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「パフォーマンスの改善」(第10回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第10回

第3章 3レベルのパフォーマンス:組織、プロセス、及び業務/遂行者

-我々は、何かを取り上げようとするとき、
それが宇宙の全てのものに繋がっていることに気付きます。
– John Muir

19世紀の環境保護論者John Muirは、生態系の各要素が他のすべての要素に何らかの形で関係していることに気付きました。クリンチ川増殖炉の建設を停止させたスネイルダーターという川魚の騒ぎは、単に取るに足りない小魚の話ではありません。それは環境というモザイク画の小さなタイルを変えることになりました。欠落又は変更は、たとえ些細であっても画像のバランスを変容させます。
同様に我々は、組織の内部及び外部の「生態系」(顧客、製品とサービス、報酬システム、技術、組織構造など)が、すべてお互いに関連していることに気がつきました。組織及び個人のパフォーマンスを改善するために、我々はこれらの関連を理解する必要があります。現在のモザイクは美しい画像を描き出していないかもしれませんが、それはそれで現実です。その画像は、9つのパフォーマンス変数(performance variables)が相互に依存していることを認識しながら、全体に働きかけることにより、変更したり強化したりすることができます。これらの変数(variables)を理解する方法は、3レベルのパフォーマンスに対して、システム的見方(第2章で述べている)を適用することであると、我々は、思っています。

Ⅰ:組織レベル

先ず組織をマクロ「システム」的に見ると、第2章で議論した基本的見方と変数(variables)のことが理解できます。この組織レベルでは、市場と、組織を構成する主機能の基礎的「骨格」との関係を強調しています。パフォーマンスに影響するレベルⅠの変数(variables)には、戦略、組織の目標と評価指標、組織構造及び資源の分配等を含みます。

Ⅱ:プロセスレベル

次に組織のパフォーマンスに影響を与える一連の重要な変数(variables)は、我々がプロセスレベルと呼ぶところにあります。組織「体」を特別なX線の下に置いたら、Level Ⅰの骨格とLevel Ⅱを構成する組織横断プロセスの筋肉組織の両方を見ることになるでしょう。

組織図に記された部門の境界線に捉われないことによって、仕事がどのように行われているかを表すワークフローを見ることができます。組織は、新製品設計プロセス、販売計画プロセス、製造プロセス、販売プロセス、配送プロセス、請求書作成プロセスのような多数の組織横断的な作業プロセスを通じて、アウトプットを作っていると言っていいでしょう。
組織の良さは、単純にそのプロセスの良さで決まります。プロセスレベルのパフォーマンス変数(variables)を運営管理するためには、プロセスが顧客のニーズを満たすように組み立てられ、それらのプロセスが効果的に効率的に機能し、プロセスの目標と評価指標が顧客及び組織の要求事項によって展開されることを確実にしなければなりません。

Ⅲ:業務/遂行者レベル

組織のアウトプットはプロセスを通じて産み出されます。一連のプロセスは様々な業務をしている個人によって実施され、運営管理されます。X線の力を高めれば、我々は図3.3のように、体の細胞を表す第3レベルのパフォーマンスを見ることができます。業務/遂行者レベルで運営管理されなくてはならないパフォーマンス変数は、雇用と昇進、業務の責任と基準、フィードバック、報酬と教育訓練等を含みます。
今我々は、3レベルの重要な相互依存のパフォーマンスを描写する、組織用X線を持っています。組織の総合的なパフォーマンス(顧客の期待をどの程度満たしているか)は、3レベル全てのパフォーマンスの目標、構造及びマネジメント活動の結果です。例えば、もし顧客が欠陥品を受け取ったとしたら、原因は3レベルのいずれにか、又は全てにあるかもしれません。遂行者が間違えて組み立てをし、欠陥品が出荷されてしまったのかもしれません。製品の品質に影響を及ぼすプロセス(設計、調達、製造及び配送を含む)が間違っていたかもしれません。組織の戦略として製品の位置づけを決定し、人材と設備の予算を提供し、目標及び評価指標を策定するトップマネジメントに代表される組織もまた、その問題を引き起こした可能性があります。