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品質マニュアルの作り方1994年対応版(第22回)

平林良人「品質マニュアルの作り方1994年対応版」アーカイブ 第22回

このシリーズでは平林良人の今までの著作(共著を含む)のアーカイブをお届けします。今回は「品質マニュアルの作り方1994年対応版」全200ページです。
先に1987年版対応の「品質マニュアルの作り方」をお届けしましたが、今回はISO規格の改訂に伴い、全面的に1994年版規格に合わせた内容に更新したアーカイブです。

品質マニュアル
4.4.7 設計検証
☆設計審査以外に,試作作品評価,計算確認などの設計アウトプットを検証する手段を記述する。
 設計業務の業務ステップにおける次の段階での設計のアウトプットを検証する。

ステップ
業務名
アウトプットの検証

  1. 製品企画書作成
  2. 仕様書,構想設計(DR1)  仕様書を作成し構想設計したものの審査を行う
  3. 製品試作設計
  4. 試作および評価 完成した試作品を設計部が主管となり検証する。
  5. 試作設計審査(DR2) 試作品評価を受けて試作設計図面,設計計算書の検証を行い,次のステップに進んでよいかの検証を行う
  6. 製品仕様書制定
  7. 量産設計
  8. 量産試作評価(DR3) 技術部が主管となり量産試作品の評価を行う
  9. 量産移行審査(DR4) 量産試作品の評価を受けて量産開始の可否の審査を行う

4.4.8 設計妥当性確認
☆製品が顧客の要求事項に合致していることを,量産製品を実施の運転条件下で妥当性の確認を行う。

  1. 設計審査,設計検証が終了し,次のステップに進む段階で行う。
  2. 製品(またはサービス)使用条件で完成品について実施する。量産の早い段階で行い,使用目的が複数ある場合にはそれぞれについて実施する。この際,次のことを考慮する。
    • ① 顧客の使用目的。供給者が考える以外の使用目的はないか?
    • ② 顧客の使用条件。環境(温度,湿度,室内外),使用者(男女,年齢),他機器との併用。
    • ③ 初期故障として予測されるもの。
    • ④ 長期信頼性,サービス性,保全性。
    • ⑤ 設計妥当性確認の段階。
      • 量産試作品を対象に行う。
      • 初回量産品を対象に行う。
      • あるいは両者を1次,2次と分けて実施し,総合的な評価を行う

品質マニュアル
4.4.9 設計変更
☆設計変更する方法を明確に記述する。

  1. 設計部は設計図面の変更をするときには設計通知をもって周知する。この場合,最初に設計を実施した組織(チーム,課)が審査,承認,改訂を行う。
  2. 技術部は設計変更通知を受けて,必要がある場合には技術通知を発行して技術標準書の変更管理を行う。

☆関係標準名と登録番号を記載する。
設計業務標準   KDR 102
製品企画標準   KDR 103
設計試作標準   KDR 104
設計審査標準   KDR 105
設計計画標準   KDR 106
試作評価標準   KDR 107
教育訓練標準   KHR 103
市場調査標準   KPN 101
部品受入検査標準 KQM 107
工程内検査標準  KQM 108
製品出荷検査標準 KQM 109
量産試作標準   KTM 101
量産認定標準   KTM 102

品質マニュアル
4.5 文書及びデータの管理

4.5.1 一般
☆文書の範囲,電子媒体文書の扱いなどについて一般的概論があれば記述する。

4.5.2 文書およびデータの承認及び発行
☆文書の管理,承認,発行,廃止の手続きについて記述する。

  1. 文書の管理:品質マニュアルは品質保証部が管理する。品質システムに関わる他の文書類は発行部門が台帳を作り登録管理する。
  2. 文書の承認:文書の承認は文書ごとに規定された標準に定められた承認者が行う。
  3. 文書の発行:文書の発行にあたって発行部門が配布先管理と改訂管理を行う。
  4. 文書の廃止:廃止または変更された文書は次のいずれかの処置をとる。
    • ① 発行元が回収する。
    • ② 受領先で廃棄する。
  5. 廃止された文書で法律上および知識上保存する文書については適切に識別する。

