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「パフォーマンスの改善」(第60回)

平林良人「パフォーマンスの改善」(2000年)アーカイブ 第60回

第13章 システムとしてプロセスと組織を運営管理する

-財なしでは人は何もできない、人なしでは財は何もできない、
そして、人も財も天才的な管理の先導なしでは何もできない。
– W. L. Mackenzie King

殆どのマネージャーに、「天才的な先導」を期待できません。しかし、指導の能力があることを期待してもよいと思います。有能なマネージャーは、自部門がやるべきことを理解してより良くするための手助けとなる変数(variable)を運営管理することができます。第2章で、組織(すべての階層で)が適応型のシステムとして機能するという考え方を含んだ、我々の世界観を描きました。組織は一連のシステムとして機能しますので、組織をシステムとして運営管理することが最も効果的です。
そのための方法論、プロセス改善の落とし穴(第10、11章)を提示し、継続的なプロセスの運営管理の基礎として必要な評価システム(第12章)を網羅してきましたので、ここでは第10章で紹介されている枠組みのフェーズ 4及び本章に示されている図13.1を説明します。

図13.1  Rummler-Bracheプロセス改善及びマネジメント方法論(略)

プロセスマネジメント

フェーズ4の最初のステップは、多くの場合フェーズ1からフェーズ3で扱った個々の核となるプロセスを継続的に改善することを確実にします。
プロセスの分析と設計のフェーズ2の大部分が上級マネージャー以外で実行されるが、フェーズ4は経営者の責任です。経営幹部はこの役割を果たすために次のことをする必要があります。

プロセス改善とプロセスマネジネントの両方について、何を、なぜ、及びどのようにするかを理解する。
フェーズ0の基本的アウトプットであるプロセス改善とマネジネントプランを展開する。(第10章参照)
プロセスマネジネントを強化するのに必要なコミュニケーション、評価指標、資源、スキル、報酬、及びフィードバック(ヒューマンパフォーマンスシステムの要素)を提供する。
基盤(インフラストラクチャ)を確立し、以下の行動を取る。

核となるプロセスの選択。プロセスマネジネント計画としてプロセス毎に長期的目標の設定が必要である一方で、ほとんどの組織は、今行っているプロセスマネジネントへの投資を保証する最重要プロセスの特定からスターとしています。これらの最重要プロセスは、組織の戦略的成功に最も大きな影響を与えるものです。
したがって、プロセスマネジネントの種子はフェーズ0で蒔かれることになり、そこで「コアプロセス」が明確にされます。フェーズ0において、経営幹部は具体的な最新戦略を確認します。そして、経営幹部は重要成功要因を活用し、主要プロセス、サポートプロセス、及びマネジメントプロセスからコアプロセスを特定します。
図13.1に示すように、いくらかのコアプロセスは、抜本的な改善か暫時の改善かどちらかの改善を必要とし、フェーズ4に入る前にフェーズ1からフェーズ3を経ることになります。プロセスの改善の余地はあるがプロセス改善プロジェクトの優先事項にはならないようなプロセスは直接フェーズ4に行きます。
フェーズ0を概説する第10章においてコアプロセスの例を説明しませんでしたので、これから紹介することにします。
コアプロセスとは、絶対に獲得すべき競争優位性か、経営幹部が確立、補強、又は拡大したいと思っている競争優位性、のどちらかに影響を及ぼすプロセスのことをいいます。例えば、注文のサイクルタイムが必要と思われる競争優位性であるならば、注文処理プロセスが戦略的なプロセスとなります。もし、顧客サービスの品質が競争優位性であるならば、顧客サービスプロセスがコアプロセスです。新製品が競争優位性の中心であるなら、製品開発と製品の導入がコアプロセスです。
これらコアプロセスの事例全ては、基本プロセス(顧客にとって目に見える製品かサービスを作り出すもの; 第5章参照)です。サポートプロセスと、管理プロセス(純粋に内部的である)も戦略的でありえます。例えば、製品かサービスを作り出すコストに競争優位性があるならば、予算編成と資本支出のプロセスは設計、資材管理及び製造と同様に戦略的です。急速な市場変化に即応する能力に競争優位性があるならば、市場調査と企画がたぶんコアプロセスでしょう。同様に、教育訓練、需要予測及び安全管理もコアプロセスとなりえます。

プロセスの評価指標。もし、継続的なプロセスマネジネントに最大の貢献をする活動を一つだけ選択するとしたら、組織レベルと業務/遂行者レベルの評価指標にリンクしているプロセスベースの評価システムを開発し実践することでしょう。第12章はこのことに特化しています。