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「パフォーマンスの改善」(第2回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第2回

この本の目的

この本の目的は、我々の3レベルのパフォーマンスの基本骨格を説明し、その枠組みを適用し、空白を運営管理するツールを説明することです。我々は、パフォーマンス改善スペシャリスト(人材能力開発、生産工学、品質、又はシステム分析のスペシャリスト達)、及び大きなパフォーマンス改善をもたらすプロセスの調査を望んでいるラインマネージャーとスタッフマネージャーのために、この本を書きました。組織のパフォーマンス改善スペシャリストに最初に読んで頂き、彼らが彼らの顧客であるマネージャー達に本の全て、又は一部を推奨することを期待しています。ビジネスと組織行動学の学識経験者の方々は、我々のアプローチが今までと異なった見方を提示していることに気が付くと思います。
アメリカの経営者は、エグゼキュティブ・サマリーによって運営管理する傾向があります。取締役は問題に関する1ページの要約を手にし、副社長は数行の要約を、そして社長は3項目の課題リストを手にして運営管理をしています。「アメリカの製造業が国際市場で優位に立つため能力改善」に関する会議で、1人の出席者が、「もしある考えが1ページに要約できなければ、それは何の価値もないことになってしまう。」とあるセッションで苦言を呈しました。我々は、アメリカの会社が経営幹部への要約された情報と分析によって国際競争に勝ち抜けるとは思いません。

我々は「1ページに要約する」というマネジメントの流儀に反対します。長期間に渡って成功している経営者は、彼らの事業を詳細に理解しています。結果的に3レベルのアプローチは、適度な堅牢性を備えた体系といえます。それは実用的で、核心を突いた一連の質問とステップを備えており、この3レベルのアプローチは、世界各地の色んな種類の会社と公的機関への適用を通じてその妥当性が確認されています。3レベルのアプローチを推進するチームは、生産性及び製品とサービスのクオリティの改善に加えて職場生活の質も改善するので、チームの喜びにもなります。しかしその課題は複雑で、3レベルのアプローチを推進するプロセスは多くの場合、単純ではありません。従業員を活性化する即効性のある方法を捜している、またそうした最新プログラムを捜しているマネージャーやパフォーマンス改善スペシャリストには、この本はお奨めできません。

何が変化し、我々は何を学びましたか?

今まで述べてきた経営環境、課題への挑戦、及びこの本の目的は、この本の初版が書かれた5年前と基本的に同じですが、一方で特筆すべき以下のような変化が起こりました。

世界的な不況を経験し、その後ゆっくり回復してきています。
日本は依然恐るべき存在ですが、まだ重症です。
1990年代、マイクロソフト社とGE社は注目されました。
経費削減(ダウンサイジングと呼ばれた)の波が起こりましたが、大部分は過ぎ去りました。賢明な組織は、収益増加に再度専念しています。
「株主価値」が企業の評価項目として現れました。
総合品質経営(TQM)プログラムは、企業意識から姿を消し、予算項目から消えつつあります。
この本のメッセージに最も影響を与えたことですが、「リエンジニアリング」が突然叫ばれ、世界中の民間及び公共のセクターの組織の心を捕らえました。この改訂版が書かれている時点のリエンジニアリングは、企業の組織的活動としてはもはや最終段階に入っています。「リエンジニアリング」への熱狂は永く続かないでしょうが、TQMを例外として、過去30年間の他のどんな経営手法よりもその寿命は長く、その影響も著しいと言えるでしょう。

今回の改訂と追加は、これらの変化に対応しており、かつその後の5年間に我々の方法論を顧客ニーズに適用した結果を通し学んだことのいくつかを反映しています。その5年間に我々が学んだことは、次の通りです。

戦略とプロセス設計(再設計を含む)をどのように強く結びつけるか。
プロセス設計(再設計を含む)活動にありがちな落し穴をどう乗り越えるか。
プロセス改善プロジェクトの結果として現れる著しい変化(改善案)をどのように推進するか。
継続的改善の基礎となり、成長の触媒となる、トップからボトムまでの評価システムをどのように構築するか。

我々は、この分野でまだ多くのことを学ばなければなりませんが、パフォーマンス改善活動におけるリーダーシップの役割についても理解しています。