4.5.2 文書及びデータの変更
☆文書変更時の管理,承認,発行,改訂の手続きについても記述する。

  1. 文書の変更は最初に文書を制定した組織(チーム,課)が行う。
  2. 文書の発行部門は管理台帳に改訂履歴を記録する。
  3. 文書の発行部門は変更内容を通知文書に記述し,変更された文書のページと一緒に配布先に配る。

☆関係標準名と登録番号を記載する。
文書管理標準 KAS 101

品質マニュアル
4.6 購買

4.6.1 一般
☆購買品の品質確保に関しての一般事項を記述する。

  1. 購買部は技術部からの購買要求書に基づき,購買部品の仕様,要求される品質を文書で明確にする。
  2. 購買部は購入先と,一般取引契約書と併せて,品質契約書を締結する。
  3. 品質保証部は,品質契約書に基づき,品質保証要求書を取引先に提示し,品質保証体制の確立を求める。

4.6.2 下請負契約者の評価
☆下請負契約者の能力の評価と,その記録の保管について記述する。

  1. 購買部は下請負契約者(取引先)のリストを作成し,維持,保管する。
  2. 購買部は下請負契約者を,定められた標準(KBJ 104)により2回/年,品質・コスト・納期について評価する。
  3. 新規下請負契約者の選定は,購買部が技術部と協働して,情報収集,調査,評価を行い,決定する。

4.6.3 購買データ
☆購買時に必要となる承認図,技術標準類,検査規格,限度見本について記述する。

  1. 技術部は次の文書を制定し,担当課長の承認後,下請負契約者に技術通知をもって発行する。
    • ① 購買品の仕様書。
    • ② 購買品の図面。
    • ③ 購買品の工程要求書。
  2. 品質保証部は,購買品の検査指示書を制定し,担当課長の承認後,下請負契約者に品質保証通知をもって発行する。また必要ある場合には限度見本を発行する。
  3. 上記文書類は社内の文書管理標準の適用を受ける。
  4. 購買部は,品名,数量,納期の記入された注文書を担当課長の承認後,下請負契約者に購買通知をもって発行する。
  5. 窓口が文書を送る。

品質マニュアル
4.6.4 購買品の検証
☆購買品の検証(立ち入り検査など)について記述する。

4.6.4.1 下請負契約先での供給者による検証
☆下請負契約先の工場において購買品を検証する手順を記述する。

  1. 購買部は下請負契約者からの購買品リストを作成し,常に最新のものとして管理する。
  2. 購買部は品質保証部の協力のもとに,下請負契約者の工場を最低年に1回は監査を実施する。この監査は取引先評価標準(KBJ 104)と外注品質監査標準(KQM 111)に基づき実施する。
  3. 購買部は上記下請負契約工場の監査の結果を正しく評価し,下請負契約者の品質記録として残す。

4.6.4.2 下請負契約された製品の顧客による検証

  1. B事業部のOEM客先または代行者(審査登録機関など)は,契約上,下請負契約者を立入調査することができる。
  2. B事業部はOEM客先が実施した立入調査の結果を,下請負契約者が効果的な品質管理を行っているかどうかの証拠とはしない。

☆関係標準書名と登録番号を記載する。
購買要求書発行標準    KBJ 101
外注契約書標準      KBJ 102
取引先管理標準      KBJ 103
取引先評価標準      KBJ 104
外注品質監査標準     KQM 111
製品・部品コード管理標準 KTM 104

品質マニュアル
4.7 顧客支給晶の管理

☆顧客から支給される物品の確認,保管,維持について記述する。

  1. OEM客先から支給される物品の受取りについては,本社営業部が契約時に文書にて取り交わす。
  2. 生産管理部はOEM客先からの支給品の窓口となり,受取り確認の記録を残す。
  3. 品質保証部は契約に基づいた受入検査を実施し,もし物品に不適合が発見された場合には,不適合記録を作成して生産管理部へ報告する。
  4. 製造部は,製造中に顧客から支給された物品に不適合を発見した場合,次の対応をする。
    • ① 契約に定められた不良率以内の場合は,「品質不良票」を添付して,生産管理部へ返品する。
      生産管理部は,顧客へ返品して,客先の指示に従う。
    • ② 契約に定められた不良率以上の場合は,「工程品質異常連絡票」を発行して,生産管理部へ報告する。
      生産管理部は,本社営業部へ連絡の上,顧客と調整する。

