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品質マニュアルの作り方1994年対応版(第13回)

平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第13回

このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。

条項 4.12 Inspection and test status(検査・試験の状態)

  • 【ポイント】
    • ① 検査および試験前後,および合否を識別する方法を明確にした基準を作成し,実施する。
    • ② 要求された検査および試験に合格した製品だけを出荷する。
  • 【背景】
    • ① 製造の全工程を通じて製品(部品・材料,半完成品・完成品,修理品)の品質の状態(検査および試験の状態)がどうなっているかを明確にし,不良品の混入を防止する。
    • ② 市場クレームの原因の多くに工程における不良品の混入が挙げられるが,具体的な識別手段を考え実行することで,このような品質不良の阻止をはかる。このことは,その工場のすべての現場で徹底されていなければならない。
  • 【企業内実施例】
    • ① 製造および据付けの全課程において,部品・材料,半完成品・完成品,修理品について,検査および試験の前後に,合否の判定・識別方法を定めた基準がある。
    • ② 全工程の製品・部品・材料の検査および試験の合否を,マーキング,スタンプ,タグ,ラベル,カード,検査記録などで識別するが,それらが紛失した場合の処置方法を定めた基準がある。
    • ③ 製造から据付けにいたる全課程において合否の識別がなされており,その記録の保管がなされており,不良品の混入する心配がない。
    • ④ 全工程の検査・試験結果の記入用紙,処置方法,責任者,記録の残し方を定めた基準がある。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 部品,材料,半完成品・完成品,修理品の識別方法を定めた基準を説明してください。
    • ② 識別の具体的な方法を教えてください。
    • ③ それが実際に行われている現場へ連れて行ってください。
    • ④ 不合格品についての記録を見せてください。
  • 【不適合】
    • ① 識別に関する基準がない,あっても不十分である。
    • ② 現場において定められた通りの識別がなされていない。
    • ③ 出荷の合否の記録がない,あっても不十分である。

条項 4.13 Control of nonconforming product(不適合品の管理)
条項 4.13.1 General(一般)

  • 【ポイント】
    • ① 不適合品が客先へ出荷されることを防止する手段を文書化し,維持する。
    • ② 不適合品の識別,文書化,評価,隔離,処置,関係部門への通知などの方法を定めた基準がある。
  • 【背景】
    • ① 不適合とは,
      • 1.関係法規との不一致,
      • 2.顧客から要求されているスペックとの不一致,
      • 3.企業内,グループ他関係団体で定めたスペックとの不一致,
    • のことをいい,こうした製品が不注意に客先で使用されたり,据え付けられたりすることを防ぐことを品質の事前予防という。
    • ② こうした手段を講じても品質問題は起きることがあり,そうした場合の処置,通知をする範囲(重大事故の場合には社長,事業部長,場合によっては社外へも知らせる)の手順を明確にしておかなければならない。
  • 【企業内実施例】
    • ① 不適合品について識別,隔離,処置,関係者への報告の手順を定めた基準がある。
    • ② 不適合品について識別,隔離,処置,関係者への報告が定められた基準に従って実施されている。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 不適合品の客先への出荷を防止する手段を説明してください。
    • ② 不適合品の隔離,処置,関係者への通知の方法について,その基準書を説明してください。
  • 【不適合】
    • ① 不適合品の客先への出荷を防止する手段が明確になっていない。
    • ② 不適合品の管理の方法が基準化されていない,または明確にされていない。

条項 4.13 Control of nonconforming product(不適合品の管理)
条項 4.13.2 Review and disposition of nonconforming product
(不適合品の内容確認及び処置)

  • 【ポイント】
    • ① 不適合品の処置(再加工,補修,特別採用,再格付,廃棄)の手順を基準化する。
    • ② 不適合品の処置後の再検査について基準化する。
  • 【背景】
    • ① 不適合となった製品の処置については,業種,製品,素材,客先の要求などによって,その処置の仕方が異なる。
    • ② あるレベルまでの品質不良は,客先の了解のもとに特別採用として受け入れされるが,それよりも品質レベルが悪い場合には,修理,再加工などをして受け入れてもらうか,最 悪のケースとして廃棄しなくてはならない場合がある。
  • 【企業内実施例】
    • ① 不適合品の処置について再加工,修理,特別採用,再格付,廃棄などの決定責任部門,指示先,報告先などを明確にした基準がある。
    • ② 不適合品の処置後の再検査について,再検査手順および安全性評価確認手法を定めた基準がある。
    • ③ 基準に従って再検査がなされ,または場合によっては確認会議が行われた場合,その再検査結果記録,確認会議記録が保管されている。
    • ④ 不適合品の処置時の客先への報告,関係者への通知の範囲を定めた基準がある。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 不適合品処置の手順を定めた基準について説明してください。
    • ② 不適合品処置の責任者は誰ですか?
    • ③ 不適合品の処置後の再検査の手順を定めた基準を説明してください。
    • ④ 再検査,確認会議の記録を見せてください。
    • ⑤ 不適合品処置の客先,社内への報告の基準を見せてください。
  • 【不適合】
    • ① 不適合品処置の基準,再検査の基準が不明確である。
    • ② 基準に従って不適合品の処置がなされておらず,再検査,確認会議の記録なども残されていない。

