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品質マニュアルの作り方1994年対応版(第12回)

平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第12回

このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。

条項 4.10 Inspection and testing(検査・試験)
条項 4.10.3 In-process inspection and testing(工程内の検査・試験)

  • 【ポイント】
    • ① 工程内で品質計画書または手順書の要求通りに検査および試験を実施する。
    • ② 品質の確認がされるまで次工程には流さない。ただし4.10.2.3項の場合は除く。
  • 【背景】
    • ① 工程内にはいろいろな要素が存在している。たとえば人,機械,材料,方法などが主な要素であるが,これらの要素は常に変化している。したがって工程内の品質は常に変動していると見なくてはならない。
    • ② この変動している品質特性をどのような方法で把握するかを決め,規定された検査に合格しない製品は次工程に流さないような工夫をする。
  • 【企業内実施例】
    • ① 工程内検査場所,試験方法(データ,サンプリング,重要度など),責任部門を定めた基準がある。
    • ② 工程内検査場所,試験方法を作成,承認,制定,登録,配布,回収する方法を定めた基準がある。
    • ③ 検査,試験が実施され,工程流動表などに記録が残されている。
    • ④ 基準通りに製品が流動しており,合格品以外は次工程に流動していない。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 工程内検査の方法を説明してください。
    • ② 工程内検査の記録を見せてください。
    • ③ 緊急使用において識別した不適合品は回収してどの工程まで戻すのですか?
  • 【不適合】
    • ① 工程内検査の方法が明確に定められていない。
    • ② 緊急使用した場合の手続きがとられていない。

条項 4.10 Inspection and testing(検査・試験)
条項4.10.4 Final inspection and testing(最終検査・試験)

  • 【ポイント】
    • ① 完成品が最終検査および試験において,指定要求事項のすべてに合致していることを確認する方法を基準化し,実施する。
    • ② どのような製品も,承認されるまでは出荷してはならない。
  • 【背景】
    • ① ここでいう最終検査とは,工程内の最後で行われる検査,試験と,品質保証部などで行う出荷検査(Outgoing inspection)のことをいっている。
    • ② 最終工程で行う検査は,普通は全数検査であり,自社で決めた重要管理項目(たとえば 安全特性など)を全数検査することになる。
    • ③ 出荷検査は普通,抜取検査である。
    • ④ この検査結果を必ず記録として残し,そこまでの工程内検査と照らし合わせて出荷の可否を決定する。
    • ⑤ 出荷責任者が決められており,その人の承認があるまでは出荷してはならない。
  • 【企業内実施例】
    • ① 最終検査,試験について,その実施方法が基準に定められている(合格・不合格時の処置,合格印,識別,受入,出荷検査との関係,責任部門など)。
    • ② 基準通りに最終検査,試験,出荷検査が計画され,実施されている。
    • ③ 最終検査の合否承認の基準が定められている(帳票,承認,責任者)。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 最終検査を定めた基準書を見せてください。
    • ② 出荷責任者は誰ですか?
    • ③ 出荷を承認する基準を説明してください。
  • 【不適合】
    • ① 最終検査,試験について,それを定めた基準がない。
    • ② 最終検査,試験について,それを実施した記録がない。

条項 4.10 Inspection and testing(検査・試験)
条項 4.10.5 Inspection and test records(検査・試験の記録)

  • 【ポイント】
    • ① 受入検査,工程内検査,最終検査のデータを作成し,記録として残すことを基準化し,実施する。
    • ② 検査の記録には,合格か不合格かを明確に表示する。
    • ③ 出荷検査責任者は記録を確認する。
  • 【背景】
    • ① 検査および試験の記録を残すとともに,それらの記録を,出荷した製品がすべての指定要求事項に合致している証拠として,定められた期間,保管しておかなければならない。
    • ② 保管期間は,それぞれの企業の経験と法的規制などから判断して企業が独自に定めればよい。
  • 【企業内実施例】
    • ① 受入検査,工程内検査,最終検査のデータの記録の仕方を定めた基準がある。
    • ② その基準通りに実施され,記録が残されている。
    • ③ 検査,試験の記録の保管方法が決まっている。
      (保管期間,保管方法,責任者,帳票,承認の仕方など)
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 検査,試験データの記録の残し方を説明してください。
    • ② 検査,試験の記録の保管について説明してください。
    • ③ 検査,試験の記録を見せてください。
    • ④ 出荷検査責任者は誰ですか? どのようにして記録を確認していますか?
  • 【不適合】
    • 検査,試験のデータが保管されていない。
    • ② 記録の仕方,保管方法などについて定められた基準が無い。
    • ③ 出荷検査責任者が記録を確認していない。

条項 4.11 Control of inspection.Measuring and test equipment
(検査,測定及び試験装置の管理)
条項 4.11.1 General(一般)