☆関係標準書名と登録番号を記載する。
OEM 客先支給品管理標準 KPC 103
工程品質管理標準    KPT 101 

品質マニュアル
4.8 製品の識別及びトレーサビリティ

☆製造のすべての段階における現品の識別およびトレーサビリティについて記述する。

  1. 製造部は,全製造工程を通じて,過去に製造された製品について製造履歴が追えるようにロット管理標準(KQM 115)にそった識別管理を行う。
    • ① 現品の識別
      製造工程中の部品,サブ組立ユニットは,ロットごとに部品名と部品コードをもって識別表示する。
    • ② 現品への表示
      標準に定められた主要部品には,ロットナンバー,製造年月日を表示するとともにそれを記録に残す。
    • ③ 最終検査上りの製品は,ロットごとに合格品,不合格品の表示をして保管する。
  2. 完成した製品には製品シリアル・ナンバー,製造年月日を表示し,品質問題が発生した場合に,製造工程にまで遡って製造ロットを追えるようトレーサビリティ管理を実施する。
  3. 品質保証部はOEM客先からの契約に基づく識別管理要求がある場合には,管理内容を明確にした標準書を発行する。
  4. 記録の保管:製造部はロット管理標準(KQM 115)に基づく記録を3年間,保管する。

☆関係標準書名と登録番号を記載する。
ロット管理標準 KQM 115

品質マニュアル
4.9 工程管理

☆作業指示書,設備仕様書,品質計画書,出来映え基準などについて記述する。

  1. 技術部は,設計図面に基づいて加工図面を制定する。
  2. 製造部は,加工図面に基づき,作業指示書を作成,制定する。この作業指示書には検査規格も含まれる。
  3. 品質保証部は,製造部の制定した作業指示書のなかに含まれている検査規格の制定と認証を行う。
  4. 作業指示書の制定は,作業指示書制定標準(KPT 102)に加えて品質標準書制定標準(KQM 106)に従う。
  5. 技術部は,製造に必要とする機械,設備,計測器,治工具類の仕様を制定し,発注手配をする。
  6. 製造部は,技術部が手配した機械,設備,計測器,治工具類の据付けを実施し,これら機械設備類の日常点検標準(メンテナンス標準)を制定する。
  7. 製造部は,工程ごとに定められた加工図面に基づきQC工程表を制定し,工程における品質の作り込みを確実に行う。
  8. 品質保証部は,作業指示書のなかで「限度見本による」と規定されている特性については,出来映え基準としての限度見本を制定する。
  9. 製造部は,量産時における工程異常処理標準(KPT 1O4)と4M変動管理標準を(KPT 105)制定し,その標準に基づいて工程を管理する。
  10. 工程における最終検査は品質保証部制定の検査規格制定標準(KQM 112)に基づいて実施する。
  11. 完成した製品のロット識別番号管理は品質保証部制定のロット管理標準(KQM 115)に従う。

☆特殊工程の存在の有無と,存在する場合にはその工程管理について記述する。

  1. 当社の特殊工程はメッキ工程とハンダ付け工程である。
  2. 製造部は上記特殊工程について,その管理の手順を工程品質管理標準(KPT 101)に基準化する。
  3. 上記両工程に従事する作業者は工程品質管理標準(KPT 101)に基づいた訓練を受けている。

☆関係標準書名と登録番号を記載する。
作業指示書制定標準  KPT 102
機械設備日常点検標準 KPT 103
工程異常処理標準   KPT 104
4M変動管理標準     KPT 105
機械設備管理標準   KTM 106
品質標準書制定標準  KQM 106
検査規格制定標準   KQM 112
QC工程表標準     KQM 113
ロット管理標準    KQM115
加工図面管理標準   KTM 105
機械設備管理標準   KTM 106
工程品質管理標準   KTP 101