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品質マニュアルの作り方(第43回)

平林良人「品質マニュアルの作り方」(1993年)アーカイブ 第43回

条項4.2 品質システム

  • 下位文書類の一覧を示しながらポイントを述べている。
  • 1. 会社は,その製品を品質要求事項に適合させるための手段として,文書化した品質システムを確立し,維持する。
  • 2. この文書化された品質システムは,BS 5750 Part 1 (ISO 9001-1987)にそって作成された品質マニュアルの形となっており,品質部長の管理下におかれている。
  • 3. この品質マニュアルは,次のことを実施する意図で作られている。
    • ① 社内全従業員への品質の委託。
    • ② 監査を実施するため。
    • ③ 活用による品質経験の向上。
    • ④ 顧客と経営が特定している品質レベルの達成。
    • ⑤ 手順書,手段・方法,規格のスムーズな変更管理。
    • ⑥ 従業員教育・訓陳の有効な実施。
    • ⑦ 品質が十分に確保されているという顧客または外部機関からの認証。
  • 4. しかし,品質マニュアルだけでは十分ではない。この品質マニュアルを補強する「サポート文書」類が発行されている。
    • サポート文書類
    • 品質手順書マニュアル 付録を参照(省略)
    • 校正マニュアル      QM 0051
    • 統計的工程管理      QM 0022
    • 教育・訓練マニュアル   QM 0052
    • 製品品質計画書-1,-2   QM 0031,QM 0039
    • 仕様書管理書       QM 0026
    • 技術図面管理基準書    QM 0053

条項4.3 契約内容の見直し

  • “契約内容の見直し”についてポイントを述べている。
  • 会社は,各契約内容を見直しして,次の事項を確実に行う。
  • 1. 要求事項が適切に定められ,文書化されていること。
  • 2. 見積仕様書と異なる要求事項は,すべて解決されていること。
  • 3. 会社は,契約上の要求事項を満たす能力を保有していること。
    • 注1〕 契約内容のすべての記録は,会社の契約書正本のなかに保管される。
    • 注2〕 事業推進のなかにおいては,いくつかの変化,変更が起こるが,技術・品質部門は,こうした変更について会社の工程を手直しし,修正を実行する。
  • このような変更が決定されたときには,この情報が直ちに営業・原価部門に連絡されることが大切である。この情報伝達のために変更通知書が用いられる。
  • サポート文書類
  • 契約・販売,注文の見直し  QM 0056

条項4.4 設計管理

  • ISO 9001規格の順序にはそっていないが,製品設計の実務に入り込んだ若干専門的な説明をしている。ここでは係のレベルまでの組織図を掲示して説明している。
  • 1. 会社は,製品の設計を管理・検証する手段を設定し,維持する。
  •  製品品質確保の第1の方法は,製造前の設計の段階で品質を十分に作り込んでおくことである。
  • 2. この目的のために会社の設計部門は,顧客の要求事項を実際の設計,仕様書に翻訳し,製造,試験,メンテナンス,サービス部門のそれぞれが具体的に活動できるよう, 技術的また経済的に適切な基準を提示する。
  • 3. 該当するすべての安全基準に適合しなければならない。
  • 4. 設計部門が作成する仕様書は,明確に記載され,十分に文書化される。

  これらに引き続く文書類のすべての改訂は,設計部門の責任で実施され,必要と思われる場合には,顧客の承認を受ける。

  • 実施規程
  • 安全に関しての要求事項は極めて重要であるが,要求事項であるBSおよび国際安全規格に準じた設計規程を定めている。
  • 設計済みの過去の事例を参考に,新製品の安全面における検証を実施し,過去の欠陥データなどのフィードバックに特別の注意を払いながら,適切ならば,新しい材料,方法の採用を行う。

  • 設計
  • 1. 顧客の要求事項は,営業部から設計部に文書で伝えられ「試作要求書」が起案される。この「試作要求書」には検証済みの安全規程が添付されて設計に提出される。
  • 2. 新材料を使用するときには,材料に関する技術的要求事項をすべて満足するかどうかの検証を行う。
  • 3. 仕様に基づいた試作品が完成すると評価が行われ,設計データと関連する評価試験結果の詳細が集められる。すべての特殊評価項目は試験され,すべての設計データは,基本仕様に対して機能確認される。結果は「試作試験報告書」に記録される。
  • 4. 必要と思われるときには,会社または顧客によって,外部独立機関の試験を受けるために試作品が提供される。

  • 設計~購買~製造までのエ程管理フローチャート(QC工程表)
  • 顧客からの注文に始まり,仕様書の作成,それに基づく材料・部品の購買,試作品の製作, 試験とその報告,製造という一連の工程をフローチャートで示し,かつそれぞれの管理ポイントを定めている。フローチャートは省略するが,2ページにわたるものである。

  • 設計~量産試作管理フローチャート(設計レビュー・フローチャート)
  • 顧客仕様から始まり,設計仕様,試作,修正,部品表作成,検査,設計審査,量産試作に至るまでの工程を1ページにわたるフローチャートに示し,かつそれぞれの管理ポイントを定めている(フローチャートは省略する)。

  • 設計調査フローチャート
  • 設計部門がその業務を遂行する上で,調査・チェックしなければならないポイントを示した1ページにわたるフローチャートである(フローチャートは省略する)。

  • 設計基準
  • 設計方法
  • 会社の主要製品を例にとって具体的に設計の方法を記述している。
  • 1. 出力値
  • 2. 入力値
  • 3. 個々の電圧と電流値
  • 4. 許容温度差
  • 5. 許容規定値
  • 6. 稼働周波数と変動値
  • 7. 負荷サイクル
  • 8. 負荷の種類
  • 上記基本的数値の計算方法を具体的な計算式を用いて示している。

  • 設計参考資料
  • 設計を実施するときに具体的に活用する説明資料を挙げている。
  • 1. 会社で用いられる設計参考資料には次のものがある。
    • ① 製品データシート(電気特性,機械特性)
    • ② 当社の設計データ
    • ③ テキスト
    • ④ 設計理論
    • ⑤ 専門ジャーナル紙
    • ⑥ BS I規格
    • ⑦ 当社品質工程手順書
    • ⑧ 設計指示書
    • ⑨ 現流設計図
  • 2. 会社にはフアイリング・システムがあり,設計の種類別に迅速に検索できるよう多量の設計図がファイルされている。類似の設計をしたり,あるいはある特別な仕様を検索したいときに,このファイルを活用すると便利である。
  • 3. 設計変更管理については「文書管理」を参照のこと。

  • 安全衛生(実施規程をも参照のこと)
  • 製品および工程・材料が,安全要求事項を満足することを確認することは,安全管理者の重要な責任である。