  • 【ポイント】
    • ① 検査,測定および試験の設置(ソフトウェアを含む)を管理し,校正,維持するために基準を作成し,実行する。
    • ② 検査,測定及び試験装置の設置は,測定の不確かさが分かっており,使用する計測器類が必要な測定能力に合致していることを確認する。
    • ③ 試験用のハードウェア,ソフトウェアは仕様前に点検し,既定の期間ごとに再点検する。
    • ④ 計測装置に関する技術データはいつでも利用できるようにしておく。
  • 【背景】
    • ① 供給者が用いる検査,測定および試験の設置について,その精度の保証を求めた要求事項である。
    • ② 品質工程で作りこまれるもので,検査ではチェックされるものである。そのチェックに用いる検査,測定及び試験の設置は基準となる測定器であり,精度の確認は基本的な事である。
    • ③ 最近では検査にコンピュータを活用するケースが増えているが,それに使用するソフトウェアについては,仕様前点検,期間ごとの点検を基準化しておくことが要求されている。
  • 【企業内実施例】
    • ① 全計測機器について管理範囲,責任,トレーサビリティなどの計測管理全体の管理体系を定めた基準がある。
    • ② 使用目的ごとに必要精度が定められている。
    • ③ ソフトウェアの仕様前点検,既定期間点検の基準が定められている。
    • ④ 計測装置に関する技術データが収集,保管されている。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 計測装置管理の全体の体系を説明してください。
    • ② 計測器類の制度はどのようにして確認していますか?
    • ③ ソフトウェアの点検基準について説明してください。
  • 【不適合】
    • ① 計測装置管理体系がない,またあっても不十分である。
    • ② ソフトウェアの点検がなされていない。

条項 4.11 Control of inspection.Measuring and test equipment
(検査,測定及び試験装置の管理)
条項 4.11.2 Control procedure(管理手順)

  • 【ポイント】
    • ① すべての品質に影響する計測器類を校正し,国家標準とのあいだのトレーサビリティを確保する。
    • ② 校正基準外れが発見された場合は,過去の検査の有効性評価を行い,記録する。
    • ③ 検査,測定および試験の装置は,校正の設定を無効にできないよう保護手段を講じる。
  • 【背景】
    • ① ここでいう装置とは製品の品質に影響を与えるすべてのもの,たとえば栓ゲージ,マイクロメーターから始まってシールドルーム,オシロスコープなどの試験・分析装置のすべてをいう。
    • ② 通常は計測装置専門メーカーから性能検査書付で購入する場合が多いが,受入れ時にまず検収を行わねばならない。
    • ③ 専門メーカーに校正を依頼することも多いが,このような場合,そのメーカーの標準器がどのような国家標準とつながっているかよく調査しておく必要がある。
    • ④ あらゆる工程の検査・計測・試験装置ということになると,その数量は膨大なものになるが,1つ1つ台帳を作り,校正周期を定めて,きちんと精度確認をしておくことが大切である。
    • ⑤ 校正の周期は,精度が狂わない期間を経験から定めればよいが,重要な特性を毎日計測しているような場合は,最低年に1回の校正は必要であろう。校正周期が長くなれば,次の校正までのあいだの製品品質へのリスクが大きくなる。
    • ⑥ また精度の高い計測装置については特別な保管環境が必要となる。
  • 【企業内実施例】
    • ① 計測項目,要求精度を明らかにし,適切な装置を選定する方法が基準に定められている
    • ② 校正担当者の教育方法が定められており,基準通りに教育が実施されている(記録がある)。
    • ③ 標準器の明確化,識別番号,保管条件,校正方法,校正有効期限,管理部門を明確にした基準がある。
    • ④ 標準器の校正結果の記録の保管方法,校正を依頼したメーカーの履歴確認を定めた基準がある。
    • ⑤ 外部に標準となるものがない場合は,自社で行っている標準の根拠,履歴が明確にされている。
    • ⑥ 全装置について,装置の型式,識別番号,場所,点検頻度,点検方法,判定基準などを明確にした基準がある。
    • ⑦ 日常点検,定期点検が実施されており,記録が残されている。
    • ⑧ すべての計測装置は標識,ラベルなどにより校正状態が識別されている。
    • ⑨ 計測装置の校正記録を保管する方法を定めた基準がある。
    • ⑩ 計測装置の校正,検査,計測,試験などの実施時に確保すべき環境(温度,湿度,防塵など),異常時の処置などを定めた基準がある。  
    • ⑪ 全装置について取扱方法,保管方法を定めた基準がある(マニュアルなど)。
    • ⑫ ハードウェア,ソフトウェアを含めて検査,計測および試験設備について,校正担当者以外のものが勝手に校正のセッティングを変えないような保護手段を定めた基準がある。
    • ⑬ 外部の校正機関を活用するとき,活用する業者を評価,管理する基準がある。
  • 【審査時の質問事項】
    • ① 外部校正業者の選定,社内校正者の訓練などについて説明してください。
    • ② 標準器の管理をどのようにしているのか聞かせてください。
    • ③ 校正状態の識別をどのようにしていますか?
    • ④ 計測装置の使用,校正の環境はどのように管理していますか?
  • 【不適合】
    • ① 具体事例に掲げた基準などがないか,あるいは不明確である。
    • ② 具体事例に掲げた基準などが実施されていない,記録がない。
    • (計測装置台帳の履歴と現場の計測装置の状態とが一致しない)