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「パフォーマンスの改善」(第27回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第27回

業務/遂行者レベルで取る処置

第3、4章及び第5章では、組織とプロセスレベルパフォーマンス変数を取り扱わないで業務/遂行者レベルで処置を取ることに対する結果について議論しました。業務/遂行者レベルを取り扱わないというリスクは、組織とプロセス改善が業務に組み込まれなければ根本の改善にならないという意味で、致命的です。もし業務がプロセスステップをサポートするように設計されていなければ、また要員がプロセスの有効性と効率に最大の貢献をすることを可能にするように業務環境が整備されていなければ、組織とプロセスの目標は達成されないでしょう。
例えば、エレクトロニクス製造会社のマネージャーが、オーダーから出荷までのサイクルタイムを(組織レベル)重大な競争の障害として特定したとします。この障害を取り扱うために、販売と製造(プロセスレベル)に関する、はるかに優れた予測システムを設計しました。今の所うまくいっています。しかしながら、新プロセスに対する熱意と、とその潜在的利益ゆえに、彼らはそれを即座に(インクが乾くと同時に)発表し稼動させました。彼らは新プロセスによって影響される業務に必要となる変化を明確にしませんでしたし、新プロセスをサポートするために必要となる資源とマネジメント行動を特定しませんでした。その結果、新しいシステムの導入は、長く、苦痛を伴い、必要以上に高価ものになりました。
これらのマネージャーは、業務/遂行者レベルは、組織とプロセスレベルの変化に、自動的に同期しないことが理解できていませんでした。要員が組織とプロセス目標に可能な限り最大の貢献をするのを確実にする唯一の方法は、3つの業務/遂行者レベルのパフォーマンス変数、業務目標、業務設計及び業務マネジメントのそれぞれに着目することです。

業務/遂行者レベルにおけるパフォーマンス変数

業務目標。要員の役割がプロセスを働かせることであり、彼らの目標がプロセスへの貢献を反映したものであることを確実にする必要があります。図6.2は業務目標とその他のレベルの目標間の連係を示します。

図6.2 パフォーマンス目標設定の階層体制(略)

この目標の「下流展開」と伝統的なアプローチの大きな違いは、プロセス志向(機能ではなく)です。業務目標は機能(部門)の目標に直接つながるべきである一方、両方ともそれらがサポートするプロセスから引き出されるべきです。ソフトウェア会社の例を続けると、Computec社は戦略上重要な組織横断プロセスとしてオーダー遂行を特定しました。そのプロセスにおける重要なステップとして、新規顧客の信用調査を含みます。プロセス目標(経理部と共有される)は、オーダー受領後、24時間以内に信用調査を正確に実施することです。この目標は経理担当向けの以下の目標に展開されます。

オーダー受領の24時間以内に100%の信用調査を行なう。
問題となる信用調査結果は、その解決のために100%販売責任者に報告する。
承認された顧客の1%以上が、信用不十分に陥らない。

これらの目標は、彼らが何をすべきと期待されているか、そして彼らがそれをどの程度上手く行うことを期待されるかを担当者に伝達します。この「何を」、「との程度上手く」がヒューマンパフォーマンスシステムのアウトプットの要素を規定します。多くの担当者にとって、「どの程度上手く」(パフォーマンス基準)の次元が欠けています。基準がなければ担当者は、彼らが達成することを期待されるパフォーマンスレベルを完全に理解することができません。、業務目標を確立するプロセスに要員を関わらせることが、業務目標の理解とコミットメントを築く最良の方法であることを発見しました。

業務目標設定の目的は、次の質問に対する回答が肯定的なものになることです。

業務のアウトプットと基準は、顧客と組織要求に沿ったプロセス要求事項に連係していますか?