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「パフォーマンスの改善」(第11回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第11回

組立遂行者は、統計的プロセス管理の教育訓練を受けること、自主管理チームを編成すること、欠陥を発見した場合にラインを止める権限を持つことも可能です。しかし、これらの対応は、もし設計プロセスが組み立てづらい製品を生み出していたならば、又はもし購入プロセスが納期どおりにサブ組立品を調達できないならば、又はもし販売と予測プロセスが同期せず毎日異なる製品を作るための段取替えを引き起こしていたならば、その効果はほとんどないといってよいでしょう。もし、この組織が報酬を「製品出荷数」で決めているとすると、組立工の高品質製品への製造意欲はさらに弱められるでしょう。
3レベルの枠組みは、パフォーマンスの解剖学的構造を表します。人体の解剖学的構造には、骨格系、筋肉組織系、及び中枢神経系が含まれます。これらの系(システム)のすべては重要で、相互に依存しているので、あるサブシステムの欠陥は、身体全体が効果的に機能する能力に影響を及ぼします。医者が人間の病気を診断し、治療するためには、人間の体の構造を理解することが不可欠であるように、組織のマネージャーかアナリストが、組織の欠陥を診断し治療するためには3レベルのパフォーマンスを理解することが不可欠です。
しかし、我々の焦点はそのような病気を治すことだけにあるのではありません。医学界の賢明メンバーが、健康と予防医学を促進するために人体構造の知識を使用するように、賢明な経営者は、組織問題を予防し、かつパフォーマンスを継続的に改善するために、パフォーマンスの構造についての知識を利用します。しかし彼ら一人ではできません。ベテランの医者がインターン、看護婦及び研究所スタッフの支援を得るように、これらの経営者は、彼らの人的資源、システム及びマネジメントアナリスト等の支援を必要とします。
第8章において3レベルのパフォーマンスの1つ、又は複数を活用しなかったために失敗した4つのパフォーマンス改善活動について説明します。その後、3レベル全てにおける活動を行い、改善活動を成功裡に終わらせた2つの組織の例を説明します。

9つのパフォーマンス変数

3レベルのパフォーマンスは、我々の枠組みの1つの次元を構成しています。2つ目の次元は、各レベルの有効性(及びシステムの有効性)を決定する、3つの要素(パフォーマンスニーズ)です。

目標:組織レベル、プロセスレベル及び業務/遂行者レベル毎に、各々の製品とサービスの品質、量、納期とコストに対する顧客の期待を反映する明確な基準を必要とします。
設計:組織レベル、プロセスレベル及び業務/遂行者レベルの構造は、必要な構成要素を含み、効率的に目標が達成されるよう設計される必要があります。
マネジネント:3レベルの全てにおいて、目標が現状に適しているもので、かつ達成されることを確実にするマネジメントの実践を要求します。

パフォーマンスニーズと3レベルを組み合わせると、9つのパフォーマンス変数(variables)になります。これらの変数(variables)は、あらゆる階層のマネージャーが使用できる、包括的な改善のレバー一式を表します。
3レベルの手法を例証するために、我々が第2章で紹介した会社を見てみます。Computec社は、顧客向けソフトウェア開発、及びコンサルティングサービスが、その事業の70パーセントを占めている、ソフト開発システムエンジニアリング会社で、残り30パーセントの売上は、既製パッケージソフトによっていました。
Computec社は、設立した最初の13年間は成功していました。しかし、過去2年間にマーケットシェアの著しい低下を経験しました。内部問題は高い退職率と士気の低下等です。経営幹部はその状況に危機感を覚え、最近、組織文化の調査を行い、総合的品質管理、顧客志向及び企業家精神に関するプログラムを実施しました。次のプログラムは、リエンジニアリングに関するものになる予定です。これまでのところ、会社のパフォーマンスは改善していません。
以前の薬が病気に効いていたか、効いていなかったか不明であることに留意し、Computec社を診断することから始めます。我々は、3レベルのアプローチの枠組みを構成する、9つのパフォーマンス変数(variables)を使用します。