条項 4.14 Corrective and preventive action(是正処置及び予防処置)
条項 4.14.1 General (一般)

  • 【ポイント】
    • ① 不適合を是正し,かつ予防処置を講じる手段を文書化し,実行する。
    • ② 是正処置および予防処置から生じるすべての変更を実施し,記録する。
  • 【背景】
    • ① 製造,サービスの供給活動を展開していると,様々な情報が集まってくる。品質に関しての情報は,購買先を通じて,社内のすべての工程を通じて,流通断簡を通じて,顧客からと多くの情報源から寄せられる。そのなかには,具体的なクレームの発生情報からの潜在的品質管理問題を示唆するものまである。
    • ② 問題が発生してから実施する是正活動は,情報を把握したら有無をいわさず実施しなければならないが,より以上に重要なものは予防処置である。今回のISO 9000シリーズの改訂では,この予防処置が強調されている。
  • 【企業内実施例】
    • ① 是正処置の仕方を定めた基準がある。
    • ② 予防処置の仕方を定めた基準がある。
    • ③ 是正処置および予防処置による変更点の管理の仕方を定めた基準がある。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 是正処置の仕方を定めた基準書を説明してください。
    • ② 予防処置の仕方を定めた基準書を説明してください。
    • ③ 是正処置,予防処置実施後の変更管理について説明してください。
  • 【不適合】
    • ① 是正処置を定めた基準書がない。
    • ② 予防処置を定めた基準書がない。
    • 〔注〕 予防処置を定めた基準書は,会社ごとにその予防レベルは異なる。会社ごとに固有技術から定めてくるものである。

条項 4.14 Corrective and preventive action(是正処置及び予防処置)
条項 4.14.2 Corrective action(是正処置)

  • 【ポイント】
    • ① 顧客の苦情,マーケット情報を収集,分析する。
    • ② 不適合,クレームの原因調査,記録の仕方を基準化し,実行する。
    • ③ 不適合に対する是正処置の決定とその実施を確実に行う。
  • 【背景】
    • ① 過去の品質問題(工程内,作業操作上,市場クレームなど)を分析し,層別してみると,類似の問題がいかに多いかに驚かされる。品質問題の真の原因が把握されないままに対策がとられるからである。あるいは対策がとられていないからである。
    • ② 是正処置という言葉は耳新しい言葉であるが,要は真因をつかみ,二度と同じ問題が起きないように手を打つ総合的な改善活動,日本のいわゆる再発防止活動のことである。
    • ③ 是正処置には,暫定対策と恒久対策があるが,だれが,いつまでに,何を,どのように行い,だれが対策を承認するのかなどを明確にしておかなければならない。
  • 【企業内実施例】
    • ① 品質問題(工程内,作業操作上,市場クレームなど)に対して,原因調査,対策検討,その承認,実施効果の確認,標準化,ユーザーへの回答などの是正処置の方法を定めた基準がある。
    • ② 不適合品の原因を検出するために,すべての工程,作業,特別採用,品質記録,サービス報告書および顧客の苦情などを分析する方法を定めた基準がある。
    • ③ 是正処置の実施後の効果(不良発生状況の傾向など)を確認し,場合によっては処置をとること(品質システムの見直しなど)を定めた基準がある。
    • ④ 是正処置に伴い経営の見直しを行う方法を定めた基準がある。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 不良発生原因の分析はどのように実施していますか?
    • ② 是正処置後の効果の確認はどのように行っていますか?
    • ③ 是正処置実施の記録を見せてください。
    • ④ 是正処置に伴い経営の見直しを行う方法を定めた基準がありますか?
  • 【不適合】
    • ① 是正処置の基準がない,あるいは不明確である,または徹底されていない。
    • ② 是正処置に関する記録が保管されていない。
    • 〔注〕 是正処置については,その対策に必要とする時間,費用,効果のバランスを考えなければならない。したがって,なんでもかんでも対策をとっていないから不適合であるということはできない。