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「パフォーマンスの改善」(第1回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第1回

「パフォーマンスの改善」はアメリカのGEARY A.RUMMLERとALAN P.BRACHEの共著です。
2000年当時プロセスアプローチがISO 9001に登場し、プロセスの研究が盛んになりましたが、本書にはプロセスの分析、評価、決定に関する記述が多くあります。
ここに紹介する日本語訳は、日本におけるプロセスの研究に良書であると思った平林が自分の参考に翻訳したものです。
著作権はGEARY A.RUMMLERとALAN P.BRACHEにありますので、複写、転用はしないようにお願いいたします。
平林 良人

序文

経営環境は今までと以下の点で違っています。

厳しい国際競争は、今では当たり前です。
これまで安定していた企業(電話会社、銀行、保険会社)も、今では激しい競争にさらされています。世界的に、国営企業は民営化されつつあります。
技術の進歩は、幾何学的にスピードを増し続けています。
市場は、新しい製品とサービスを求めています(大手銀行が今日提供しているサービスの50パーセントは10年前には存在しませんでした)。
自己主張する顧客は、従来の伝統的な製品とサービスに対しても、今までにないクオリティを求めています(例えば、航空旅客は、航空機の定刻離発着及び迅速丁寧な手荷物扱いに加えて、エコノミークラスでさえ機内の手荷物スペース、自由な座席選択、及び魅力的なマイレージ特典を求めています)。
雇用が不安定な一方で、多くの労働がエンパワメント(現場への権限委譲)を求める矛盾した雇用環境になっています。

経営者は、この様な単なる一過性の現象ではない、絶えず変化する競争環境において、すさまじく困難な課題に直面しています。顧客要求の高度化、国際競争の激化、及びアメリカ及びヨーロッパで規制緩和が進められることによって、現在の市場の不安定さが解消されることはないでしょう。変化こそが、今も将来に渡っても、唯一変化しないものです。
アメリカの企業人は、多くの本と記事に書かれている「兵を召集する」をよく理解しています。我々が懸念していることは、経営者の誤った理解にあるのではなく、具体的な取り組がなされていないということにあります。この本を書いたのは、我々が、実質的に問題に取り組むための枠組みとツール一式を持っているからです。マネジメント及び組織行動に関する多くの本が出版されていますが、それらの大部分がツールを提供していない(読者は、納得はしたが、明日から何をすればよいのか分からない)、或いは、多様なニーズの1つの側面しか扱っていないことに、気付きました。我々は、マネジメントに関する文献、研修コース及びコンサルタントサービスに対する調査を行った際、非常に価値のあるいくつかの理論、ヒント及びツールに出会いました。しかしながら、ただ一つとして、組織のパフォーマンス改善のための理論的な一貫性を備え、実用的で、経験に基づいている包括的な方法論に出会うことはありませんでした。3レベルのパフォーマンスに基づいている我々のアプローチは、これらの基準を満たしており、そのアプローチにより、変化を運営管理する青写真を提供できると信じています。

本書の第2の理由は、組織のパフォーマンス改善における我々の50年の経験をまとめたいという想いからです。我々は、2人とも教育訓練分野(それが人材能力開発と位置付けられる前)から活動をスタートしました。我々は早い時期に、同じ立場にある多くの人達と同様、教育訓練が人間のパフォーマンスに影響を与える唯一の変数(variable)であることを悟りました。我々は、1960年代後半から1970年代前半にかけ、パフォーマンスに影響を及ぼす経営環境とマネジメントの変数(variable)について学び始めました。その後、我々は、組織戦略がパフォーマンスに与えている影響に目を向け、1980年代、組織戦略と個人とのギャップを橋渡しする、ビジネスプロセスの文書化、改善、運営管理するための技術を開発しました。
我々は、プロセスマネジメントの展開、最近では「システムとして組織を運営管理する」ことにおいて、パフォーマンスの質、量、コストに影響を及ぼすシステムの重要な変数(variable)を対象とする包括的なアプローチを備えていると信じています。我々は、プロセスマネジメントの適用を通じて、マネージャー(特に上級)が部門内の活動と同等或いはそれ以上に、部門間の製品・サービス、文書及び情報の流れに専念するべきであることを学びました。プロセスマネジメントは、組織図の長方枠の間の空白を運営管理する方法論を提供します。