロゴの入った専用の用紙に記入されている。
    • ③ BSIのカイトマークが全ページに入っている。
    • ④ Compiled by, Approved by, Page, Issue が責任者のサイン入りで各ページに記入されている。
    • ⑤ 1ページ目には「この書類の版権はB社にあり,何人もB社の許可なしでコピーを使用してはならない」旨が記されている。
    • ⑥ 品質マニュアルの改訂の記録が6年分6ページにわたって記載されている。
    • ⑦ Introduction としてB社の歴史と現況を簡潔に述べている。
    • ⑧ 品質方針の声明には,社長以下8人の管理者がサインをしている。
    • ⑨ 次の内容の付録が付いている。品質手順書マニュアル,品質手順書の例,仕様書の例,設計図の例,品質計画の例。付録は省略した。
  • (3)モデルB社の品質マニュアル
    • 1)目次(略)
    • 表紙,版権について,序文,改訂歴,配布先につづき,3ページにわたって品質マニュアルのTitle/Section と ISO 9001の該当項目,ページが記載されている。
    • 2)紹介(Introduction)
    • 同社は英国電子部品製造メーカー大手のうちの1社であり,消費者と専用業者の両方にそのサービスを手広く提供している。会社の歴史は古く,1945年以降設計と製造の両者にわたって業績を伸ばし,同社の品質と安全性の高い商品は市場で高い評価を得ている。顧客からの商品への評価・指摘は同社の財産であるという考え方に基づき,顧客の要求に応えるべく迅速かつ経済的な商品開発をつづけてきた。
    • 3)以下、所定のフォーマットに従い,ポイントに解説をつけて掲載する。

条項4.1 経営者の責任

  • “経営者の責任”について,まず会社の品質方針を述べ,その下に8人の幹部がサインをしている。
  • 品質方針声明
  •  会社は,外部・内部の顧客の要求に適合する「総合の品質に卓越している」ことを目的とする。
  • 1. 「総合の品質に卓越している」とは,対象となる顧客を十分に認識し,その要求を十分に理解して,常に誤りなく,納期通りにその要求に適合することを意味する。
  • 2. この品質方針が会社内のすべての階層で理解され,実行され,維持されていることを下にサインした全員が責任を持って確認する。この実施のために,会社の品質システムは品質マニュアルの形式で文書として編集されている。
  • 3. この品質マニュアルは,設計,製造を中心として英国内・外の顧客から要求される会社の品質システムに適合させる手順書を包含している。
  • 4. 会社の品質システムは,BS 5750 Part 1 (ISO 9001-1987)の要求事項に適合するような組織化をはかってきた。
    • 社長のサイン
    • 工場長のサイン
    • 技術取締役のサイン
    • 経理部長のサイン
    • 営業部長のサイン
    • 購買部長のサイン
    • 人事部長のサイン
    • 品質部長のサイン
  • 組織
  •  条項4.1.2に関する組織図は部門を中心にして一部課のレベルまで掲載している。
  • 1. 社長は,会社の品質のすべてに関して最高責任を負う。
  • 2. 全従業員はそれぞれの仕事を通して会社の品質システムの維持に責任を有している。
  • 3. 経営委員会は社長の指揮下にあって品質に関する問題について社長を補佐している。
  • 4. 経営委員会のメンバーはそれぞれ所属する職制に対して次の責任を有している。
    • ① 適切な手順書の活用。
    • ② おのおのの業務に必要とする訓陳の実施。
    • ③ 品質システム,品質規格に基づいた作業。
    • ④ 会社のすべての組織変更,手順変更についての周知。
  • 経営委員会の責任
  •  工場長
    • 1. 製品の製造から出荷まで
    • 2. 機械設備のメンテナンス
    • 3. 建物営繕
    • 4. 製造計画
    • 5. 災害防止,安全衛生
  •  技術取締役
    • 1. 製品設計と開発
    • 2. 設計室管理
    • 3. 製品の安全性
    • 4. 製造工程の安全性
    • 5. 品質部管理
    • 6. 顧客・外注への窓口業務
  •  経理部長
    • 1. 会社の財務・経理
    • 2. コンピュータ・システムの管理
    • 3. 見積・原価管理
  •  購買部長
    • 1. 原材料購買
    • 2. 外注窓口
    • 3. 質関係の問題については,管理責任者として社長の直接の指揮を受ける。原材料管理
    • 4. 購買計画
    • 5. 安全衛生
  •  営業部長
    • 1. 顧客窓口
    • 2. 契約・注文書の審査
    • 3. 安全衛生
    • 4. 従業員福利厚生
  •  品質部長
    • 品質方針の実行,文書化,監視,維持に責任を有している。
    • 品質関係の問題については,管理責任者として社長の直接の指揮を受ける。
  • 経営者による見直し
  •  条項4.1.3“経営者による見直し”に関係する,品質マニュアルの下位に位置する標準書類(サポート文書類)の一覧を掲げて説明している。
    • 1. 会社の品質活動は常に「動的」でなければならず,会社の設定する目標は継続的改善活動の一里塚である。
    • 2. 品質システムを維持し,改善するために,品質部長による定期的な内部監査,部門手順書のチェックが行われる。
    • 3. 品質システムの見直しは12カ月に1回は実施される。
    • 4. この内部監査によって発見された事実は,経営委員会で討議,審査され,必要となる是正活動へとつなげられる。
    •  注〕 経営委員会は月に1回開催される。
      • サポート文書類
      • 部門監査     QM 0004
      • 製品品質監査書  QM 0005
      • 製品評価基準書  QM 0030