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「パフォーマンスの改善」(第34回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第34回

経営幹部は激しい討論の末、食料雑貨、自動車部品及びおもちゃを提供する誘惑に抵抗することを決めました。彼らは製品を製造しないことも決めています。処方箋、特許医薬品、健康管理製品、化粧品、カメラ用品及び事務用品を引き続き提供して行きます。要するに、彼らは古いやり方の街角のドラッグストアのチェーンであり続けることによってBaldwin社が成功できると判断しました。彼らは次の3年間に彼らが提供する製品、提供しない製品のカテゴリの完全なリストを作成しています。
新製品のラインアップを評価するとき、経営幹部チームは以下の評価基準を使用します。

収益目標を達成する可能性を持つ。
「街角のドラッグストア」イメージと現在のBaldwin社の製品カテゴリに適合する。
長期的なニーズを満たすことができる。
新しい展示や、著しく新しい従業員スキルを必要としない。

彼らはBaldwin社が高齢者、身体障害者及び若い裕福な家庭という3つの主要な市場(顧客グループ)を対象とすると決めています。これらのニッチ市場に特化することは、人口の大きな割合を対象から排除することになるが、トップチームはここに集中することで、Baldwin社が競争優位性を示し、ビジネス的な繁栄が可能になると信じています。
新しいマーケットの可能性(新しい地理的な領域か新しい顧客タイプ)を評価する時の、採否に関する基本的な評価条件は、対象となる領域かグループの顧客が現在の製品ラインに対する需要を文書化しているかどうか、新しい冒険的事業がBaldwin社の競争優位を確立することができるかどうか、2年以内に回収することができる新規投資で十分か否かに関する事項です。
彼らの戦略が顧客志向であることを確実にするために、経営幹部は高齢者、身体障害者及び裕福な家庭市場での顧客の要求事項を特定するのに、サーベイ調査とモニターからの情報を活用しています。彼らはこれらのグループが利便性、製品の入手可能性及びサービスによって基本的行動を決めていると判断しています。価格は重要な要素(特に医療保障を受けている患者にとって)ではあるが、トップチームはBaldwin社の顧客は、利便性、入手可能性及びサービスに対して少し高くても代価を払うと信じています。
Baldwin社の競争優位性は、ちょうど特定された3つの領域にあります。Baldwin社は店の立地、営業時間及び宅配などにより利便性における優位性を確立します。Baldwin社は高齢者、身体障害者及び裕福な家庭のための全ての製品ラインアップが常に提供できることを確実にします。宅配に加え、Baldwin社のサービスには、写真と化粧品に博識な要員、薬物治療ホットライン及びBaldwin社の顧客が通っている医師との強い関係からもたらされる配慮のようなものも含みます。経営幹部はこれらの要素が、質の悪いサービス、低価格のディスカウントストア、雑貨店及び薬品の倉庫販売と、Baldwin社を区別すると堅く信じています。
次の3年間、Baldwin社は、現在高齢者と身体障害者向けに提供している特許薬物治療にかなりのマーケティングと資源強化を行います。
Baldwin社が確立しようと計画している競争優位を基に、対象とする市場において、1回の買い物ですべてがまかなえる商店を可能にする様な新製品(身体障害者のための用品類)を強化します。

これらの11の事項は、ハイレベルな戦略だけを表していますが、Baldwin社は、明快な方向性を確立しており、パフォーマンスのシステム的視点のすべての要素の分析結果を反映しています。Baldwin社のトップマネージャーは、それらのビジョンが実施されるのを確実にするためにもう2つの処置を取ります:

戦略の成功を評価することができる3つの評価指標として、純資産利益率、マーケットシェア及び顧客満足格付けを選択しました。
彼らの戦略目的を反映する組織全体と部門の目標を確立します。最初に、彼らは顧客との接触を持っているすべての部門のサービス品質に対する具体的な目標を設定します。2番目に、すべての部門がBaldwin社の差別化した顧客サービスを提供するのを可能にするよう構成され関連つけられていることを確実にします。3番目に、彼らは資源が適切に割り当てられるのを確実にします。例えば、市場調査員は3つの目標とする市場に関する包括的な情報を集めるために必要となる資金とスタッフを受け取ります。

彼らは重要なプロセス(顧客サービス、市場調査及び供給者の選定)が文書化され、戦略目標をサポートする目標を持っていることを確実にします。彼らはこれらの戦略のプロセスが効率的に彼らの目標を達成し、これらの戦略プロセスを監視し、継続的に改善するためにプロセスマネジメントインフラストラクチャを整備することを確実にします。
戦略プロセスの中では、組織の成功に特に重要な多くの業務を特定しています。Baldwin社の顧客サービスのプロセスでは、顧客と接触するすべての業務が重要です。これらの業務については目標(プロセス目標から得られる)が確立され、伝達されています。業務は顧客サービスを高めるように設計されます。最も重要なこととして、マネジメントチームは傑出している顧客サービスをサポートする環境を(教育訓練、フィードバック及び報酬を通じて)創造します。

要約

3レベルの枠組みは、組織の戦略に2つの貢献をします。戦略立案に対して、組織の方向がすべての戦略変数の分析に基づいているのを確実にするシステムの枠組み(表 7.1参照)を提供します。システムの要素は効果的な戦略が答えるべき11の質問を提示します。
戦略の実施に対して3レベルの枠組みは、戦略のビジョンが組織の現実になるのを確実にするために取り扱われなければならない9つのパフォーマンス変数を提供します。組織、プロセス及び業務/遂行者レベルを通じてその戦略を順次展開するマネジメントチームは、その戦略が定着する可能性を増加させます。各レベルにおいて戦略は目標、設計及びマネジネントを通じて実施されます。
第8章から14章は戦略実施のさまざまな次元をより深く探求します。